雨漏りを黙って売ったらどうなる?

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産売却

「前に一度だけ雨漏りしたけれど、直したし、言わなくてもいいですよね?」

大阪市西区で不動産仲介をしております重村です。売却のご相談で、こうした質問をいただくことは珍しくありません。売主さまとしては、わざわざマイナス情報を出して売れなくなるのが怖い。当然のお気持ちだと思います。

ただ、結論から申し上げると、黙って売るのがいちばん高くつきます。今回は売却前に向き合っていただきたい「告知」の話を、3つの視点で整理します。

①「告知書」は事務書類ではなく、売主を守る書類

売買のとき、売主さまには「物件状況等報告書(告知書)」という書面を書いていただきます。雨漏り、シロアリの被害、給排水管の不具合、過去の修繕履歴、隣地との境界や越境の問題など、売主だからこそ知っている情報を買主に伝えるための書面です。

これを「不動産会社が用意する事務書類」と思って、深く考えずに「無」に丸をつけてしまう方がいらっしゃいます。ですが実務上、この書面の意味は逆です。書いた情報については、買主が了解したうえで購入したことになる。つまり売主を守る盾になります。

2020年4月施行の改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。ポイントは、隠れた欠陥かどうかではなく、契約の内容に適合しているかどうかで判断される点です。告知書に「過去に雨漏りあり、○年に修繕済み」と書いてあれば、それは契約の前提です。逆に、書かずに黙っていれば「聞いていた内容と違う」と主張される余地が残ります。

②「知っていて言わなかった」場合は、免責特約も効きません

個人が売主の中古住宅では、契約不適合責任を一定期間(引渡しから3か月など)に限定したり、免責としたりする特約を結ぶことがあります。ここで安心してしまう方が多いのですが、落とし穴があります。

民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません。つまり「知っていたのに黙っていた」ケースだけは、契約書の特約が盾にならないということです。

その結果、修補の請求、代金の減額請求、損害賠償、程度によっては契約解除まで求められる可能性が出てきます。数十万円の修繕を隠したために、売却後にそれを大きく上回る金額の話になる。決して大げさな例ではありません。

③心理的瑕疵は、国のガイドラインが目安になります

もうひとつ判断に迷いやすいのが、過去に人が亡くなった事実など、いわゆる心理的瑕疵です。2021年10月に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、実務の目安が示されました。

自然死や、日常生活のなかでの不慮の事故死は、原則として告げなくてよいとされています。一方、自殺や他殺、または長期間発見されず特殊清掃等が行われた場合は告知が必要とされ、賃貸ではおおむね3年が一つの目安とされました。ただし売買については期間の目安が示されておらず、買主から尋ねられた場合や、買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、期間にかかわらず告げるべきとされています。

判断に迷う事情があるなら、隠すのではなく、まず担当者に正直にお話しください。伝え方を含めて一緒に考えるのが私たちの仕事です。

現場で感じていること

実務の感覚として、告知した情報が理由で破談になることは、そう多くありません。買主さまが本当に嫌がるのは、不具合そのものより「隠されていたこと」です。過去に雨漏りがあり、原因を特定して修繕し、その記録も残っている。ここまで説明できる物件は、むしろ「きちんと手を入れてきた家」として評価されることさえあります。大阪市内は中古住宅の流通量が多く、買主さまも複数の物件を見比べています。その中で情報の透明さは、思っている以上に選ばれる理由になります。

まとめ

売却前にやっていただきたいのは、次の3つです。

1.修繕やトラブルの記憶を、時期と内容まで思い出して書き出す
2.見積書や工事の領収書、保証書など、手元の記録を探す
3.迷う情報こそ、隠さず担当者に先に伝える

言いにくいことを先に出しておけば、価格にも契約条件にもあらかじめ織り込めます。後から出てくると、それはトラブルになります。損害賠償の可否など具体的な法的判断は弁護士の領域ですが、その手前で「何を、どう伝えれば安全に売れるか」を整理するのは、不動産会社の役割だと考えています。

少しでも気になる点があれば、売り出す前の段階でご相談ください。

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重村裕一
専門家

重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

大阪で相続不動産の売却・活用に悩むならご相談ください。IT企業出身の異色キャリアを持ち「不動産で損する人をなくしたい」という信念のもと、相続・売買・賃貸・投資まで不動産全般を一貫サポートします。

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