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果物を食べると太る、は本当なのか?

松田友和

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テーマ:食事

はじめに

果物(くだもの)を食べ過ぎると太りやすいと聞いたことはありませんか?これは本当でしょうか?そこで、今回は果物の中に含まれている果糖(かとう)について考えてみたいと思います。

果糖とは

果物(くだもの)は、水分・糖質・ビタミン・ミネラル・食物繊維を含みます。果物の摂りすぎで問題になるとすれば、それは糖質の摂りすぎが要因です。果物に含まれる糖質には、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、ショ糖(スクロース)の3つの種類があります。以前のコラム(オリゴ糖と砂糖の違いをご存じですか)でもご紹介させていただきましたように、果糖とブドウ糖は、糖の最小単位である単糖類ですが、ショ糖(スクロース)は、果糖とブドウ糖が1つずつくっついた二糖類です(下図参照)。このショ糖は、砂糖の主成分ですので、様々な食品に含まれています。二糖類であるショ糖は、消化管で分解されて、体内に入る時には果糖とブドウ糖になりますので、果物に含まれる糖質は、果糖とブドウ糖であるとも言えます。


果糖とブドウ糖の違い

果物(くだもの)に含まれる果糖とブドウ糖は、同じ糖質であっても幾つかの点で違いがあります。

1,甘さの違い

甘さはショ糖を基準にします。ブドウ糖の甘さは、ショ糖の60~80%で、果糖の甘さは、ショ糖の120~150%とされています。また果糖の甘さは低温で強くなります。果物を冷やした方が甘く感じるのは、果糖のこの性質が要因です。

2,食後の血糖値に及ぼす影響

ブドウ糖は、小腸から吸収されたあと、血液中に入り、全身に循環し、血糖値を上昇させます。その際に、すい臓からインスリンが分泌されて、その分泌されたインスリンによって、肝臓や筋肉に取り込まれていきます。
一方、果糖は、小腸で吸収されたあとに、血液中に入りますが、そのほとんどは肝臓で代謝されます。そもそも、血糖値は血液中のブドウ糖の濃度ですので、果糖は血糖値には直接関与しません。

3,代謝の違い

果糖が血糖値と直接関係ないのであれば、たくさん摂取しても大丈夫だと言うわけではありません。果糖は、肝臓で代謝されて、全体の約三分の二がブドウ糖に変換されます。したがって、果糖をたくさん摂取すると、食直後の血糖値は上昇させませんが、果糖を材料として肝臓で作られたブドウ糖によって、約30分後から血糖値を上昇させます。低血糖の時に果糖を摂取しても、なかなか血糖値が上がりませんので、要注意です。むしろ、低血糖時にたくさん果糖を摂取すると、果糖を代謝する際に肝臓でエネルギーを消費するために、低血糖を助長してしまう可能性もあります。さらに、果糖は脳には届きませんので、低血糖時に果糖を摂取しても、速やかに脳にエネルギーを供給することはできません。
また、果糖が肝臓で代謝されますと、中性脂肪やコレステロールの合成を促進させてしまいます。中性脂肪は内臓脂肪の主成分ですので、果糖をたくさん摂取すると脂肪が増えてしまいます。このため、果糖をたくさん摂取すると肥満を助長してしまいます。

果糖と健康障害

果糖は、果物(くだもの)に多く含まれるのですが、実際に健康障害として問題になっているのは、いわゆる清涼飲料や、お菓子やスイーツなどの加工食品からの大量摂取です。これらの甘味の強い加工食品の多くに「果糖ブドウ糖液糖」や「ブドウ糖果糖液糖」が甘味料として使われています。甘味の強い果糖がたくさん使用されているということです。
このようにして大量に摂取された果糖は、2型糖尿病や肥満、さらには心血管疾患、脂肪肝の発症リスクを高めることが知られています。

果物を食べると太るのか?

結論から申し上げます。食べ過ぎると肥満を助長します。一方で、肥満になってしまうほど大量の果物をとるというケースはそう多くないように思います。
例えば、清涼飲料水の代表格であるコーラ500mlに含まれる糖質は、果糖ブドウ糖液糖とブドウ糖を合わせて、約56gです。この56gの糖質を果物に当てはめると、リンゴ2個、ぶどう35粒、イチゴ50粒、みかん5個、柿2個に相当します。
しかも、果物にはビタミン、ミネラル、食物繊維、有機酸など、いわゆる健康増進につながる栄養素も含まれます。みかん2個、イチゴ10粒、柿1個程度が1日の摂取量の目安とされています。果糖を恐れ過ぎず、果物を適量に摂取することは、健康増進をもたらすと考えて良さそうです。

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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