黒字なのに現金が減る?投資の落とし穴

重村裕一

重村裕一

テーマ:不動産投資

「収支はプラスのはずなのに、通帳のお金が増えていかないんです」

大阪市西区で不動産仲介をしておりますと、収益物件を数年お持ちのオーナー様から、こうしたご相談をいただくことがあります。家賃はきちんと入っている、大きな空室もない、確定申告でも利益は出ている。それなのに手元の現金が細っていく。

これは経営が下手なわけでも、物件が悪いわけでもありません。不動産投資の帳簿と現金の動きが、そもそも一致しない仕組みになっているからです。今回は、購入前に知っておいていただきたい「黒字なのにお金が減る」構造についてお話しします。

①帳簿の利益と手元の現金はズレる

不動産の会計には、現金が出ていかないのに経費になるものと、現金が出ていくのに経費にならないものがあります。

前者が減価償却費です。建物の取得費を法定耐用年数に応じて各年に配分して経費計上するもので、実際に支払いは発生しません。後者がローン返済の元金部分です。毎月きちんと支払っているのに、経費にできるのは利息部分だけで、元金は経費になりません。

つまり利益の計算式は「家賃収入−経費−減価償却費−利息」ですが、実際の現金の動きは「家賃収入−経費−元金−利息−税金」。この二つがズレる以上、黒字と手残りは別物になります。

②減価償却が終わると、景色が変わる

問題は時間が経ったときです。

減価償却費は永遠には続きません。建物の耐用年数(鉄筋コンクリート造は47年、木造は22年が法定の目安。中古の場合は経過年数に応じた簡便法で算出します)を過ぎれば、償却は終わります。一方でローンの元金返済は、元利均等返済であれば年々元金の割合が増えていきます。

減価償却費が減り、経費にならない元金返済が増える。この二つが逆転する状態は、一般に「デッドクロス」と呼ばれます。ここに入ると、帳簿上の利益が膨らんで所得税・住民税の負担が増える一方、現金は出ていくばかりという状況になります。

築古の木造アパートを短い償却期間で節税目的に購入されたケースでは、この転換点が想像より早く訪れます。「最初の数年は節税になって良かったのに、そこから急に苦しくなった」というご相談は、たいていこの構造です。

③購入前に、5年後・10年後の手残りを出しておく

対策は、購入を検討する段階で数字を並べておくことに尽きます。

見るべきは表面利回りではなく、税引後のキャッシュフローです。年ごとに減価償却費がいくら残り、元金返済がいくらになり、課税所得がどう推移するのか。売買図面の利回りだけでは、この推移は一切見えません。

そのうえで、繰上返済で利息を圧縮する、返済期間を見直す、償却が切れる前に売却して次に組み替える、大規模修繕を計画的に資本的支出として扱うなど、打てる手はあります。いずれも「気づいてから」より「買う前から」のほうが選択肢が広く残ります。

なお、減価償却の計算方法や修繕費と資本的支出の区分、適用できる制度は個別事情と税制改正で変わります。具体的な税額の判断は必ず税理士にご確認ください。私たち不動産会社の役割は、その前提となる物件の収益性と将来の売却可能性を、正直にお伝えすることだと考えています。

まとめ

不動産投資で怖いのは、赤字よりも「黒字のまま現金が尽きること」です。大阪市内は賃貸需要が底堅く、収益物件としての選択肢も豊富ですが、その分だけ数字の見せ方も上手な資料が出回ります。

利回りの数字を見たら、次は「10年後、手元にいくら残るか」を聞いてみてください。そこに即答できる担当者かどうかで、その物件と会社の見え方は変わってくるはずです。

▼お問い合わせは公式LINEから
ご相談・お問い合わせは、こちらの公式LINEよりお気軽にどうぞ。
公式LINEでお問い合わせ

▼あわせて読みたい不動産投資のコラム
梅田・難波・天王寺、投資するならどのエリア?
空室に強い投資物件、選ぶ前の3つの基準

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

重村裕一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

重村裕一
専門家

重村裕一(宅地建物取引士)

株式会社クレアクロス

大阪で相続不動産の売却・活用に悩むならご相談ください。IT企業出身の異色キャリアを持ち「不動産で損する人をなくしたい」という信念のもと、相続・売買・賃貸・投資まで不動産全般を一貫サポートします。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

信用と信頼を第一に、顧客に寄り添う不動産の専門家

重村裕一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼