中足骨骨頭痛(ちゅうそつこつこっとうつう)
家の中では靴を履く習慣がない日本。
それはそれで健康的な生活習慣なのですが、足にトラブルを抱えた方にとっては大きな障壁になることがあります。
なぜならば、杖や手摺りの代わりに足元から体を支えるという役割を担わなくてはならない室内履きにとって、機能をより良いものにしようとすればするほど、靴に近いものになるからです。
リウマチによる足関節の変形というトラブルを抱えたAさん。外履きよりも室内履きが欲しいとのご要望でした。
そこで、健康靴の中で室内履きとしてお勧めしているサンダルをご提案すると、「これは室内で履くには大げさすぎる・・・。」と言って納得されませんでした。
足首と足指の変形が激しく、立位の不安定な姿勢をカバーするには、しっかりと体重を受け止め、足首をサポートする履物でないと危険ですよと説得しましたが、納得されませんでした。
今回は受注をお断りしようと思った時、「こんなのがあるじゃない・・・。」とAさんが指差したのは、ドイツ製の室内履きでした。
「これはAさんのような重度の障害がある方にはサポートとして不充分ですので、お勧めしません。」と申し上げると、「いいのよこんなんで・・・。」とAさん。
「申し訳ないのですが、この履物では素足でいるのとあまり変わりませんよ。」と申し上げると、「私がこれで良いと言っているのだからいいじゃない・・・。」とAさん。
「では、ちょっと実際に履いてみて下さいな。」とAさんに履いていただきました。
案の定、素足で歩くのと変わりません。杖を付かないと体が安定しません。
「こんな状態では役にたたないでしょ?」と尋ねると、「でも、冬には足が温かいんじゃないかしら・・・。」と別の利点を説くAさん。
「それでは、ボアや毛糸の靴下を履くのと変わらないじゃないですか・・・」と私。
「でも、室内で履くにはこんなのがいいのよ。あんな靴みたいなのじゃ大げさでみっともないじゃない・・・」とAさん。
「取りあえず、1回、履いてみてもらえませんか?見た目よりも機能を重視していただけませんか?」と私。
ようやくAさんに健康靴のサンダルを試し履きしていただくことができました。
「さあ、歩いてみて下さい。」と私。
黙って歩き始めるAさん。
ちゃんと歩けてます。フットベッドで足首の変形をサポートし、固めのカウンターがしっかりと足首を支えています。足首をホールドするネックベルトが足を安定させています。
「どうですか?安定感があるでしょ?杖がいらなくなったでしょ?」と尋ねる私。
「確かに立ちやすいし、歩きやすいわよ・・・。でも、家の中で履くには抵抗があるわねえ・・・。」とAさん。
「そうですか・・・。では、もう少し考える時間を持ったらどうでしょう? 私としては、Aさんの生活に役立つ室内履きをご提案することが専門家としての責任だと思っていますので・・・。」と私。
「・・・・・。じゃ、もう少し考えさせて・・・。」と小声でおっしゃるAさん。
室内履きは本当に難しいですね。室内では素足で過ごすのが当たり前の日本では、インテリアとしてのスリッパがスタンダードな室内履きなのでしょう。
足をサポートするための室内履きは、まだまだ市民権を得るのに時間が掛かりそうです。
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/