大黄(だいおう)という漢方生薬
今回紹介する生薬は、『黄耆(おうぎ)』です。黄耆は、マメ科の多年草、タイツリオウギ(キバナオウギ)またはモウコオウギの根を用います。外部は淡褐色から黄褐色、内部は黄白色で不規則なあらい縦じわがあります。黄耆の耆は“長”という意味があり、色が黄色く補薬としての長であるため、黄耆と名づけられました。特有の香りがあり、味は甘みがあります。黄耆は止汗利尿強壮剤で、皮膚や粘膜など表の水毒を去るのに用いられます。多汗症、浮腫など肌表の水分を去る利水の剤として用いる以外にも、補虚、滋養強壮の薬物としても応用されます。
黄耆を含む漢方薬には、黄耆建中湯、防已黄耆湯、十全大補湯などがあります。
黄耆建中湯は、小建中湯に黄耆を加えた漢方薬です。小建中湯の中という字は、上中下の中のことで、脾胃(消化機能)を指します。建中というのは、消化機能を建て直すという意味です。消化機能が衰えると、食事をせっかく摂っても上手く吸収できず栄養も身体に行き届かなくなりひどく疲れやすくなる等の症状がでてきます。腹直筋の緊張、つっ張りががあるのが特徴です。この消化機能を整え建て直すのが小建中湯で、これに黄耆を加えることで滋養強壮作用が強化されます。
黄耆は気を補い、陽を助ける生薬で、表の水毒を去り表を固めます。小建中湯は裏の気を補う漢方ですので、黄耆を加味することで表裏の気を補うことになります。腹痛などの消化器症状以外にアトピー性皮膚炎にも応用して用いる場合も多いです。小建中湯は、黄耆建中湯以外にも当帰を加えた当帰建中湯、当帰と黄耆を加えた帰耆建中湯と発展したものがいくつかあります。他症状で受診した際でも、消化機能が衰えている場合、まずは建中湯で整えてから他の漢方薬を用いる事で症状の改善が早い場合もあります。消化機能の重要性がうかがえます。
防已黄耆湯は、前号の“防已”でも記述しましたが、膝の痛みや変形性膝関節症によく用いる漢方薬です。表虚があり、表の水毒がある事から疼痛やむくみ、身体を重たくし動きも緩慢になります。黄耆はこの表の水毒を取り除き、防已と組んで汗を止め、表に浮かんで動揺する湿邪を尿に導き、水腫を治し、表虚を補います。適度な運動を取り入れる事も重要です。
バランスの良い食事と運動は大切ですね。