足と靴の川柳
最近、特に気になっているのが「優しさ」についてです。
「足に優しい靴」とか「高齢者に優しい住まい」とか、頻繁に使われる「〇〇に優しい」という表現に時々疑問を感じる事があるからです。
例えば、「足に優しい靴」と言っても、何をもって足に優しいとするのかが人によって違う事があります。
今の世の中は、人が行動しなくても道具が代わりを果たしてくれる利便性に溢れています。
けれども、道具が進化して人が楽をすればするほど、道具無しでは何も出来なくなるという人の能力の衰退を助長する面も浮かび上がってくるのです。
「歩かなくなった」から運動不足で足が弱り、歩くと足が痛いと訴えている方に「足が痛いなら無理に歩かなくてもいいよ」と言うのは「優しい」言葉なのでしょうか?
本当は、なるべく足が痛くならない環境を整えて、歩いて足の筋力を取り戻す努力を促す事が「優しさ」なのではないでしょうか?
そんな素晴らしいご夫婦愛を目の当たりにしましたので、ご紹介したいと思います。
先日、Sさん夫婦がご来店されました。
足と膝が痛いという奥様を積極的にお連れになったご主人。
「この人、最近全然外に出なくなっちゃって・・・。このままじゃ寝たきりにでもなって老老介護になっちゃうんじゃないかと心配で・・・。とにかく楽に歩ける靴を作って貰おうと思って引っ張ってきたんです。」との事。
奥様の履いていた靴は、フワフワのストレッチ素材で出来たスリップオンのいかにも軽量な靴でした。
「うちの人、歩かないと歩けなくなるってうるさくって・・・。でも、外反母趾で膝の痛みもあるからそんなに歩けないんですよ。お医者様にも痛かったら無理に歩くなって言われているんですよ。」と奥様。
早速、「足のカウンセリング」を始めました。
そして、カウンセリングの結果に基づき、簡単なサポートを組み込んだテストシューズを組み立てて、履いて歩いて頂きました。
「いかがですか?履いて歩いた感じは?」と私。
「何だかごっつくて重い靴を履かされちゃったと思ったんだけど、歩くと軽いのね・・・。今まで履いていた靴はすごく地面を感じたけど、この靴は底がしっかりしてるわね。思ったより快適だわ。」と奥様。
「軽くて柔らかい靴が足に優しい靴だと思っている方が多いようですけど、実は足元を不安定にして足裏や足首や膝関節に逆に負担を掛けてしまう原因になる事があるんですよ。」と私。
「ほら、やっぱり来て良かっただろ?」とご主人。
「なかば無理やりに連れて来られたんですよ・・・。」と奥様。
「優しいご主人だと思いますよ。奥様の事を本当に大切に思っておられる証拠ですよ。」と私。
「私が寝たきりになったら困るからよ・・・。」と奥様。
「当たり前じゃないか。そんな事になったらどうするんだよ?」とご主人。
奥様もご主人も優しい笑顔で言い合っていらっしゃいました。
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/
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