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茨城県古河市人権教育講演会「いのちの大切さを子どもたちにどう伝えるか」

長谷川満

長谷川満

テーマ:教育・人権講演会

8月5日(火)は茨城県古河市コスモスプラザで令和7年度人権教育講演会で講演させていただきました。
テーマは「いのちの大切さを子どもたちにどう伝えるか」
聞いてくださるのは主に古河市の教職員様及び市職員様、人権にまつわる役員様、ボランティアの方々です。






結婚を控えた娘さんへのお父さんの手紙


今日は最初に結婚される娘さんに宛てて手紙を書かれたお父さんのお話をしたいと思います。
そのお父さんは娘さんが6歳の時に奥さんを亡くされ、その後は娘さんと二人、一生懸命生きてこられました。
そして娘さんも立派に大きくなられ来月には結婚されることになり、その娘さんに宛ててお父さんは手紙を書かれました。
そのお手紙を紹介したいと思います。








6歳の娘さんはわかってたんですね。
娘さんもお母さんを亡くして悲しかったはずなのに、それまで全く泣かなかったそうです。
我慢してたんです。
これ以上お父さんを悲しませたくなかった。
そしてお父さんの気持ちは痛いほどわかってたんですね。
「もういいよ、お父さん。もう、お母さんのところに行こ。」

こんな深い愛があるでしょうか。

親はね、自分が子どもを愛してる、自分が子どもを守ってると思っていますが本当は逆なんですね。
子どもが愛してくれている、子どもが守ってくれている、子どもが教えてくれている。
だから親は子どもに対して傲慢になってはいけません。
押さえつけるように上から物を言うことは慎まなければなりません。



「もういいよ、お父さん。もう、お母さんのところに行こ。」
それはお父さんの気持ちを否定することなく全てを受け入れる覚悟を持った愛の言葉です。
その愛の言葉がお父さんを救ったんですね。

もし皆さんもその気になれば子どもさんを救う愛の言葉を伝えてあげることが出来ます。
もし不登校のお子さんがおられるならこう言ってあげて下さい。
「もういいよ。もう学校行かなくていいからね。だからもう朝起こさないからね。好きなだけ寝とき。」

そうすると不思議なことに子どもは安心できて、逆に学校へ行こうという元気や勇気が湧いてきたりするんです。

子どもはお母さんの宝物


もう一つ紹介したい文章があります。
内田美智子さんという助産師さんの方で、多くの方の出産に立ち合い全国で「いのち」や「性」について講演されている方の文章です。








今日は「いのちの大切さを子どもたちにどう伝えるか」というテーマでお話しさせていただているのですが、まず大人である私たちが命の大切さを頭ではなく心で実感していることが大切だと思ってお父さんの手紙と助産師さんの文章を紹介させていただきました。

いのちの大切さを子どもたちにどう伝えるか


では、いよいよメインテーマの「子どもたちにどう伝えるか」についてお話ししていきます。
まずは小学3年生の男の子の作文を紹介します。



 「 見つめてもらって 」
             岩手県 黒沢尻北小学校
                岩崎 裕也(3年)

 「ゆうやはこのくらいでも痛がるんだぜ。」
 同じ組の子が たたいた
 そしたら 周りの子も
 ニヤニヤしながら
 ぼくを たたいた
 おもしろがって
 何人もの子が たたいた
 
 家に帰って
 お母さんが
 「今日は 何があったの」
 と いつものように 聞いた
 ぼくは 心配をかけたくなくて
 だまって 聞こえないふりをした
 二人ともだまっていた

 ふと顔をあげると
 お母さんは
 ぼくの顔を
 じいっと見ていた。

 ぼくは わらって 言った
 「ちょっとね、学校でたたかれた」
 お母さんは 体のどこかに
 大きなきずができたみたいな
 くるしそうな顔をした
 それから
 やさしい目になって だまって
 ぼくを見つめてくれた
 ぼくの目から なみだが出た

 ぼくは ぼくをたたいた子に
 思いきって 自分の気持ちを ぶつけた
 それからは もう やられなくなった

 お母さん ぼく 自分を守ったよ
 お母さんが 大切に育ててくれている
 自分を
 これからも 大切にする


自分を大切に思う気持ちって、こういうところが生まれてくるんだと思います。「大好きなお母さんが、大切にしてくれている自分。そんな自分は大切な存在なんだ。」そう思えることが、勇気や自信や自己肯定感につながっていくのだと思います。



以前、公共広告機構のCMで「命は大切だ。命を大切に。そんなこと何千何万回言われるより『あなたが大切だ』。誰かがそう言ってくれたら、それだけで生きていける。」というのがありました。

今、子どもたちに最も必要なメッセージとは『あなたが大切だ』という心からの言葉や関わりなんだと思います。

「いのちの大切さ」とは「あなたの大切さ」であり、それをどう伝えるか。どうすれば子どもたちに「あなたは大切な存在なんだよ」と伝えることができるかということだと思います。

子どもを大切にするってどうすることでしょう?


いくら言葉で「あなたが大切だ」と言っても普段の関わりや態度がその子を大切にしているものでなければ、子どもは大切にされているとは感じません。ここで皆さんに質問です。

「子どもを大切にするってどうすることでしょう?」

誤解を恐れずに申し上げるなら、子どもを大切にするとは「子どもの気持ちを大切にする」ということです。

子どもの気持ちを大切にするためには、まず子どもの正直な気持ちを聴かせてもらえる大人になる必要があります。
子どもはちゃんとわかってくれる大人にしか自分の正直な気持ちは言いません。
そういう大人になるためにはどうすればいいのでしょう。

「聴(ゆる)す」という聴き方


皆さん、この漢字をどう読むかご存知でしょうか?





これは「聴(ゆる)す」と読みます。
相手の思いを尊重し理解しようとする気持ちで聴くことを「聴(ゆる)す」と言うんですね。
そして相手の思うようにすることを許す。
そこまで出来て「聴(ゆる)す」です。

そういう聴き方ができる大人には、子どもは心を開いて本当の気持ちを言います。
本当の気持ちを言うだけでなく、子どもは人の意見も聴くようになり、自分でしっかり考えるようになり、正しい決断をするようになります。

この「聴(ゆる)す」には子どもの自尊感情や自己肯定感を高め、子どもを更生させる力があります。
心理カウンセリングもこの「聴(ゆる)す」という聴き方、これを心理学用語で傾聴とか共感的理解て言うんですが、それを通してクライアントを癒し心理的成長を援助しています。

自尊感情や自己肯定感を育てる関わり




自尊感情とは、自分をかけがえのない大切な存在と思える気持ちですね。自分を大切に思えるからこそ人のことも大切に思えるんですね。そういう意味で「命を大切にする」根本はこの自尊感情をいかに育むかということに尽きます。

自己肯定感という言葉は、いま巷で広く使われるようになって誤解されやすい言葉です。
自己肯定感とは、今のダメな自分のまま、その自分を受け入れ、許し、そのままの自分を愛する心理状態をいいます。
その根底には自己受容(ありのままの自分を受け入れる)があります。
ポイントはダメな自分を受け入れているという所です。その上で変えようと思うものは変えていく。

また自己愛(ナルシスト傾向)が強く、傲慢な人は自己肯定感が高いわけではありません。
そういう人は自分のダメな部分や欠点を無視しているだけで、受け入れているわけではないのです。
つまり自己肯定感が高い人は自分のダメな部分や汚い心を自覚し、それを否定せずに自分にあるものとして受け入れている。だからこそ、その部分をコントロールしたり変えていったりできるのです。

1、気持ちを聴く(言葉を受け入れる)


皆さんはもし「死にたい」と子どもたちが言ったとき、どう答えたら良いと思われますか?

そう言う場合は「死にたい」という言葉を否定せず「死にたいと思うほど辛いことがあるんやね。もしよかったらその辛い気持ち聴かせて」と言ってあげてください。「死にたい」という言葉をいったん受け入れるということです。
これは正しいとか間違いとかを超えてその子の気持ちを受け入れるということです。
自分の気持ちを受け入れてもらえたと安心できるとそこから「死にたい」だけではなく色々な気持ちを話してくれるようになるのです。

「もう消えてしまいたい」と話してくれたら「もう消えてしまいたい気持ちなんやね」とその言葉を受け入れることで傾聴に繋げられます。
ここで大切なポイントは相手の気持ちを噛み締めるようにその言葉を繰り返すということです。

「俺なんか生きている価値ない」とその人が言ったとします。
そうすると大抵の人は咄嗟に「そんなことはない。あなたは生きる価値がある。」と励ましたくなりますが、そうすると相手の言葉を否定したことになるんですね。
そんな時でも「今は自分が生きている価値がないと感じているんやね」とその言葉をいったん受け止めてあげることが大切です。

この「気持ちを聴く」という行為自体が治癒効果、回復効果を持っているんですね。
話を聴いてもらって、その気持ちをわかってもらえたら、どんなに元気が湧いてくるでしょう。勇気が湧いてくるでしょう。受け入れてもらえることでどんなに自尊感情や自己肯定感が高まることでしょう。そして自分のことも冷静に見れるようになり、適切な考えや行動ができるようになります。

2、子どもの意思を尊重する(信じて任す)


うちの子3人に「この家に生まれてお父さんお母さんに育てられてよかったと思うことは?」と聞いたことがありました。
別々に聞いたのに同じ答えでした。

3人とも「自由があったこと」と答えていました。

子どもの言うことでもちゃんと聴いてくれたし、尊重してくれた。その意思を尊重してくれたので何につけても自分で決めた、自分で選んだという意識がある。その意識が今の幸福感につながっているし、自立していく上で大事だと思うとのことでした。

私はよく「良い親子関係とは良い思い出がいっぱいある親子関係です」と言うんです。
その良い思い出の中には「自分の意思を尊重してくれた」も入ります。
姪の結婚式で両親に宛てた手紙の中で「お母さんはいつもあなたの思うように決めたらいいよと私の気持ちを大事にしてくれました」と涙ながらに言っていましたが、姪はそれを親の愛情と受け取っていました。

また私は「いい家族とはキャラが立っている家族です」もよく言います。
面白い漫画は必ずキャラが立っているんですね。
家族も同じです。
お互いそれぞれの個性を認め合って許しあっているからキャラが立っているんですね。
その家族は認め合い、許しあえているからいい家族なんです。

3、愛や喜びや幸せを受け取る(存在を喜ぶ)


親になりますとついつい子どもに何をしてやれるか、何を身につけさせてやれるかと与えることばかりに目が行きがちですが、本当は子どもが持ってきてくれた愛や喜びや幸せを受け取ることのほうが何倍も大切なんじゃないかと思うんです。
なぜか?
幸せな親が幸せな子どもを育てるからです。

親はね、勘違いしてしまうんです。
親である自分が子どもを幸せにしてやらないとって思ってしまうんです。
でも逆なんですね。
本当は親は幸せをもらっている側なんですね。
そしていっぱい幸せをもらったらいいんです。
なぜか?
幸せな親が幸せな子どもを育てるからです。

自分は親を幸せにする存在なんだ、子どもがそう思えること。
それこそが自尊感情や自己肯定感の土台となるものです。

4、子どもの良い所を見る(変えようとしない)


親や先生に心の余裕がないと子どもの良い所を見ることはできません。
ではどうすれば心の余裕を持つことができるのか。
それは第一に自分を責めないということが大事です。
関西には、ネガティブな状況の時にそれにとらわれずに上手に流す言葉を持っています。

「しゃあない、しゃあない」

関西人はそういう時には「しゃあない、しゃあない」言うてその状況に抗うことなく受け入れるんです。
そうして受け入れると、つまり諦めると心が楽になって余裕が持てるんですね。

もう一つ心に余裕が生まれる魔法の言葉を紹介します。

「どっちでもいい」

これはこだわりや執着から自由になれる魔法の言葉です。
どっちでもいい、ということはこだわっていない、執着していないことを表しています。
これは子どもに向かって言ってもいいし、自分自身に言っても効果があります。

5、弱さや欠点を受容する(許し合う)


4歳の男の子が「僕は幸せ。ママは幸せ?」と尋ねた時、「幸せってどんな意味かわかるの?」とお母さんが聞き返されました。
その子は「幸せってな、みんなが笑っていることやで」と答えました。

本当にそうですね。
その言葉を聞かれてお母さんは「まずは私が一家の太陽となって笑おう」と決意されたそうです。

笑うためには許すことが大切です。
誰を?
自分をです。
皆さんにもダメなところや欠点があるでしょう。
皆さんは自分を責めることなく、そのダメなところや欠点を許してください。
そして自分を許したように、ご主人や奥さんやお子さんのダメなところや欠点も許してください。
そうすれば家庭に笑顔が生まれます。
そうして皆さんが許しあって、笑い合って幸せに暮らしていかれることを心から願っております。

本日は長い間私の拙い話にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。

まとめ


最後にお一人お一人それぞれ違う詩をプレゼントしました。
とても暖かい雰囲気の中「ご清聴ありがとうございました」とお礼を言って講演を終えました。




主催者様のご厚意でその後書籍販売をさせていただきました。
その際、参加者の皆様と親しくお話しさせていただき本当に楽しかったです。





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 2025年5月 山口県岩国市PTA連合会オンライン講演
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 2025年2月 東京都港区立芝浦小学校
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 2025年1月 相生市青少年健全育成市民大会
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