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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

昭和な家

2013年2月4日

テーマ:【カフェテラス】

コラムカテゴリ:住宅・建物

先日、平成世代の方から建替え新築のご相談を受けました。今まで住んでいた家が暗く、寒く、湿気が酷いの三重苦であるため、それらを解消するには建替えが最も効果的と判断したとの事でした。私も同意見です。
相談者さんは極めてノーマルな方で、気持ちの良いお付き合いが出来そうなのですが、一つだけ絶句したリクエストをされました。それが、「昭和な家に住みたい」と云うものです。
大正時代の近代住宅草創期の家の雰囲気が良いとか、明治時代の洋風建築に憧れを感じるとか言われれば、私も知識として、頭に詰め込んでありますので、イメージ出来るのですが、昭和時代をその様に考えた事がありません。
私は昭和のど真ん中世代ですので、昭和のことなら大体の事は解りますが、平成世代の方が何をして昭和だと感じているのが分かりません。「三丁目の夕日」とか「コクリコ坂から」とか最近、昭和をテーマにした映画が何本か上映され、それらを昭和の知識として得られているのでしょうか?

大変良く出来た映画で、確かに郷愁をそそるのですが、CGを見る様な違和感も感じます。昭和の全てを投影していないのです。
映画の時代には、アルミサッシュはありません。ユニットバスなんて昭和55年以降の製品です。ハード面で昭和の建物が良いと仰っているのではない事は、建替え理由からも明らかです。
では、ソフト面の昭和とはどの様なものだったのでしょうか。平成の今の世と大差無いようにも思うのですが、平成世代の人たちはそこに明らかな違いを感じている様です。
昭和にあって平成に無い何かを、それ以降ずっと考えています。おぼろげながら思い当たる節も何点か見つかりました。それは親から子、子から孫へ伝わる家族のアイデンティティーではないでしょうか。昭和時代では「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」に代表されるように三世代同居が当たり前でした。昭和の後半から核家族化が進み、家族のアイデンティティーを受け繋ぐ機能がが失われています。
アイデンティティーと云えば、焦点がボケますが、日本人としての道徳心とか、人を思いやる気持ちと云った方が良い様な気もします。人が人としてやって良いこと悪いことは私も、父母よりも、お爺いちゃん、お婆ちゃんに教わった記憶の方が多く残っています。
色々な事情があり、核家族化が進んだのですが、新しい日本人のアイデンティティーを次の世代に伝える事の出来る家を設計してくれと云われた様な気がしています。

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