HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が平均血糖値とずれる場合がある
糖尿病の治療といえば、食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱がよく知られています。
今回は食事療法について再考してみたいと思います。
食事療法と言う言葉には拒否感を感じる人もいらっしゃるかも知れません。
甘い物は駄目、お米の食べ過ぎは駄目、朝ご飯を食べるようにしましょう、野菜をたくさん食べましょう、など
まるで子供に対する躾(しつけ)のような文言が並びます。
このような言葉をいきなり投げかけられて、「はい。わかりました。」とすんなりと実行できるということはまずありえません。食事内容はその人の人生そのものです。その人の生きてきた場所、環境、好み、経験などにより、人が食べるものは大きく変わってきます。医療者は、その食事に介入するということの重大性を強く認識しておく必要があると考えています。まずは現時点での食事内容を尊重した上で、これからどのように変えていく必要があるのか、あるいは変える必要はないのか、を本人と医療者が一緒に考えていくことが大切だと思います。
個々の食事内容を尊重するということには大きな理由があります。実は食事療法に明確なエビデンス(根拠)がないのです。
なぜ1日3食なのか、炭水化物の正しい摂取量はどの程度なのか、脂質の正しい取り方は、など本当に正しいかどうかはっきり
しないまま、過去の経験則で食事指導が行われているのが現実なのです。
先日参加してきた勉強会で、2019年に新しく食事療法の中身が大きく変わるということ学んできました。
1日の摂取カロリーは、Body Mass Index(BMI: 体格指数)を用いて算出されます。
今までは、疫学データから算出された最も死亡率が低いとされるBMI 22を標準体重として、その標準体重に労作強度毎の必要カロリーを掛けるという方法で目標摂取カロリーを決めていました。しかし、実際にはエネルギー必要量は個々によって大きく異なります。
標準体重を基準にする方法では、痩せ型や肥満型など標準体重から離れている方々の設定エネルギー量が現実離れしてしまうことが以前から疑問視されていました。
そこで、新しい指針では標準体重でなく、個々の目標体重を基準に目標摂取カロリーを設定し、しかも状況に応じて目標を再設定していくと示されます。
ガイドラインも、より個性を尊重する形に変更されます。食事療法というだけで拒否感が出てしまっていた方も、人生を豊かにするための食事について一緒に考えてみませんか。