持続血糖モニタリングシステムの進化
はじめに
人生100年時代と言われるようになっています。患者さんに、「元気で100歳を目標に頑張りましょう」と声を掛けますと、「そんなに長生きしたくない」と返されることがよくあります。みなさん、長生きしたくないわけではなく、身体機能が弱ってきて、周囲に迷惑をかけたくないという想いが強いようです。実際に超高齢化社会の問題点の1つに、虚弱な高齢者の増加があります。フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)、サルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力の低下)という概念が注目されています。
実は、筋肉量は元気で長生きに大いに関係していることがわかってきています。高齢になると、筋肉量の減少が寿命の短縮をもたらすことは多くの研究で明らかになっています。
筋肉量は、20歳ごろから少しずつ減少してきます。70歳代では20歳代の約4割程度に減少します。特に、30歳~50歳代の壮年期にあまり運動をしないで生活していると、筋肉が急激に減ってくる可能性があります。
筋肉量と疾患
加齢に伴い筋肉が減ると、様々な疾患を誘発します。下肢や体幹の筋力が低下することで、すぐにふらつくことや、わずかな段差に躓いてしまうことで、転倒リスクが高まります。転倒して足の骨を折ったことをきっかけに、寝たきりになるケースは少なくありません。また、筋肉が減ると免疫機能が低下してしまいます。免疫機能の低下は、肺炎をはじめとした様々な感染症のリスクを高めてしまいます。
筋肉量と糖尿病
実は、筋肉量の低下は糖尿病のリスクを高めることも知られています。食べることにより、体内に取り込まれた食べ物は、胃腸で消化吸収され、血液中に入ってきて、血糖値が上昇します。糖分は重要なエネルギー源ですので、人間は食事を摂らない時のために、血液中に入ってきた糖分を肝臓や筋肉に蓄えておくことができます。食後に、血糖値が上がりっぱなしにならないのは、血液中の糖分をインスリンの作用で肝臓や筋肉に取り込んでいるからなのです。特に、食後の糖分は筋肉に取り込まれることがわかっています。そのため、高齢になって筋肉量が減ってくると、血液中の糖分が増えてきて、糖尿病になったり、糖尿病が悪化したりします。勿論、高齢でなくても、筋肉量が多い方が、食後の血糖値の上昇は抑えられることになります。筋肉量と糖尿病の関係は、これだけではありません。
実は、糖尿病になると、筋肉量が減少することも明らかになっています。筋肉量が維持したり、増やしたりする際に、インスリンの働きが必要になります。糖尿病の状態では、特に血糖コントロールが良くない状態では、インスリンが充分に働いてくれませんので、筋肉量が維持できず、減少してしまうのです。つまり、血糖コントロールが悪化すると筋肉量が減少し、筋肉量が減少すると血糖コントロールが悪化する、という悪循環に陥ってしまいます(図参照)。
筋肉量を増やすために
筋トレは裏切らない、という言葉も流行りましたが、筋肉量を増やすためには、筋肉を使ってあげる必要があります。高齢者になっても、筋トレすることで、筋肉量を増加させることができます。週1回でも2回でも、こつこつと筋トレを継続させてください。壮年期の方も他人事ではありません。先手必勝です。
また、一日中、寝ているだけでも筋肉量は減ってきます。日常生活で身体を動かすことも大切です。歩くことも筋肉維持には有効です。1日に6000歩~8000歩を目標にしてください。
さらに、食事療法も重要な要素です。筋肉はたんぱく質で出来ていますので、筋肉量を増やすためには食事でたんぱく質を摂取することが大切です。
ビタミンDも筋肉には大切な栄養素です。ビタミンDには、骨の強化作用、免疫力を高める作用とともに、筋肉の合成を促す作用があります。食品としては、魚介類や卵、きのこに多く含まれています。また、ビタミンDは日光に当たることで、活性化されるため、日光浴をすることもお忘れなく。
さいごに
身体を動かすことを運動療法として考えてしまうと、何だか身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。あまり難しく考えずに、何でもよいので、定期的に身体を動かす習慣を身につけていってください。身体を動かすことで、爽快感もえられます。人生100年時代。元気で長生きしていただきたいと思います。