中足骨骨頭痛(ちゅうそつこつこっとうつう)
外反母趾でお困りの92歳の男性。
長年、旋盤工として安全靴を履いての立ち仕事を続けてきたそうです。
私が「外反母趾になる男性の多くが、安全靴を履く職業の方に集中しています。つま先を包む鉄芯で足先を保護しているはずなのに、つま先の形状が合わない安全靴で外反母趾になるなんて、皮肉な事態ですよね。」と解説すると、
「私らは昔から、靴に足を合わせろと言われてきたからね。軍隊でも靴が合わないなんて言ったら怒られたもんさ・・・。靴に足を合わせろ!って怒鳴られたもん。」と男性。
「そうらしいですね。その話は良く聞かされました。だから戦争に負けたんだ。なんて言う人もいましたよ。」と私。
日本では、ワークシューズと足の健康との関係が、まだまだきちんと評価されていないようです。
厨房で履くコックシューズや安全靴、静電防止シューズや医療関係者用の靴に至るまで、特に会社から支給されるワークシューズは、仕事現場での安全性や機能性は重視されても、個々人の足との適合性は考慮されていません。
さらに言えば、幼稚園や学校で履く上履きや体育館履き、通学指定靴に至るまで、統一性や平等意識、学年ごとの色分けという管理する側の視点が尊重され、成長期の子供達の足を健全に育てるという保健意識が抜け落ちたままなの現状があります。
決められた通りの靴を決められた通りに履く。そこには皆が同じ物を履くという統一性や連帯感、平等という意識を育む教育的、社会的見地があるのかもしれませんが、個々人の足の健康を考慮するという視点は欠けています。
「まだまだやりたい事があるし、自分の足で歩きたいから靴を見直すことにしたんだよ・・・。」と92歳の男性は言われました。
高齢者の経験や体験を自然に受け継ぎ、次へと繋いで行くことが出来ない世代間の対話の無い社会は、独り善がりな狭く偏った価値観に包まれ、世代間の溝をどんどん広げてしまう寂しい社会であるような気がします。
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/