認知症介護は自から他へ
今回は前回の続き「認知症初期の家族の役割り①」です。
認知症患者の家族が困る症状
認知症になると、人・場所・時・段取りが分からなくなることによって、妄想、幻想・暴言、暴力・異食・不安・不潔・拒否・徘徊・不眠などの症状が出てきます。これらが認知症患者の介護する上でストレスとなるものです。
しかし考えてみて下さい。私たちが急に人・時間・場所・段取りが分からなくなったら不安になるのは当たり前です。怒りやイライラの原因に不安が根っこにあるのは正常な反応です。
つまり、家族がストレスに感じる症状は、誰でも感じる正常な反応なので、コミュニケーションの工夫次第で改善することができます。
息子がドロボウ
症状の中でも、私が一番、怒りを感じて悲しかったのは、「息子がドロボウ」になった妄想。この妄想が出るのはアルツハイマー型認知症の初期症状に多いようです。
このような心理を分析すると、物忘れが激しくなったのは本人も自覚しています。そこで自分の記憶がしっかりしているうちに、大切なモノ(お金)を分からないところに隠します。
隠したのはいいが、少し時間が経つと隠したことを忘れ、いつものバックに入れた財布の中を確認すると「えっ? 財布の中にお金がない!」これを知っているのは息子だけ・・・ これで「息子がドロボウ」になります。
この症状を、お袋の内省に視点を変えると、「息子は私の大切なお金の管理してくれているので信頼できる」という位置づけになっています。このお袋の想いを理解しておれば、腹を立てたり悲しくなるストレスを軽減することができます。
「お金を隠して忘れる」の対策として私が行なったのは、お金を一緒に探すという共同作業です。隠しているお金が見つかると本人も私も嬉しいので、この共同作業は盛り上がりました。
親子で一緒に宝物を探すような気持ちになって楽しめるようになりましたよ。但し、お金を見つけた時に大切なポイントがあります。私が先に見つけたとしても「この辺を探してみて」と言って本人に見つけさせることです。
私が見つけてお金を手渡すと「やっぱりあんたが盗んでいたな」となりかねませんからね。もちろん「息子がドロボウ」から、すぐに楽しめるようになったわけではありません。
少しだけ健常者の概念を外すことによって、いくらでも認知症患者との関係性を修復することができる上に、双方が笑顔で過ごす時間が増えて目の前が明るくなるはずです。
徘徊
「徘徊」これが始まると家族は目が離せなくなって大変です。
お袋も入院した際に病院の中で徘徊が始まりました。病院側は責任が持てないと言われて強制退院させられ、急遽、ショートステイに入りました。
徘徊は、周囲の環境が変わった直後に起こり、突然、変わった環境に不安を抱き、本人にとっては安心できない場所におかれていると感じるので、もと居た快適な環境を探すために行動を起こします。
徘徊行動も、私たちが非日常の旅から帰って自宅が一番寛げて安心だと思うのと同じ正常な心理です。徘徊をしていたら、とりあえずその場で安心させてあげたいですね。
他にも家族が困ることはありますが、このようにリフレーミング(視座を変える)してみたり工夫することで、笑顔が多くなって介護の喜びに気づけるようになりたいものです。
あなたにも気付きがありますように
下記に参考になる記事のリンクを貼っておきます。
◇「認知ひとつで未来を変える」
悪いところより良いところを観る
◇「アドラー心理学の共同体感覚」
物事の自力と他力を意識してみる
【小さな実践】
人・時間・場所・段取りが分からなくなるのが認知症の初期段階と考え、認知症の症状と照らし合わせてみる