熱中症と糖尿病の関係
痩せている日本人の高齢者は、認知症になるリスクが高くなるという研究結果が報告されました。欧米では、肥満の人の方が認知症になりやすいことが知られていました。この日本人と欧米人の認知症リスクの違いについて考えてみましょう。
認知症リスク因子として、「糖尿病」、「肥満」、「高血圧」、「喫煙」が知られています。また、「運動習慣」の有無が認知症の発症率を左右することや、運動することで認知機能を改善させたり、認知症の予防にもつながることが明らかになっています。
このうち、「糖尿病」「肥満」「運動習慣」との関連に、日本人と欧米人の相違点があります。
糖尿病は運動不足や食べ過ぎで肥満になると発症するという構図が有名ですが、実は日本人には必ずしも当てはまりません。日本人には肥満にならずとも糖尿病を発症してしまう方が沢山いらっしゃいます。これは、日本人がインスリンを分泌する力が弱いことに原因があります。
※インスリンについてはコラム「インスリン治療は最終手段?」をご参照ください。
日本は歴史的に、肉をあまり食べる習慣がありませんでした。第二次世界大戦後に急速に食生活が世界基準となり、いわゆる和食から、洋食に変化したことで、インスリンの必要量が劇的に増えてしまいました。今までは少ない栄養で効率よく生きてきた日本人は、インスリンをたくさん分泌する必要がなかったため、インスリン分泌を出さなくてもよいように遺伝情報が進化していたのです。
そのために、インスリンを分泌する力の弱い日本人は、運動不足やわずかな肥満で糖尿病を発症してしまいます。
また、筋肉を増やすためにもインスリンの力が必要になりますので、インスリンを出す力が弱い方は徐々に筋肉量が減ってきます。一方で、筋肉量が落ちることが認知症のリスクを高める可能性も示唆されています。
また筋肉量の低下は、糖尿病の発症リスクを高めることも知られています。
これらのことが、日本人では痩せ型の高齢者では認知症のリスクが上昇している原因となると考えられます。
つまり、欧米人では、「運動習慣」が少ないと、「肥満」にも「糖尿病」にもなりやすくなり、筋肉量も低下して、「認知症」を発症しやすくなります。
一方、日本人では、「運動習慣」が少ないと、「肥満」を介さずに「糖尿病」になりやすくなり、筋肉量も低下して、「認知症」を発症しやすくなります。
認知症は増加の一途です。特効薬もありません。まずは、運動習慣をつけることから、認知症予防を始めてみませんか。