スーパーマーケットの生産性を劇的に高める「時間投資」の本質 | 利益を最短で伸ばす経営と現場の考え方
スーパーマーケットの売上が目標通りに伸びないときは、未達の原因を客数・客単価・売場の状態に分け、営業利益につながる行動へ落とし込むことが大切です。
高い目標を掲げると同時に、従業員が実行できる作業方法と、結果を検証する仕組みを整えましょう。 文: サミットリテイリングセンター代表 新谷千里
目次
売上目標が未達のときに確認したいこと
「売上が目標通りに伸びない」「計画を立てても、現場の動きが変わらない」。
こうしたとき、経営者や店長が最初に確認したいのは、目標を達成するための具体的な方法まで共有できているかという点です。
たとえば「売上を前年比105%にする」という目標だけでは、担当者は何を変えればよいのか分かりません。
客数を増やすのか、買上点数を増やすのか、夕方の欠品を減らすのか。
目標と日々の作業を結び付ける必要があります。
売上の基本は「客数×客単価」、客単価は「買上点数×平均商品単価」です。
まず、前年や計画との差を分けて確認し、POSデータと売場の観察を突き合わせます。
数字だけでは分からない欠品、商品の見つけにくさ、補充の遅れも確認しましょう。
高い目標には能力を育てる方法が必要
稲盛和夫氏の公式サイトには「能力を未来進行形でとらえる」という考え方が紹介されています。
現在の能力だけで可否を決めず、将来の達成時点を定め、そこに届くよう能力を高める方法を考えるという趣旨です。
私は、この考え方をスーパーマーケットの現場に生かすには、教育と作業改善を目標とセットにすることが大切だと考えています。
「夕方の売上を伸ばす」なら、来店のピークに合わせた製造・補充ができるようにする。
「粗利益を増やす」なら、発注、値入れ、値引き、廃棄の判断を改善する。
必要な能力を具体的にし、担当者が身に付けられる手順と教育を用意します。
目標を引き上げるときは、人員、設備、教育時間、期限も併せて検討しましょう。
経営者の役割は、現場が達成に向けて動ける条件を整えることです。
営業利益の目標を現場のKPIに落とし込む
売上目標を考えるときは、営業利益への影響も確認します。
値下げで売上が増えても、粗利益が減ったり、作業時間が増えたりすれば、利益改善につながらない場合があるためです。
KGIは最終的に達成したい成果、
KPIはその成果に向かう進み具合を確認する指標です。
たとえば、KGIを「3か月後の月間営業利益」とし、
課題に応じて、
「重点商品の販売数量」
「ピーク時間帯の欠品」
「値引き・廃棄額」
「作業時間」
などをKPIとして選びます。
最初は一つの部門に絞り、特に確認したいKPIを2~3項目に絞ると運用しやすくなります。
指標ごとに、現状値、目標値、担当者、期限、確認方法を決めてください。
欠品なら、対象商品と売場を確認する時刻まで決めることが必要です。
【利益改善の試算】
月間売上1,000万円、粗利益率25%、販管費230万円なら、営業利益は20万円です。
売上と販管費を同じ条件に保ち、粗利益率を26%へ改善できれば、営業利益は30万円になります。
粗利益率1ポイントの改善で、営業利益は50%増える計算です。
これは実在店舗の実績ではなく、利益の構造を説明する試算です。
実際には、値引き・廃棄の集計方法や販管費の変動も確認してください。
売上の増加と併せて、粗利益を残す方法を考える意味がここにあります。
標準化で売場を改善する時間をつくる
目標を実行に移すには、現場に改善へ取り組む時間が必要です。
私は、3Sの「標準化・単純化・専門化」を、作業を見直す基本として重視しています。
たとえば補充作業では、
・売場とバックヤードを何度も往復していないか、
・在庫の場所を探していないか、
・担当者ごとに手順が違っていないか
を確認します。
在庫の定位置と補充手順を決め、販売動向に合わせて補充時刻を調整します。
作業時間を減らせたら、その時間をピーク前の補充、鮮度確認、商品の価値を伝えるPOPなどに配分します。
作業の効率化を、お客さまが買いやすい売場づくりへつなげることが大切です。
D-CAPで小さく試し結果から次の計画をつくる
目標達成に向けた方法は、一度決めて終わりではありません。
私は、現場での実行から学ぶD-CAPを重視しています。
Doは取りあえず実行、Checkは確認、Actionは改善、Planは次の計画です。
たとえば、惣菜の夕方の欠品が課題なら、重点商品を3品選び、1週間だけ製造・補充の時刻を見直します。
・販売数量、
・決めた時刻の欠品状況、
・値引き・廃棄、
・作業時間を記録し、
前週の同じ曜日と比較します。
天候や特売の違いも確認してください。
売上が増えても廃棄や残業が増えていれば、製造数量や手順を修正します。
成果が確認できた方法は標準化し、次の週の計画へ反映させます。
一つの売場で学んだことを、他の商品や部門へ広げていきましょう。
従業員と目標を共有し改善を続ける
現場が自ら動けるようにするには、目標の理由と判断に必要な情報を共有することが必要です。
「この商品の欠品を減らすと、買い逃しを防げる」
「廃棄を減らすと、粗利益が残る」
と、仕事の意味を伝えます。
社員だけでなく、パート・アルバイトの気付きも改善に取り入れましょう。
お客さまの反応や作業の不便さを、日々の仕事を通じて知っているからです。
会議では、
「なぜできなかったか」に加えて、
「次に何を変えるか」を具体的に決めます。
評価では売上などの結果と、改善提案、標準作業の習得、教育への協力などの行動を併せて見ます。
うまくいかなかった試みも、その条件と結果を共有すれば、次の改善に役立てられます。
売上が目標通りに伸びないときこそ、目標と現場の行動のつながりを見直してください。
営業利益につながる指標を選び、担当者と実行方法を決め、小さく試して修正する。
この積み重ねが、店舗の力を高めていきます。
売上目標と利益改善に関するよくある質問
Q.売上目標が未達のとき最初に何を確認しますか
客数と客単価を分け、必要に応じて買上点数と平均商品単価も確認します。
そのうえで、欠品や補充の遅れなど売場の状態と照合し、優先して改善する原因を絞ります。
Q.KPIはどのように選びますか
営業利益などのKGIに関係し、担当者が行動によって変えられる指標を選びます。
対象、測定方法、担当者、確認頻度を定め、最初は2~3項目から運用することをお勧めします。
Q.高い目標を従業員と共有するには何が必要ですか
目標の理由に加えて、具体的な作業方法、必要な教育、使える時間や人員を共有します。
進み具合を一緒に確認し、現場の意見を取り入れて方法を修正します。
店舗の目標管理と現場改善のご相談
サミットリテイリングセンターでは、スーパーマーケットの売場・作業・数値管理を結び付け、営業利益の改善を支援しています。
売上目標と現場の行動がつながらないと感じている経営者・店長の方は、ご相談ください。
■新谷千里のご相談窓口 ➤https://my931p.com/p/r/kNfXP2QM
■サミットリテイリングセンター 公式サイト
➤https://summit-rc.com/
■執筆者と参考資料
執筆者 新谷千里
サミットリテイリングセンター代表/スーパーマーケット業務改善コンサルタント
➤https://summit-rc.com/step/
参考資料
■稲盛和夫オフィシャルサイト「能力を未来進行形でとらえる」。
➤https://www.kyocera.co.jp/inamori/library/facebook-archive/2021/20210222.html
稲盛氏の考え方の紹介部分を参照し、スーパーでの実践方法は新谷の視点から構成しています。
■稲盛和夫オフィシャルサイト 参考資料
➤https://www.kyocera.co.jp/inamori/about/thinker/philosophy/


