足と靴の川柳
ヨロヨロと不安定な足取りでご婦人がご来店されました。
かなり強いＯ脚で、引き擦るような足取りで入ってきて、直ぐに椅子に腰かけてしまいました。
「フーッ、ごめんなさいね。なにしろ膝が悪いし足裏が痛いし、歩くのが大変なのよ・・・。私のお友達がね、お宅で靴を作ってから痛くなく歩けるようになったからって紹介してくれたのよ・・・。足を調べて靴を作ってくれるから行ってきなさいって・・・。」とご婦人。
「そうでしたか。」と私。
早速、ご婦人の足の状態を調べると、左右とも強度のＯ脚で扁平足、足首が固くて動きが悪い事が分かりました。
にも拘らず、履いていたのはフワフワのストレッチ素材で作られ、靴底がフニャフニャと撓んでしまうようなスリップオンの靴でした。
小指の脇の素材が靴底から外側にはみ出して、路面に接して破れかかっていました。
これではわざわざ柔らかいベッドの上を歩いているようなものです。
足も足首も膝関節も荷重が掛かる度に傾いて不安定になり、体全体のバランスが保てなくなってしまいます。
そんな不安定な状態で歩けば、恐る恐るしか歩けないでしょう。
疲れるわけです・・・。
一般的に軽くて柔らかくて脱ぎ履きが簡単な靴が足に楽な靴だと思い込んでいらっしゃる方が多いようですが、まったく逆なのです。
特に足や膝の痛みに悩まされている方にとって重要なのは、全体重が掛かる足や膝を安定させて関節や骨格への負担を軽減する事なのです。
ところが、柔らかいクッションやフワフワの素材が足や膝に優しい靴だと思い込んでいらっしゃる場合が多いのです。
ご婦人の「足のカウンセリング」の結果に基づき、簡単なパーツでテストシューズを仕立てて履いて歩いて頂きました。
「あらー、重くてがっちりした靴だから大丈夫かしらと思ってたのに、歩き易いわね・・・。重く感じるどころか足取りが軽くなったわ。」とご婦人。
「そうなんですよ。皆さん勘違いをしているんですよ。」と私。
30分後、出来上がったばかりの健康靴を履いて、しっかりした足取りでご婦人はお帰りになりました。
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