作業服を着た営業マン
ある日、突然非通知電話が鳴りました。非通知電話はキャッチセールスの電話が多いので警戒しながら出ると、「免震住宅に興味があって色々調べているので教えて欲しい」との事。
私も、免震住宅に関心を持って頂くのは不本意な事ではありませんので、「そういうことであれば」と基本的なところから話し始めます。
現在、開発されている主な免震装置の種類やそれぞれの特徴を説明します。私は免震装置業者の営業マンではありませんので、良いところ悪いところ、私見ですが忌憚のない事を話します。
しかし、返ってくる返答が常に懐疑的なのです。それも色々調べていると云いながら、免震構造とはどんな構造を指すのかと云う、本質的なところを理解されず、免震と名がついていれば片っ端から情報を集めている様子で、「地中に5m程コンクリート(杭とは言わない)を打ち込んで、それに建物を緊結する免震工法があるがご存知か?」と云った質問を返してきます。
「免震工法と云うのは、地震力を基礎から上の上部構造部に伝えない工法を免震工法と言うのですよ」と云うと「国交省の認定商品と書いてあるので間違い無い商品だ」と云う返事が返って来ます。「地面と建物を緊結してしまえば、それは耐震構造で免震ではありません」と付け加えると、「安価で地震に強ければそれで良いではないか」と切り返してきます。
繰り返しますが、私は技術者で営業マンではありません。免震装置を販売する義務はありません。ですので質問されれば、自分の信じるところを出来るだけ客観性を持って、説明する様に努めています。
そこを理解されず、電気量販店で家電製品を買う時の、営業マンと客のやり取りの様な調子で質問をぶつけられるのは甚だ心外です。しかも非通知で。
教えを乞うのであれば、それなりの誠実さが必要かと思います。非誠実で、知りたい情報のみを集めると必ず失敗します。何故ならば、知りたい情報を素人さんが収集すると、本当に知りたい情報を集めるのではなく、自分にとって都合の良い情報のみを集めてしまう傾向にある為です。
自分にとって都合の良い情報で、自分の主張を正当化して、興味が好意に変わりそのうち確信に変わり、結果として失敗します。
情報の発信者はどの様な立場の人で、情報発信の目的は何で、発信することにより何をしようとしている人なのか。そこを吟味して情報に重みをつけて整理しないと大きな間違いを起こします。