ブラック企業の改善例、方法は?

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:ブラック企業にならないために

「ブラック企業」に対する風当たりは強まっています。「ブラック企業」は、低賃金、重労働かつハラスメントが常態化している企業ですが、対岸の火事ではありません。

実は、知らず知らずのうちに、違法状態が続き「ブラック企業になっている」ケースも見られます。「ブラック企業」と呼ばれないために、まずは自社の労働環境をしっかりとチェックしましょう。

この記事では、「ブラック企業」の特徴を紹介します。ここで紹介した内容を他山の石として労働環境の改善に役立てていただければと思います。

労働者を低賃金で酷使する「ブラック企業」

前回の記事で詳しく解説しましたが、念のため、「ブラック企業」はどのようなものか振り返っておきましょう。

厚生労働省は「ブラック企業」にある一般的な特徴を次のように記述しています。

「①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す」「②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い」「③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う」

要するに、違法労働が常態化しているだけでなく、過度なプレッシャーを日常的に受ける環境にある職場が「ブラック企業」です。

では、厚生労働省が指摘する内容を踏まえたうえで「ブラック企業」によく見られる特徴について見ていきましょう。

まず挙げられるのが「給与が低すぎる」ことです。

最低賃金法など、各種法律を無視した賃金がまかり通っています。例えば、不動産営業や証券営業などにおいて、「基本給6万円プラス出来高払い」とするようなケースです。よく考えてみてください。基本給6万円で生活することができるでしょうか。おそらく家賃を支払うことさえままならないでしょう。このように、インセンティブがなければ生活できない給与設計にしている企業は間違いなくブラックです。

なぜこのような給与体系にするかといえば、経営者が労働者の実態について理解していないからです。経営者は「できないやつが悪い」と考えていますが、最初からできる人はサラリーマンにならないでしょう。

本来、経営者は勤務する社員を育成し、生活を保障する立場にあります。それにもかかわらず、インセンティブがなければ生活できないようにするのは、社員をいつでも替えのきく“モノ”として見ているのかもしれません。

労働環境の改善が急務の「ブラック企業」

それから給与面については「残業代を支払わない」というのも、「ブラック企業」の典型的な特徴です。近年、ブラックな働き方だと話題になっている裁量労働制は「ブラック企業」でよく見られます。

裁量労働制は、営業職など、自身の裁量によって働く者について、一定の時間勤務したとみなす制度のことです。

裁量労働制では、一般的に「給与に月40時間分の残業代を含む」などとしていますが、月60時間残業しても残業代を支払わない企業が続出しています。

この場合、超過した20時間分について企業は残業代を支給しなければなりません。さらに、裁量労働制が適用された労働者は、仕事のやり方に関して細かな管理を受けないのが特徴ですが、裁量を持たせず、経営側の言いなりにして使い捨てる悪質な事例も見られます。

そもそも「給与に月40時間分の残業代を含む」としている時点で長時間労働が慢性化していることに気づくでしょう。裁量労働制を導入している企業は、ブラック体質であるケースが多いものです。

ハラスメントが常態化しているのも「ブラック企業」の特徴です。近年、ハラスメントは細分化され、種類は多岐にわたっています。

パワーハラスメントのほか、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどがよく聞かれます。

どれも看過できないものですが、とりわけ上司によるパワーハラスメントが問題になっています。身体的な痛めつけのような目に見える暴力だけでなく、暴言もまかり通っています。傷つきやすい若者の場合、パワーハラスメントによって、退職のほか、電通事件で見られるように、最悪の場合、自殺にまで至る事例も報告されています。

「ブラック企業かもしれない」と一度疑ってみる

「ブラック企業」であると社会的に認知されれば、人が集まらないばかりか、取引先からの信用を失う事態になりかねません。そうなれば、事業を継続することは難しくなるでしょう。そうならないために、ぜひ一度、「我が社にはそういった問題点はないかな」と会社の制度や現状を確認してください。

例えば、古参従業員の行う昔ながらの指導法がパワーハラスメントになっているケースや、女子従業員にお茶くみを強制しているケース、労働時間を適切に把握していないケース、特定の従業員に仕事を集中させているケース(または従業員に仕事をさせない)など。さまざまな問題点が見えてくるかもしれません。

「ブラック企業」に対する社会の目は年々厳しくなっています。まずは自社の状況をしっかりとチェックし、自己反省を繰り返すことが「ブラック企業」と呼ばれないためには重要です。

そして、自己チェックをして出てきた労務課題は決してそのままにせず、社会保険労務士ほか、労務の専門家に相談しつつ、ひとつずつ解決していきましょう。

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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