脂質異常症と食事との関係について
さいしょに
前編では、異性化液糖が砂糖の代替品として広く利用されるようになってきているというお話をしました。後編は、糖尿病をはじめとした健康に関する観点から考えてみたいと思います。まずは、異性化液糖の主成分である果糖とぶどう糖についてのお話から始めましょう。
果糖とぶどう糖の違い
果糖はくだものに含まれる糖分であり、ぶどう糖は砂糖に含まれる糖分だと考えてはいませんか。確かに間違ってはいませんが、完全に正しい解釈ではありません。
果物には果糖だけではなく、ぶどう糖、ショ糖なども含まれています。また、砂糖の主成分であるショ糖は、果糖とぶどう糖が結合した二糖類です。
果糖とぶどう糖が結合しているショ糖と、混合している異性化液糖は別のものであることはこれまでにお話してきました。
私たちがショ糖(砂糖)を摂取した場合は、まず結合している果糖とぶどう糖を小腸の表面で分解する必要があります。その分解の過程を経てから、体内に吸収されるため、ぶどう糖や果糖を直接摂取する場合よりも吸収されるまでの時間を遅くなります。ゆっくり吸収されるということは例えば食後高血糖の抑制にも繋がります。
さらに、ぶどう糖と果糖は代謝経路が異なります。
- ぶどう糖の代謝 :小腸から吸収された後、血液中に入り、全身の細胞に運ばれエネルギーとして利用され、余った分が中性脂肪となって貯蓄されます。
- 果糖の代謝 :吸収された果糖は門脈を経て肝臓へ運ばれ、代謝され、ぶどう糖に変換されたり、中性脂肪の合成に利用されたりします。
つまり、血糖値は血中のぶどう糖の濃度なので、果糖が直接的に血糖値を上げることはありません。しかし、いずれの糖も過剰に摂取すると、中性脂肪として体内に蓄積されていきますので、高中性脂肪血症や肥満の要因となります。特に、果糖はぶどう糖と比較しますと、中性脂肪に変換される割合が高いですので、果糖をたくさん摂取すると肥満になりやすい、と言われる根拠となっています。
ぶどう糖と果糖とでは、満腹感が異なるということも知られています。ぶどう糖を摂取することで血糖値(血液中のぶどう糖の濃度)が上昇しますと、満腹感を来すようなホルモンの分泌を促します。一方で、果糖は直接的に血糖値上昇させるわけではありませんので、満腹感にはつながりません。そのため、果糖を多く含む食品は、ついつい食べ過ぎてしまう、つまり糖質の摂取が過剰になってしまう可能性があります。
異性化液糖に対する注意点
ここで話を異性化液糖に戻したいと思います。
ぶどう糖と果糖は、いずれも大切なエネルギー源ですが、いずれも過剰に摂取すると肥満を助長してしまいます。特に、果糖については満腹感を得られにくいことから、より摂取過剰に陥りやすい可能性があります。
もちろん、くだものも食べ過ぎますと、肥満の要因にはなりますが、くだものにはビタミンやミネラル、食物繊維の補給など、健康にとって有利に作用する要素がたくさんあります。したがって、私たちが果糖の摂取過剰の原因として注意すべきは、清涼飲料水や菓子パンなどから摂取する異性化液糖ということになります。
さいごに
異性化液糖は、清涼飲料水や菓子パンのみならず、果実飲料、スポーツドリンク、アイスクリーム、シリアル、ジャム、ヨーグルト、調味料など、様々な食品の原材料となっています。
異性化液糖そのものが、直接的に健康に悪いわけではありません。異性化液糖を摂取せずに生活することは非常に困難ですし、その必要もないと思います。
糖尿病の食事療法という観点から考えてみても、これさえ食べていれば大丈夫という食品はありません。また、これは絶対食べてはいけないという食品があるわけではありません。糖尿病の食事療法とは、糖尿病を持つ人にとっても、持たない人にとっても、元気で長生きに繋がるようなバランスのとれた食品を適切な量食べるということに尽きると考えています。その観点からも、清涼飲料水や菓子パンなどに含まれる異性化液糖の摂り過ぎには注意したいです。