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加糖飲料は2型糖尿病と心血管疾患の危険性を高める

松田友和

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テーマ:食事・運動

はじめに

「甘い飲み物」が健康に及ぼす悪影響については、当コラムでも何度か紹介してきました。今回は、世界的な権威のあるネイチャー・メディシン誌の最新研究から、加糖飲料と2型糖尿病や心血管疾患との関連について紹介します。

加糖飲料とは

加糖飲料(Sugar-sweetened beverages: SSBs)とは、約240mlあたり50kcal以上の糖分が添加された飲料を指します。具体的には以下のような飲み物が該当します:

  • 清涼飲料水(コーラなどの炭酸飲料)
  • エネルギードリンク
  • フルーツドリンク(果汁飲料)
  • レモネード

なお、本研究対象には、100%果汁や人工甘味料を使用したノンカロリー飲料、甘味を加えた牛乳は含まれません。

世界規模の研究が明らかにした衝撃的な事実

研究チームは、1990年から2020年にかけて、世界184カ国の成人を対象に、加糖飲料の摂取が健康に及ぼす影響を分析しました。その結果、2020年には世界で約220万件の新規2型糖尿病症例と120万件の新規心血管疾患症例が加糖飲料の摂取に起因していることが判明しました。これは、それぞれ全症例の9.8%と3.1%に相当します。

地域による健康への影響の違い

特に注目すべき点として、加糖飲料による健康への悪影響には地域差があることが明らかになりました。中南米・カリブ海地域では新規2型糖尿病症例の24.4%、心血管疾患の11.3%が加糖飲料に起因していました。次いでサハラ以南のアフリカ地域でも、2型糖尿病の21.5%、心血管疾患の10.5%が加糖飲料との関連が示されました。

また、1990年から2020年の30年間で、加糖飲料による健康への影響は特にサハラ以南のアフリカ地域で急増しており、2型糖尿病の発症率が8.8%上昇、心血管疾患が4.4%上昇していることが分かりました。

リスクが高い層の特徴

人口統計学的な特徴として、以下の層で加糖飲料による健康被害が顕著でした:

  • 男性(女性と比較して)
  • 若年層(高齢者と比較して)
  • 高学歴層(低学歴層と比較して)
  • 都市部居住者(農村部と比較して)


人工甘味料は安全な代替品か?

今回の研究では加糖飲料を人工甘味料飲料に置き換えた場合、全死亡リスクが8%低下すると推定されました。しかし、これはコーヒー(18%低下)、お茶や水(16%低下)、低脂肪乳(12%低下)と比べると効果は限定的でした。

近年、人工甘味料の安全性については新たな懸念も指摘されています。腸内細菌叢への悪影響や血糖耐性の低下など、長期的な健康影響についてはまだ十分に解明されていません。加糖飲料の代替品として人工甘味料を選ぶ前に、まずはコーヒーやお茶、水など、より自然な飲み物を選択することを検討すべきでしょう。

まとめ

この研究は、私たちの身近にある加糖飲料が、想像以上に健康に大きな影響を及ぼしていることを示しています。1日に加糖飲料を1杯増やすだけで、全死亡リスクが8%上昇するという結果は、日常生活における飲み物の選択の重要性を改めて考えさせられます。コーヒー、お茶、水などの代替飲料を選ぶことで、健康リスクを大きく下げられることも分かっています。健康のために、まずは身近なところから、飲み物の選択を見直してみてはいかがでしょうか。

引用文献

Burdens of type 2 diabetes and cardiovascular disease attributable to sugar-sweetened beverages in 184 countries.

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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