生前贈与として不動産を譲り受ける時の対処方法
大阪市内で仲介の仕事をしていると、「実家の名義がまだ亡くなった父のままで…」という相談以上に、実は「親がまだ健在なのに、認知症の診断が出てから不動産を動かせなくなった」というご相談を受けることが増えています。
生前贈与や売却は「元気なうちに」動かないと、法律的に手続きそのものができなくなってしまうケースがあります。今回は、認知症になる前に不動産所有者ができる備えについて、実務の現場からお伝えします。
①認知症になると、なぜ不動産が動かせなくなるのか
不動産の売買契約や贈与契約は、本人に「意思能力」があることが前提です(民法3条の2)。認知症が進み判断能力が失われたと判断されると、契約自体が無効になるリスクがあるため、金融機関や司法書士は本人確認と意思確認を厳格に行います。
実際に私が担当した大阪市内の案件では、80代のオーナー様が認知症の診断を受けた後にご自宅マンションの売却を希望されましたが、意思確認が取れず、成年後見制度を利用するまで半年以上手続きが止まってしまいました。後見人選任後も、家庭裁判所の許可が必要な場面があり、当初想定していたタイミングでの売却はできませんでした。
②元気なうちに検討したい「家族信託」という選択肢
家族信託は、判断能力があるうちに不動産の管理・処分権限を信頼できる家族(受託者)に託しておく契約です。認知症発症後も、受託者が信託契約の範囲内で売却や賃貸管理を進められるため、成年後見制度のように家庭裁判所の許可を都度得る必要がありません。
一方で、信託契約書の作成には司法書士や弁護士への相談費用がかかり、信託財産以外の資産には効力が及ばない点には注意が必要です。
③生前贈与・任意後見契約との使い分け
生前贈与は、贈与税や登録免許税・不動産取得税のコストを踏まえたうえで、早めに所有権を移す方法です。一方、任意後見契約は、判断能力低下後の「身上監護」も含めて備えたい場合に向いています。
どの制度も「元気なうちに契約を結ぶ」ことが絶対条件です。認知症の診断が出てからでは選択肢が大きく狭まってしまいます。
まとめ
不動産は「そのうち考えればいい」と後回しにされがちな資産ですが、認知症は誰にとっても他人事ではありません。ご両親やご自身の資産について、家族信託・生前贈与・任意後見契約のどれが合うのか、判断能力があるうちに一度専門家に相談してみてください。


