使い捨て文化?

小黒健二

小黒健二

テーマ:足と靴

こと靴に関しては、日本は使い捨て文化の国のようです。
日本とドイツを対象にしたある比較調査によると、「靴をよく修理に出す」と答えた人の割合は、日本が1割未満、ドイツは7割に及ぶといいます。

さて、当相談室で健康靴に調整加工をして履いて頂いていた60代の御婦人。突然、ぶらりとご来店頂きました。
「お宅で3年位前に作ってもらった靴がダメになりそうだから、そろそろ新しい靴を作ってもらおうと思って来たのよ・・・。」との事。
「ええっ?、その靴は今どうなっているんですか?」と私。
「捨てようと思ったんだけど、一応参考までに持って来たわ・・・。」と手提げ袋の中から取り出したのは・・・。紛れも無い、当相談室でお作りした健康靴でした。

靴のカカトの底は大きく磨り減り、つま先の靴底もかなり薄くなっています。靴紐は二重にカタ結びされ、履き口のタン(足の甲を覆うためのパーツ)は靴の中に引き摺られ、折れ曲がっています。
そして、靴のつま先とカカトの内側、親指の付け根の部分の革は、色が剥げて白っぽくなっています。
「あらら、また随分とお手入れしてませんね・・・。」と言うのがやっとの私。

「凄いでしょ?それじゃもう履けないでしょ? だからまた、新しい靴を作ってもらおうと思って・・・。」と御婦人。
「新しい靴を作って頂くのは、とてもありがたい事なんですが、この靴も修理が可能ですから、直してまた履いて下さいな。」と私。
「ええっ?こんなになっちゃっても修理できるの?」と御婦人。
「大丈夫です。出来ればもっと早く修理に出して頂ければよかったのですが・・・。修理できます。」と私。
「でも、こんなに見っとも無い靴を修理してまで履くのはどうかしら?・・・。修理代も結構かかるんでしょ?」と御婦人。
「そうですねえ、ざっと見積もって、6.000円位かなあ・・・。」と私。
「そう、どうしようかしら・・・。」と迷っている御婦人。

「磨り減った靴底は修理すれば元どおりになります、色が剥げてしまった革は、靴墨を塗ってあげれば綺麗になります。ただ、靴紐をしたまま脱ぎ履きを繰り返して、甲を覆うタンを折りこんで履いてしまうのは、靴にも足にも良くありませんので、改めて下さい。」と私。
「でもね、急いでいるとなかなかちゃんと履けないのよ。」と御婦人。
「靴をちゃんと履くのにかかる時間は30秒くらいですよ。足の健康と靴のためにも、ぜひ、習慣にしてみて下さいな。」と私。
すかさず、裏の工房から液体の靴墨を持ってきて、御婦人が持参した健康靴の色が剥げた革にすばやく塗りこみました。
「どうです?こんな簡単に革のお手入れが出来るんですよ。」と靴を磨きはじめました。
「あら、綺麗になるわね。私、一度も磨いたことなかったから・・・。恥ずかしいわ。」と御婦人。
「こうしてメインテナンスさえすれば、10年以上履き続けることだって可能ですよ。」と私。
「分かったわ、じゃあ、修理をお願いするわ。」と御婦人。

その後、新しい靴もご注文頂き、その日は時間がなかったので、修理が出来上がった靴といっしょに、後日あらためて引き取りに来ることになりました。
健康靴を3年位で処分されずに済んでホッとしました。

「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/

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小黒健二
専門家

小黒健二(シューフィッター)

有限会社ロビンフット

足のトラブルの原因は様々ですが、病気や事故が原因でなければ、多くの場合が生活習慣による足の筋力の低下によるものです。「足のカウンセリング」は、生活習慣の見直しと運動による自己管理もアドバイスします。

小黒健二プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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