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コラム

第三者の行為による労災(交通事故に遭った場合)

2019年4月16日

テーマ:労災保険

コラムカテゴリ:法律関連

労災保険の給付の原因である事故が、第三者の行為によって生じたものであって、第三者が損害賠償の義務を有しているものを「第三者行為災害」といいます。例えば、出張中や勤務途中で交通事故にあった場合や、通勤途中にペットにかまれた場合などがこれにあたります。

第三者行為災害にあった場合、労災保険からの給付と第三者に対する損害賠償の請求権を同時に取得することになります。しかし、同一の事由について、両者から損害の補償を受けるとなれば、実際の損害額より多く支払われることとなり、不合理です。また、本来被災者への損害のてん補は、政府ではなく災害の原因となった加害者が負担すべきものと考えられます。よって、第三者にあった場合、次のような調整が行われます。

<労災保険給付を先に受け取ったとき(求償)>
被災労働者が、政府から労災保険給付を受けた場合です。この場合、本来第三者が行うべき損害賠償を政府が肩代わりした形となります。よって、被災労働者は、政府から給付を受けた代わりに、第三者に対する損害賠償の請求権を政府に渡すことになります。そして、政府は第三者へ価格の限度で損害賠償の請求を行います。

<第三者からの損害賠償を先に受け取ったとき(控除)>
被災労働者が、第三者から損害賠償を先に受けた場合、政府は労災保険給付から同一事由に相当する損害賠償額を差し引いて給付を行います。よって、損害賠償額が政府の保険給付額を上回る場合は全額不支給となります。

<調整の対象となる範囲と限度>
調整の対象となるのは、保険給付と同一の事由に基づく損害賠償に限られます。よって、精神的苦痛に対する「慰謝料」「見舞金」等は含まれません。
 
<自賠責保険(共済の場合は自賠責任共済)の関連>
自動車事故の場合、強制加入の自賠責保険と労災保険給付のどちらを先に受けるかは、被災者等が自由に選べます。先に自賠責を受けた場合、引続き自動車の任意保険による保険金を受けるか、労災保険給付を先に受けるかについても被災者等が選ぶことができます。

先に自賠責を選択した場合、被害者一人につき、上限120万円(治療関係費・休業損害・文書料・慰謝料)まで支払われます(傷害の場合)。自賠責では、労災保険では給付が行われない慰謝料など療養費の対象が幅広いくなっており、休業損害は、1日原則5700円(上限19000円)となり、ほぼ100%支給されます(労災保険の休業(補償)給付では、80%)。

一般的には自賠責を優先する方が多いでしょう。ただし、次のような場合は労災保険の給付を選択した方が良いかもしれません。
①自分の過失割合が大きい場合や揉めているとき(自賠責の保険が減額される可能性がある)
②相手が運行供用責任を認めない場合(自賠責の請求が困難となるため)
③相手が無保険もしくは補償保険が不十分な場合(任意保険に入ってないとき等)
④治療費が高額になる場合

<示談を行った場合>
次の2つの要件を満たしている場合、原則政府から保険給付は行われないので注意が必要です。
①示談が真正に(錯誤や強迫でないこと)成立している
②その示談の内容が、受給権者の第三者に対して損害賠償請求権(保険給付と同一事由に基づくものに限る)の全部のてん補を目的としている

②については、損害の一部について保険給付を受けるとしている場合や、示談書の文面上、全損害のてん補を目的としていると認められない場合には、該当しないと考えられています。なお、示談を行う場合は、事前に労働局又は労働基準監督署に連絡し、示談書の写しを提出しましょう。

<書類>
〇被災者
通常の書類に加え、「第三者行為災害届」「念書(兼同意書)」「交通事故証明書」、場合によっては「戸籍謄本」(死亡した場合)や「示談書の謄本」(示談が行われた場合)等が必要となります。提出のタイミングは、原則労災保険給付に関する請求書より先または、同時に提出する必要があります。

〇第三者
労働基準監督署から、「第三者行為災害報告書」の提出を求められた場合は、速やかに提出する必要があります。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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