ハウスメーカーと私の家造りの違い
同じ仕様、同じ性能でいいの?
建物はその地の気候・風土に根ざすものだと考えています。全国どこに行っても同じはずがありません。人の顔がそれぞれ違う様に、個性を尊重して然るべきであると考えます。
にもかかわらず、ハウスメーカーの家造りは、標準仕様の名の元に同じものを強要します。
その愚かしさに、誰も触れないので、それが当たり前の様に世間で通用していると云うのが、ハウスメーカーの家造りの実情です。
大手のハウスメーカーから弱小の建売住宅まで、同じ様な売り方をしています。こう言った売り方は工業製品には良く見られます。
例えば車です。
車は、外観で言えば変えられるのはボディーの色くらいのものです。オプションパーツもありますが、基本的にはメーカーの指定した色の中から選択する事になります。性能面も選べるのは排気量くらいのもので、あとはメーカーのお任せです。
ディーラーに行って、試乗会で試し乗りして、それと同じ性能の車を買う訳です。モデルハウスに行って、住み心地を体感し、家を買うのに似てますね。
ただ一つ違うのは、買う品物の寿命です。車は数年で買い換えます。他の工業製品も殆ど同じです。家は一生の付き合いです。お金のある人は、飽きたから買い替えると云う芸当も出来るでしょうが、一般の庶民はそうはいきません。ここが家と他の工業製品の大きな違いなのです。
自分が一生を託す家が、メーカーの指定する性能や仕様で良いのでしょうか。
家造りの勉強の為にモデルハウスを回るのは良いけれど
家造りを思い立った時、建築主さんも家造りに対する勉強が必要です。興味のある方は構造や省エネ性能について勉強されれば良いと思います。しかし、ここで言う勉強とは、自分がどの様な家に住みたいのかと云う勉強です。これは自分にしか出来ない勉強です。いくらハウスメーカーや有名な建築家が勉強・研究しても貴方が住みたい家を言い当てる事は出来ません。
そこの矛盾に気付かずに、殆どの方が、モデルハウス巡りをして、言葉巧みな営業マンの口車に乗せられて、「今契約すると100万円値引きしますよ」とかの餌に釣られて、契約して、出来上がったものがイメージと違うとか言いながら、SNSで愚痴をこぼしているのです。
もう一度繰り返して言います。家は他の工業製品と違い、一生住み続ける事を前提にしています。一度しかないチャンスに、営業マンの対応が良かったからとか、有名メーカーだからとか、本来住宅の性能と何の関係もない事を、選定基準にするのは絶対にやめましょう。
自分の勉強の為に、モデルハウスを巡るのは一向に構いません。何もないところから、自分の住みたい家を探し出すのは至難の技です。どこかに憧れがあってその憧れを具体化している物件を見つけて、徐々に自分の住みたい家とかこの様なものだと、イメージを構築していくのが勉強です。
但し、見ただけで、自分のイメージが固まっていないのに、ブランドとか値引きとかを理由に買い急ぐ事は愚かしい事です。
自分のイメージをカタチにするには
自分のイメージは出来上がっているのに、それを人に伝える事が出来ない・・・・
これも良くある問題です。人はinputに力を入れるとoutputが出来なくなります。これは脳科学者の茂木健一郎も著書の中で繰り返し述べています。
そう云った、イメージを具体化する為に設計事務所は存在するのです。設計事務所がイメージを具体化する作業を「基本設計」と呼びます。
基本設計を作成すると、概算見積もりを工務店さんに発注する事が出来ます。自分のイメージが大凡どれくらいの費用で出来るのか、判断が出来ます。
この様に、段階を踏んで、徐々に自分の住みたい家を、カタチにしていくのが本当の家造りだと考えます。
ハウスメーカーには出来ない芸当
では本当の家造りを何故ハウスメーカーはしないのでしょうか。顧客一人一人に寄り添い、お客様の要望を汲み取りコツコツと作り上げた方が、クレームも圧倒的に少なくなるはずです。しかし、これはハウスメーカーが逆立ちしても出来ない芸当なのです。
ハウスメーカーが家を工業化する理由は、マスにあります。大量の購入し大量に生産し、マスを利用してコスト削減を図り、収益を伸ばしているのです。
つまりは、メーカーの勝手都合の家を、如何にも良い家の様に見せかけて、ブランドと云う満足感を与えながら売りさばくと云う戦略しか取れないのです。
大量に売り捌く為に、シリーズに名前を付けます。新シリーズが如何にも斬新で良い製品かの様な宣伝をします。しかし考えて下さい。旧シリーズはどうなってしまうのでしょう。旧シリーズはハウスメーカーが、如何にも良いと宣伝して建てた家であるにも関わらず、流行遅れだと云わんばかりに新シリーズの宣伝をします。
数年ごとにモデルチェンジする様な造り方、売り方をする、ハウスメーカーの家造りに、新築して数年後から、旧式のシリーズだと云われ続ければ、200年も住む事など出来ません。
顧客一人一人に寄り添うと云う芸当は、中小の工務店さんしか出来ません。流行り廃れの無い家を、住まう人に寄り添いながら造りあげる家が本来の家造りではないでしょうか。