前略 墓の中から 第1章 約束が違う!さだ子の嘆き
息子さんの掌に抱かれ墓地に到着。
「以前と変わらずきれいに管理されている。よかったよかった。
だけど隣なにやら大きな建物ができているな」
隣にできていたのは1年前に完成し募集開始となっている、施設内でお墓まいりができる堂内墓というスタイルのものだ。
立体駐車場のように呼び出すとご遺骨と家名が彫ってある石版が目の前に現れるタイプ。
「時代は進んでいるんだな。驚いた。
求めた当時はこれが最新だと思っていたのに」
生前新しいもの好きであった、ヒロシはちょっと隣の設備がうらやましく思えた。
「おやじの墓はこっちの手前なんだって。外で御参りじゃ雨の日とかもこまるよな」
息子と親戚とが会話している声を聞き、ちょっと悔しい気持ちになった。
読経が終わりいよいよ納骨です。
担当者の声が聞こえる。
「それではこれより〇〇ヒロシ様の納骨となります。この設備内はいわゆるお墓の中です。普段はなかなか入れませんので」
あの頃と同じこと言っているなとヒロシはちょっとおかしくなった。
「では中に進みますが個別棚(ロッカー)の間の通路は狭くなっておりますので御一方ずつ確認をしてください」