年金の受給資格が25年→10年に短縮
Q:会社の経営者をしていますが、子会社を設立し新事業を始めることにしました。今後、二社から役員報酬を受けますが、社会保険の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
A:複数の事業所において、同時に使用される場合、いずれの事業所でも資格取得届を提出しますが、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」(以下「二以上事業所勤務届」といいます)を提出し、複数の事業所から受ける給与(報酬)の合算額をもとに、保険料を負担し、給付を受けることになります。
●複数の勤務とは
社会保険に加入するのは、労働者であれば、原則として週の所定労働時間および月の所定労働日数が一般の者の3/4以上ずつ複数の会社で勤務しているというケースです。本業とは別に、アルバイトで短時間勤務をするような場合は該当しません。
法人役員の「使用される」かどうかの判断は、定期的な出勤の有無などから総合的に判断されます。いわゆる「非常勤役員」であれば該当しませんが、代表取締役は基本的に「常勤役員」とみなされますから、複数の会社を経営する社長などが、「二以上事業所勤務届」の対象となることがあります。
以前は、複数事業所に使用されるケースについて、年金事務所もあまり積極的に指導していなかったようですが、公平な保険料負担などを目的に、最近は、年金事務所から「二以上事業所勤務届」を提出するよう指導される会社が増えています。※
●届出するとどうなる?
この「二以上事業所勤務届」を提出すると、厚生年金、健康保険の保険料などの算定のもとになる「標準報酬月額」は、複数の適用事業所から受ける報酬の合算額で決定されます。
届出により事業所を選択しますが、選択した事業所を管轄する年金事務所が基本的な窓口になります。ただし、健康保険組合に入っている事業所を選択した場合、健康保険は健康保険組合が、厚生年金保険は年金事務所がおこないます。
健康保険証は選択した事業所のものを使うことになりますから、選択事業所の加入する協会けんぽ、または健康保険組合に保険料を支払い、給付を受けます。※
●標準報酬月額の決定および保険料の納付等について
選択した事業所を管轄する年金事務所において各事業所で受ける報酬月額を合算し、法律に定められた上限額までの範囲で標準報酬月額を決定します。
健康保険組合に加入する事業所を選択した場合、健康保険組合が合算して算定した標準報酬月額により保険料の徴収と各種給付をおこないます。
保険料の納付については、標準報酬月額による保険料額を事業所ごとに支払われる報酬月額に基づいて按分し、各事業所から納付します。さらに保険料は、それぞれ会社と被保険者で折半します。
●手続きは選択先へ
「二以上事業所勤務届」は、選択する事業所を管轄する年金事務所または健康保険組合へ、事実発生から10日以内に行います。