朝食にシリアル食品を上手に利用するために
たんぱく質の働き
食事として摂取したたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解されて吸収されたあとに、再び体に必要なたんぱく質に合成され、様々な役割を担うことになります。体内には数万種類のたんぱく質があると言われていますが、ここでは大きく3つに分けてみます。
・体たんぱく質
筋肉や内臓を構成しているたんぱく質。そのため、たんぱく質不足では筋肉量が減ってしまうことになります。
・酵素やホルモンとして代謝や体の機能を調節するたんぱく質
生命を維持していくためには、細胞や細胞によって形作られている内臓などがダイナミックに活動をしています。それらの活動を維持するために、無数の酵素やホルモンが必要になりますが、それら酵素やホルモンもたんぱく質で構成されています。
・エネルギー調整に利用されるたんぱく質
生命活動を維持していくためにはエネルギーが必要になります。たんぱく質自身がエネルギー源となり得ますし、たんぱく質は脂肪や糖に変換されることで、エネルギー源にもなり得ます。つまり、たんぱく質も摂取しすぎるとエネルギー過多の状態、つまり肥満を誘発することになります。
たんぱく質の摂取量は
日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なたんぱく質は摂取エネルギーの13~20%が理想とされており、推奨量は、成人男性は一日60g、成人女性は一日50gとなっています。先に述べたように、高齢になってからのフレイル(虚弱)を予防するためには、しっかりとたんぱく質を摂取しておく必要があります。
そこで、50〜64歳「14〜20%」、65歳以上「15 〜20%」と、中年〜高齢者ではたんぱく質の目標量下限が引き上げられました。摂取上限が20%と据え置かれているのは、特に炭水化物の制限下でのたんぱく質の取りすぎが、腎機能の悪化や糖尿病発症につながる恐れがあるとの報告があるためです。たんぱく質さえ摂取しておけばよいというわけでなく、やはり様々な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
良質なたんぱく質とは
「良質なたんぱく質をとりましょう」という言葉をよく耳にしますが、この良質とはいったい何を意味するのでしょうか。正確な定義はありませんが、良質を意味するとされているポイントの1つに、必須アミノ酸がバランスよく含まれているということが挙げられます。
この点から、良質のたんぱく質の指標の1つが、体たんぱく合成に理想的なアミノ酸組成を示した、アミノ酸評点パターンです(図参照)。
たんぱく質の栄養価は、各必須アミノ酸について、評点パターンの数値を100としたときの割合で求められます。その食品の中で最も低いアミノ酸(第一制限アミノ酸)の値が、アミノ酸スコアとよばれ、その食品のたんぱく質の栄養価となります。
以下に、アミノ酸スコアの良いとされる食品を挙げてみます。
●肉類
・鶏肉(もも皮付き 生):100 ・豚肉(ロース 脂身付き 生):100
・和牛肉(もも皮下脂肪なし 生):100 ・馬肉(赤身肉 生):100
●魚介類
・真アジ(皮つき 生):100 ・シロサケ(生):100 ・真イワシ(生):100
・カキ(養殖 生):100 ・ホタテ貝(生):100
●乳類
・牛乳:100 ・ヨーグルト(全脂無糖):100
●卵類
・鶏卵(全卵 生):100 ・うずら卵(全卵 生):100)
●穀類
・精白米(うるち米):93 ・玄米:100
●種実類
・ごま(乾):73 ・アーモンド(乾):78
※参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編:文部科学省
お示ししたように、アミノ酸スコアは一般に肉類、魚介類、乳類、卵類で良好です。穀類の精白米や特に小麦は、アミノ酸スコアが低くなります。これらはリジンが少ないためです。そこで、穀類はリジンが豊富な動物性食品や豆類と一緒にとることで、必須アミノ酸のバランスがよくなります。このようにアミノ酸スコアが低くても、複数の食品を組み合わせることで、アミノ酸スコアは改善します。しかも、アミノ酸スコアばかり気にとられて、同じ食品ばかりをとっていると、たんぱく質以外の他の栄養素が不足してしまいますので、要注意です。