膝の痛みを助長する靴と外反母趾や扁平足を助長する靴
「お宅では靴の修理もやってもらえるの?」と突然来店された御婦人。
「ええ、基本的な修理であればお受けしますが・・・。」と私。
「じゃあ、この靴の修理はできるかしら?」とビニール袋から靴を取り出す御婦人。
差し出された靴を見ると、左右とも親指の脇からつま先にかけてのアッパー革と靴底との境目で革が破れてしまっています。
「これは革が破れてしまっていますねえ。こうなると接着すること位しかできないですね・・・。」と私。
「この靴そんなに履いていないのよ。不良品だったのかしら?」と御婦人。
そう言われて何気なく御婦人が履いている靴に目を落とすと、靴のつま先がはち切れんばかりに足の指先で圧迫されています。
「あのー、靴のサイズが合っていないんじゃありませんか?つま先ギチギチまで足の指が入り込んで靴を圧迫していますよ・・・」と私。
「えっ? 何?」と怪訝な表情の御婦人。
御婦人の靴先を指差して「ほら、靴の先に足の指先の形がパンパンに浮き出ているでしょ? 足の指が靴のつま先を押しているんですよ。」と私。
「でも、靴はきつくないけど?・・・。」と御婦人。
「どうやら、この靴も足の指先が靴先に突っ込むことで革を破いてしまった可能性がありますね・・・。」と説明する私。
案の定、靴紐もユルユルにしたままで履いている御婦人。
「ちょっといいですか?」と言って御婦人の履いている靴を確かめてみます。
「あの、靴のカカトを床にトントンと叩きつけてもらえますか?」と私。
すると御婦人の靴先に突っ込んでいた足の指先が後ろに下がる事によって、靴のつま先への圧迫が少し和らぎました。
そして靴紐をつま先の方からしっかりと締め直しました。
「ちょっとその状態で歩いてみて下さい。」と私。
黙って歩き始める御婦人。
「どうです? 少し足先の圧迫が取れたでしょ? 靴が軽く感じませんか?」と尋ねる私。
「そんなことより靴の修理はしてもらえるの? 私あまり時間が無いんだけど・・・。」と御婦人。
せっかく靴が壊れた原因をお話しようと思ったのに、受け入れて貰えないようです・・・。
「分かりました。では、靴用の瞬間接着剤で補修します。」と私。
3分後、応急修理の出来た靴を御婦人にお渡ししました。そして、僅かばかりの修理代金を頂戴しました。
帰り際の御婦人にもう一度声をお掛けしました。
「今お履きの靴も靴紐を緩めたままで脱ぎ履きしていると、足が前にのめって靴を圧迫してつま先が壊れてしまいますよ・・・。」
無言のまま、御婦人は店の外に出て行かれました・・・。
ちょっと悲しくなってしまいました・・・。
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/