上町断層帯の危険な兆候
地盤が破壊されない限り建物は健全性を保つ
耐震構造や制震構造と異なり、地震の力を建物本体に基本的に伝えません。基礎と基礎から上の上部構造体がつながっていませんので、従来の構造では考えなくても良い苦労もしますが、地盤が崩壊しない限り最も安全な構造だと言えます。
転がり免震住宅を富田林市と京都市伏見区で、滑り免震住宅を堺市東区で設計・監理しました。
転がり免震は高性能ですが価格が高く、滑り免震は性能は劣りますが、価格は太陽光パネルとさほど変わりません。地震時に家族に寄り添えないご職業の方は免震住宅の検討をお勧めします。
高価だが究極の免震住宅【転がり免震】
基礎の上に写真の様な鉄の球を設置し、その上に鋼製架台を組み立てて、その上に木造の家を造ります。
地震時には鉄の球が一定の範囲内でコロコロと転がりますので、【転がり免震】と呼びます。
地震には非常に敏感で、理論的には摩擦抵抗は殆どゼロにする事も可能です。
私も経験しましたが、建物が完成しても建物固定装置を解除すれば、人の手で建物を動かす事が出来ます。
地震以外の外力(風圧等)に抵抗する為、普段は固定装置が働いてロックされています。地震が発生すれば電気や他の動力を用いず、自動でロックが解除され免震装置が作動します。
この装置の欠点は、非常に高価な装置である事です。30坪程度の建物でも700万円前後の費用が掛かり、建物総額を押し上げてしまいます。
地震が発生すれば、家族に寄り添えず仕事をしなければならない公務員の方や自営業の方、若しくは家に国宝級の壊してはならない家具や宝飾品のある家向きの免震装置です。
廉価だが建物の健全性を担保する【滑り免震】
土台の上に木製の架台を乗せ、その上に木造の家を造るシンプルな構造が【滑り免震】です。転がり免震よりも土台と架台の接点が多い為、鋼製架台を用いる必要がなく免震装置もステンレスの鉄板を曲げ加工した簡単なもので、価格は200万円前後とソーラーパネルと変わらないくらい廉価です。
この装置の欠点は、転がり免震より性能が劣る事です。性能は転がり免震よりも劣りますが、震度5弱程度から作動し、建物の揺れを震度4程度に抑えます。地震が恐れられる理由は建物が地震により倒壊の危険がある為で、建物が倒壊しないのであれば、少々揺れても構わないのでは、と言う発想の元に生まれた装置です。
免震住宅の制限と限界
地震に強い免震住宅でも災害に対し万能な訳ではありません。地震には他の構造の追随を許さない程高性能ではありますが、火災に対しては普通の木構造と同様の性能ですので、別途防火対策が必要になります。また、津波に関しては基礎と上部構造体が切り離れている為、返って流されやすいです。
また、地震時でも地盤が水平である事が条件ですので、軟弱地盤に設置は出来ません。(杭打ちとか地盤改良で解消出来る可能性もありますが。。。)
地震時に建物が動く(建物の中にいる人から見れば止まってると感じる)為、建物と境界塀の間隔を50cm以上取らないと塀と建物が衝突したり、人が間に挟まれる危険性があります。
免震住宅を真剣に考える時が来ている
耐震構造にしても制震構造にしても、震度7の地震が来れば震度7で揺れてしまいます。幾ら頑丈に造っても地面の揺れがそのまま建物に伝わってしまう構造です。地震の揺れを建物に伝えない構造は免震構造しかありません。
建築基準法の耐震性能は重力加速度400galに耐える事とされています。気象庁が発表している震度階で表現しますと震度6強に相当します。震度6強以上の地震が来れば建物の健全性が担保出来ないばかりでなく、人の命も危険に晒されるのです。
建築基準法は人の命を守る最低限の法律ですが、法律通りに建てた家でも倒壊し死者が出ています。定められた最低限の基準を満たすだけでは安全は担保出来ません。これからは免震住宅を真剣に考える時代に入っています。
紹介しました【転がり免震】【滑り免震】は、両方とも国土交通大臣の認定を受けた製品ですが、中には大臣認定を取得せず、設置しただけで建築基準法違反になる様な装置も見られます。
この様な違反の製品には安全基準が設けられておらず、安全性が担保出来ないばかりか、万が一他人に危害が及ぶ様な事が起これば刑事責任を問われます。
検討に際しては大臣認定を取得しているかいないかが安全を見極める大きな決め手となります。
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