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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

断熱材選びの真相

2015年8月13日 公開 / 2015年8月28日更新

テーマ:【エコ住宅】

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 断熱材 効果断熱材 DIY

クライアントからよく断熱材の指定を受けます。
断熱材選びをするにあたって、どれが一番性能が良いのかすごく勉強されています。地球温暖化が影響してるのか、省エネに興味があるのか、温熱環境に非常に関心が高まっているように思います。
各断熱メーカーも自社の長所を声高に宣伝し、究極の断熱材はこれだと云わんばかりの宣伝がネット上に溢れています。

今、木造二階建てで延べ坪35坪程度の平均的な戸建住宅を設計しています。この物件も断熱材をどれにするか色々種類を変えてシュミレーションを行いました。
初めに、断熱材を入れなかった場合です。窓はペアガラスを使用していますが、断熱材を取り除いてしまうと、温熱性能の指標であるQ値は6.45でした。これは滅茶苦茶暑い(寒い)家です。昭和45年以前の関西の建物には断熱材の概念がありませんでした。その頃の家は一階と二階の温度差が激しくクーラー等で力任せに空調しないととても住めません。
今も一般的な木造住宅の温熱に関するイメージはこの時代のイメージが染み付いています。


最も安価なグラスウール10kの断熱材を100mm厚で、壁・天井・床に入れるとQ値は2.03まで下がります。平成25年度省エネ基準はQ値では評価しませんので、それ以前の次世代省エネ基準で照らし合わせると、関西地域の殆どの目標値である2.7を下回ります。

同様に断熱材の厚みを変えずに種類を変えてシュミレーションしますと、

押し出し法ポリスチレンフォームがQ値1.926、


セルロースファイバーも同じくQ値1.926.


発泡ウレタンがQ値1.764。


フェノール系発泡材がQ値1.69でした。

性能重視で考えるとフェノール系発泡材が最も良い数値と云えます。気密をどう考えるかとかの工法的な問題を除けば現状では最も優れているでしょう。しかし、建築には費用が付いて回ります。
費用と性能をリストにすると下記の様になります。

断熱材               性能(Q値)       価格(円/㎡)
なし                  6.45                 ¥0
グラスウール10k           2.03               ¥1000
押出法ポリスチレンフォーム    1.926              ¥6640
セルロースファイバー        1.926              ¥6500
発泡ウレタン            1.764              ¥8330
フェノール樹脂発泡材       1.690              ¥7175

と云う結果です。勿論仕入ルートの違いで価格は変動しますが、コストパフォーマンスを考えるとグラスウールの実力は圧倒的と云う結果になります。逆にネット上でグラスウールの欠点が取りざたされるのは、コストで勝てないその他断熱材メーカーの戦略である様にも思えてきます。

某ハウスメーカーが宣伝文句にしているQ値1.0の家を造ろうと思えば、グラスウールでは断熱材の厚みを300mm程度にしなければならず、現実的ではありませんが、逆にQ値1.0にどれほどの意味があるのかも検証しなければなりません。

関連ページ
省エネ住宅と窓  http://mbp-japan.com/osaka/oado/column/26902/
省エネ住宅と換気 http://mbp-japan.com/osaka/oado/column/26971/

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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