異性化液糖について考える~後編:健康の観点から~
診察中に、「人工甘味料は身体によいのか?」との質問を受ける機会が多くあります。
「確かに、砂糖と比べて、短期的には血糖値の上昇を抑えられたり、カロリーの過剰摂取を抑えたりすることができるかもしれないですが、長期的な安全性が保障されているわけではないので、絶対安心というわけではありません。適量を上手に利用していきましょう。」とお答えしています。
はっきりとした答えを返せずに、もどかしい気持ちになります。
今回は、人工甘味料について考えてみたいと思います。
~甘味料とは~
食品に甘味をつける調味料のことを甘味料と呼びます。甘味料は、糖質系甘味料(炭水化物に分類される。代表は、砂糖・ブドウ糖・果糖・キシリトールなど。)と非糖質系甘味料の2群に分けられます。さらに、非糖質系甘味料は天然甘味料と人工甘味料の2群に分けられます。天然甘味料がステビアなどのように天然にある植物などから抽出される甘味成分であることに対して、人工甘味料は、天然には存在しない甘味成分を人工的に合成したものです。
~人工甘味料の種類~
【アスパルテーム】
人には、スクロース(砂糖の主成分)の100~200倍の甘味に感じられるとされています。アスパルテームの熱量は、約4Kcal/gであり、砂糖と同程度です。甘味が強いため、低カロリー商品に食品添加物として多く利用されています。
日本では100 mL当たり5 kcal以下の飲料は「ノンカロリー」と表示することが法令で認められていますので、アスパルテームが使用された飲料はノンカロリーではないのにもかかわらず「ノンカロリー飲料」と表記される場合があります。
アスパラテームを摂取した場合、消化管で分解されメタノールを産生することが知られています。メタノールは体内に吸収されると、ホルムアルデヒドや蟻酸といった有害物質を生じます。大量に摂取すると、失明や致死などを引き起こしますが、調味料として使用されるアスパルテームは微量であるため、一般的には問題にならないとされています。
【アドバンテーム】
アスパルテームを利用し合成された人工甘味料です。砂糖の14000~48000倍の甘味を持っているとされています。
味の素株式会社が開発し、パルスイートの主成分となっています。
【ネオテーム】
アスパルテームを利用し合成された人工甘味料です。砂糖の7000~13000倍の甘味を持っています。
アスパルテーム、アドバンテームと同様に、代謝によって生成されるメタノールの量は、毒性が心配されるレベルではないとされています。
【アセルスファムカリウム】
アセスルファムKと表記されることもあります。砂糖の200倍の甘味を有しています。
アスパルテームより、熱や酸に対して比較的安定であるため、パンやクッキー、貯蔵期間が長い一部の清涼飲料などの製品にも利用されています。アスパルテームと併用することで、より砂糖の甘味に近くなるとされています。虫歯の原因にならないという利点もあります。
日本では食品添加物に指定されていて、食品ごとに使用基準が定められています。
【スクラロース】
イギリスで開発された人工甘味料です。砂糖の主成分であるショ糖(スクロース)を化学修飾することで合成されます。砂糖の約600倍の甘味を持っています。
他の甘味料と併用すると甘味度、甘味質とも増強する傾向があり、しばしば他の甘味料との併用で清涼飲料水やアイスクリームなどに使用されています。アセスルファムカリウムと同様に虫歯の原因にはなりません。
また、経口摂取しても、腸管から吸収されず、24時間後にほぼ100%がそのまま排泄されるため、血糖値や体重に影響を与えないとされています。
【サッカリン】
米国で開発された人工甘味料です。砂糖の200–700倍の甘味と、痺れるような刺激の後味を持っています。ただし、高濃度では苦味を感じるため、糖類系の甘味料に混合されて使用されることも多い甘味料です。人が摂取しても代謝されないため、カロリーゼロです。
一時、発癌性への懸念などから(今では発癌性は否定的です)、日本の加工食品ではスクラロース・アセスルファムカリウム・アスパルテームなどにほぼ取って代わられましたが、今でも磨き粉には多く使用されています。日本でも添加物として使用が認められていますし、米国では現在でも広く使用されています。
~前編のまとめ~
ここまでは、人工甘味料とはどういうものなのかというお話でした。甘くてカロリーが低いという、いわゆる甘い話のように思えます。しかし、なかなか甘い話はないものです。次回は、人工甘味料の注意点について考えてみたいと思います。