社会保険労務士が取り扱うべき法律2
社会保険労務士(以下「社労士」という。)は、「社会保険労務士法」に基づく国家資格です。そしてこの社会保険労務士法には、社労士が業とすることができる基準(社労士が取扱うべき法律)が定めてあります。社労士は、この「社会保険労務士が取り扱うべき法律」に定めがある「労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」)」に関する書類の届出や審査請求等を業として行えます。
この「社会保険労務士が取り扱うべき法律」を2回に分けてご紹介します。
【労働社会保険諸法令】
労働基準法
→労働条件の最低基準を定めた法律。
労働者災害補償保険法
→業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障がい、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする法律。
職業安定法
→公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適切かつ円滑な調整に果たすべき役割に鑑みその適切な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もって職業の安定を明かるとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする法律。
雇用保険法
→労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の拡大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする法律。
労働者保険審査官及び労働保険審査会法
→労働保険の被保険者資格や保険給付に関する審査請求の手続きについて定めた法律。
職業能力開発促進法
→職業訓練及び職業能力検定の内容の充実強化及びその実施の円滑化の為の施策並びに労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職能検定を受ける機会を確保するための施策等を総合的かつ計画的に講ずることにより、職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させることを促進し、もって職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする法律。
駐留軍関係離職者等臨時措置法(第10条の2の規定に限る)
→日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊又は本邦の領域内にあった国際連合の軍隊の撤退等に伴い、多数の労働者が特定の地域において一時に離職を余儀なくされること等の事情に鑑み、これらの者に対し、特別の措置を講じ、もってその生活の安定に資することを目的とする法律。
・公共職業安定所が行う、駐留軍関係離職者であって、公共職業安定所長が認定した者への再就職を促進するための職業指導について(第10条の2)
最低賃金法
→賃金の少ない労働者について、賃金の最低額を補償することにより、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律。
中小企業退職金共済法
→中小企業の従業員について、中小企業者の相互扶助の精神に基づき、その拠出による退職金共済制度を確立し、従業員の福祉の増進と中小企業の復興に寄与すること等を目的とする法律。
国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法
→漁業をめぐる国際環境が急激に変化している状況下における国際協定の締結等の事態に対処するための漁船の隻数の縮減に伴い、一時に多数の漁船離職者が発生することが見込まれる等の事情に鑑み、再就職の促進等のための特別の措置を講じ、もって漁船離職者の職業及び生活の安定に資することを目的とする法律。
じん肺法
→じん肺に関し、適切な予防及び健康管理その他必要な措置を講ずることにより、労働者の健康保持その他福祉の増進に寄与することを目的とする法律。
障がい者の雇用促進等に関する法律
→障がい者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用分野における障がい者と障がい者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障がい者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障がい者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、障がい者の職業の安定を図ることを目的とする法律。
激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(第25条の規定に限る)
→著しく激甚である災害が発生した場合における国の地方公共団体に対する特別の財政援助又は被災者に対する特別の助成措置について規定する法律。
・激甚災害を受けた政令で定める地域にある雇用保険法の適用事業に雇用されている労働者が、当該事業の事業所が災害を受けたため、やむを得ず、事業を休止又は廃業したことにより休業するに至り、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、就労することができず、かつ、賃金を受け取ることができない状態にあるときは、失業しているものとみなして基本手当を支給することができるといった求職者給付の特例について(第25条)
労働災害防止団体法
→労働災害の防止を目的とする事業主の団体による自主的な活動を促進するための措置を講じ、労働災害の防止に寄与することを目的とする法律。
港湾労働法
→港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、港湾運送に必要な労働力の確保に資するとともに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ることを目的とする法律。
雇用対策法
→労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする法律。
炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
→炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関し、一酸化炭素中毒症にかかった労働者に対して、特別の保護措置を講ずること等により、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする法律。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
→労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立や消滅、保険料の納付の手続き、労働保険事務組合等に関し、必要な事項を定めた法律。
家内労働法
→家内労働者(自宅などを作業場として、製造・加工業者などの業者から物品の提供を受け、その物品を部品又は原材料とする物品の製造や加工を行う者)の労働条件の向上を図り、家内労働者の生活の安定に資する為、家内労働手帳、工賃支払いの確保、最低工賃、安全衛生の措置など家内労働者に関する基本的な事項について定めた法律。
勤務者財産形成促進法
→勤労者の計画的な財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律。
高齢者等の雇用の安定等に関する法律
→定年の引き上げ、雇用継続制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする法律。
沖縄復興特別措置法(第78条の規定に限る)
→沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み、沖縄振興基本方針を策定し、及びこれに基づき策定された沖縄振興計画に基づく事業を推進する措置を講ずることにより、沖縄の自主性を尊重しつつその総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の現実に寄与することを目的とする法律。
・公共職業安定所長の発給する沖縄失業者求職手帳について(第78条)
労働安全衛生法
→労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律。
後半は、10月5日のコラムでご紹介します。