外国人の人材派遣会社の新規立ち上げ
厚生労働省は7月8日、派遣労働者の「同一労働同一賃金」*¹に関して、令和2年度に適用する「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」などを公表しました。
(*¹ 通常の労働者との不都合な待遇格差の禁止)
【派遣にも「同一労働同一賃金」】
働き方改革による「同一労働同一賃金」のルールが、令和2年4月より施行されます。中小企業は1年猶予され令和3年4月からですが、派遣労働者については中小企業の猶予はなく、令和2年4月よりの施行となります。
派遣労働者の「同一労働同一賃金」は、雇用されている派遣会社の同種の労働者ではなく、派遣先(派遣され就業する事業所)に雇用される通常の労働者と比較するものですが、派遣先が変わる度に賃金が増減する不都合があることなどから、厚生労働省令で定める額以上で支払う旨を労使で協定する方法も選択することができます。つまり、派遣労働については「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを選択することになります。
今回、公表された平均的な賃金額等は、この労使協定方式をとる場合に用いるものです*²。労使協定方式について見ていきましょう。
(*² 一定の基準を満たす場合のみ他の統計を用いることもできます。)
【労使協定方式とは】
労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、一定の事項を定め、その協定の対象となる派遣労働者の賃金を支払ったときは、「同一労働同一賃金」として均等・均衡待遇を確保したものとされます。
たとえば、基本給などについて、次のように計算して時給換算した一般の賃金の水準を求めます。
「(イ)職種別の基準値×(ロ)能力・経験調整指数×(ハ)地域指数」*
*(イ)×(ロ)=X(小数第1位四捨五入)
X×(ハ)=一般賃金(1円未満切り上げ)
「職種別の基準値」については、今回、「システムエンジニア1,427円」(賃金構造基本統計調査)、「一般事務1,026円」(職業安定業務統計)等と時間当たりの額が公表されています。「能力・経験調整指数」については、勤続年数別に統計により算出した指数を用い、「1年116.0」「2年126.9」…「5年138.8」…などとされています。「地域指数」は、全国計を100としたときの都道府県ごとの指数が算出されています。*³
(*³ 都道府県別地域指数による)
▼(例1)
●システムエンジニア、1年目、東京都の場合
①基本給・賞与等の額
1,427円×116/100×114.1/100=1,889円
②①の場合において、派遣労働者に通勤手当(交通費)の支給がない場合の基本給・賞与等の額
①の金額に72円(2020年度)を追加します。
1,427円×116/100×114.1/100+72円=1,961円
通勤手当の額は、局長通知で示される「一般通勤手当」の額を使用します(2020年度:72円)。なお、全額実費支給の場合は、「基本給・賞与等の額」に計上する必要はありません。また、通勤手当の上限金額を設定している場合でも、1時間当たり72円(2020年度)以上であれば同様に計上は不要です。
③①の場合において退職金がない場合(退職金前払いをとる場合)の基本給・賞与等の額
①の金額の6%(2020年度)を加算します。
1,427円×116/100×114.1/100+{(1,427円×116/100×114.1/100)}×6%=2,003円
派遣労働者にも退職金制度等がある場合、加算は不要です。
●システムエンジニア、5年目、東京都の場合
①基本給・賞与等の額
1,427円×138.8/100×114.1/100=2,261円
(職種別の基準値能力・経験調整指数をかけ、四捨五入したものに地域指数をかけ1円未満繰り上げ)
②①の場合において退職金がない場合(退職金前払いをとる場合)の基本給・賞与等の額2,261円+(2,261円×6%)* =2,397円
*1円未満切り上げ
▼(例2)
●一般事務、1年目、大阪の場合の基本給・賞与等の額
1,026円×116/100×108.3/100=1,112円
●一般事務、5年目、大阪の場合の基本給・賞与等の額
1,026円×138.8/100×108.3/100=1,543円
なお、「局長通知」は毎年6月~7月頃に発表され、次年度(翌年4月1日)より適用となるため、毎年度賃金額の見直しが必要となります。
また、労使協定の届出は不要ですが、毎年の「労働者派遣事業報告書」(2020年度より少しフォームが変更されます)の提出の際に、労使協定の添付が必要となります。