足の痛みと履きたいデザインの狭間に揺れる女性の気持ち・・・
「運動不足を解消するために歩きたいという目的は分かりましたが、今現在、足腰にトラブルは感じていらっしゃらないんでしょうか・・・?」と尋ねる私。
「まあ、時々膝が痛くなるとか、足の裏が痛くなるとかはあるけど、でも、それは歳のせいだから仕方ない事でしょ・・・。お医者さんにもそう言われたし・・・。」と御婦人。
「そうですか・・・。でも、膝の痛みも足裏の痛みも、筋力の低下によって体重の負荷を効率良く支える事が出来なくなるから起きる場合が多いんですよ・・・。そして、筋力の低下の原因は多くの場合、生活習慣や運動不足にあるんです。」と私。
「だから歩きたいと思っているのよ・・・。」と御婦人。
「そこなんですよ。筋力の低下や骨格の歪みを放置したままで、いきなり体に負荷を掛けるウォーキングをする訳ですから、なるべく足腰に負担が掛かり過ぎないように注意すべきで、だからウォーキングにスニーカーを使う場合には、ご自身の足腰の状態を慎重に見極めるべきだと・・・。」と私。
「じゃあ、どうしたら良いの・・・?」と御婦人。
「足のカウンセリングで足腰の状態を詳細に調べ、筋力の低下や骨格の歪みをサポートする健康靴を提供することで、最も基本的な運動療法であるウォーキングを快適に出来るように支援するのが、当相談室の業務なんです。」と私。
「なんだか、めんどくさいわね・・・」と御婦人。
「うーん、それを言われてしまっては、何を基準に足に負担の無い靴を選択するのかが分からないままですよ・・・。」と私。
「でも、カウンセリングって時間が掛かるんでしょ?」と御婦人。
「おおよそ50分は掛かりますが・・・。」と私。
「時間はあるけど・・・。なんだか何を言われるか怖いわねえ・・・。」と御婦人。
「そんな・・・。別に足腰の痛みやトラブルの原因を調べるだけですから、そんなに怖い事ではありませんよ・・・。」と苦笑する私。
こうしてようやく、この御婦人の「足のカウンセリング」が始まりました。
足のカウンセリングの結果、この御婦人はO脚と外反母趾と開張足と骨盤の歪みをお持ちでした。
早速、足をサポートするパーツを組み込んだテストシューズを仕立てて履いて歩いて頂きました。
「わあ、なんだか足の裏が押されている気分ね・・・。ふーん、こんなにきっちりと靴紐を締めなきゃいけないの・・・? まあ、思ってたよりも軽い靴なのね・・・。」と御婦人。
「もう暫く、歩き回ってみて下さい。だんだんサポートに慣れてきますから・・・。」と私。
さあ、慣れてきたところで、この御婦人が履いていたご自身の靴に履き替えて歩いて頂きました。
「わあ、まったく違うわ・・・。底が薄く感じる・・・。軽いけど歩き難いわね・・・。」と御婦人。
「安定感が失われると、体がバランスを取るために余計な動きや姿勢を強いられるので、それが負担になってくるんですよ・・・。」と説明する私。
「ふーん・・・。」と御婦人。
紆余曲折はありましたが、今のご婦人の足腰の状態のまま、スニーカーでウォーキングする事のデメリットを少しは理解して頂く事が出来たようです。
「スニーカーが欲しかったのに、自分に合わないのかと思うと悲しいわね・・・。」と御婦人。
「欲しいと思う物が、本当にご自分の目的に合った物かを見極めるのは難しいですからねえ・・・」と私。
「うーん、まだ決心が付かないわ・・・。もう少し考えてから、また来ても良いかしら・・・。」と御婦人。
「勿論、ご自分が納得するまで、じっくりと考えてみて下さい。」と私。
こうして、「歩きたいからスニーカーが欲しい」という御婦人は、お帰りになりました。
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