登壇報告/介護現場における早期離職防止と人材育成
ハラスメントを人権の視点から考える
2026年7月31日、香川県さぬき市の「人権・同和教育研究大会」にお招きいただき、講演を担当させていただきました。
今回のテーマは、
なぜハラスメントは起きるのか ~無意識の思い込みと人権の視点から考える~
さぬき市や近隣市町の行政職員をはじめ、社会教育関係団体や企業関係者など、さまざまな立場の約100名の皆さまにご参加いただきました。
この講演では、ハラスメントの事例をたくさん紹介するのではなく、
そもそも、なぜハラスメントは起きるのか。
その背景にある「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」や、
私たち一人ひとりが持っている価値観について、一緒に考えていただきました。
「悪気はなかった」で終わらせない
ハラスメントという言葉を聞くと、「そんなことをするのは、一部の問題のある人」と思う方もいらっしゃると思いますが、実際にはそれほど単純ではありません。
私たちは誰もが、それぞれの経験や育ってきた環境の中で、自分なりの「当たり前」を持っています。
たとえば、
- 普通はこうするもの
- これくらいは大丈夫
- 仕事なんだから当たり前
- 「男性なら」「女性なら」
- 「上司なら」「部下なら」
もちろん、価値観を持つこと自体が悪いわけではありません。
問題になるのは、「自分にとっての当たり前は、相手にとっても当たり前だ」と思い込んでしまうことです。
- 自分では励ましたつもり
- 冗談のつもり
- 良かれと思って言ったつもり
けれど、その言葉が相手を傷つけてしまうことがあります。
ハラスメントの難しさは、悪意がある場合だけではなく、無意識の中からも生まれる可能性があることなのではないでしょうか。
誰もが、自分の「フィルター」を持っている
私たちは、自分の「当たり前」を基準にして、物事を捉えています。
同じ出来事を見ても、感じ方や受け止め方は人によって違います。
そして、無意識の思い込みを完全になくすことは難しいものです。
だからこそ、ときどき自分自身に問いかけてみる。
- もしかしたら、これは私の思い込みかもしれない
- 相手はどう感じているのだろう
- 別の見方はないだろうか
そんな小さな習慣が、相手との関係を少しずつ変えていきます。
今回の講演でも、自分自身の思い込みや価値観を振り返りながら、ハラスメントが生まれる背景について考えていただきました。
「気づこうとすることが大切」
講演後のアンケートには、たくさんの嬉しい言葉をいただきました。
- 自分の気づかないことに、気づかせてくれた
- 無意識の思い込みがあることを自覚することで、生きづらさが軽減されると思った
- まあ許せるゾーンを広げて、自分にも優しく、他人にも優しくなりたい
そして、特に印象に残ったのが、「気づこうとすることが大切」という言葉でした。
「自分は大丈夫」と思うのではなく、
「自分にも気づいていない思い込みがあるかもしれない」と考えること。
そのほうが、ずっと人に優しくなれるのではないかと思います。
ハラスメント防止は、「してはいけないこと」を覚えるだけではない
ハラスメント研修では、「これはパワハラ」「この発言はNG」など、「してはいけないこと」を学ぶことに目が向きがちです。
けれど、本当にハラスメントを減らしていくためには、その一歩手前にある、「自分は何を当たり前だと思っているのか」に気づくことも大切だと思います。
「普通はこうでしょう」で終わらせず、「あなたはどう思う?」と相手に尋ねてみる。
自分の価値観を押しつけるのではなく、相手の価値観にも少し場所を空けておく。
そんな日々のコミュニケーションの積み重ねが、ハラスメントのない職場や地域につながっていくのだと思います。
「人権」は、日常の中にある
アンケートでは、「身近な話で分かりやすく、とても勉強になった」という声を多くいただきました。
また、「多様な視点を持ちたい」「自分の行動を見つめ直したい」といった感想もあり、今回の講演が、これからの自分のあり方を考えるきっかけになったことをうれしく感じています。
「人権」というと、少し大きく、難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、その入り口は案外、日常の中にあります。
自分の「当たり前」を、相手に押しつけていないだろうか。
自分とは違う「当たり前」があることを、認められているだろうか。
ときどき、自分自身を振り返ってみる。
そして、自分とは違う誰かのために、心の中に少し余白をつくっておく。
そんなところから、人を尊重することは始まるのかもしれません。
さぬき市人権・同和教育研究協議会の皆さま、そしてご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。


