「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語(31)「親父が亡くなった日」/大北和彦さん(43歳)
お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」
一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。
全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社)日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品)
「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。
その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。
涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。
マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。
これまでに、以下5つのをご紹介いたしました。
「お墓物語」作品紹介(1)「祖母との出会い」/三浦るるさん
「お墓物語」作品紹介(2)「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん
「お墓物語」作品紹介(3)「祖父のお墓で」/水野真由美さん
「お墓物語」作品紹介(4)「おはからい」/漣ほたるさん
「お墓物語」作品紹介(5)「星よりも近く」/倉木敬人さん
今回は、新潟県在住の藤田徹朗さん(46歳)の作品、
「泣き虫」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。
「泣き虫」/藤田徹朗さん(46歳・新潟県)
ゴールデンウィークのある日に電話が鳴った。
電話に出た妻が、号泣しながら取り乱していた。
妻の祖父が97歳で亡くなったのである。
よほどお爺ちゃん子だったのだろう。
お通夜、お葬式の間中も妻は泣いていた。
妻が初孫ということで、
本当に祖父にかわいがられて育ったらしい。
その三か月後の初盆に、私と妻は墓参りに行った。
私は水桶を持ち、妻は花束を抱えていた。
墓は奥の方にあり、歩きながら私は妻がよく言っていた、
お爺ちゃんのことを思い出した。
「私は、両親が共働きだったから、
いつもお爺ちゃんとお婆ちゃんの家に遊びに行っていた。
お爺ちゃんがいつも公園に連れて行ってくれたり、
本を読んでくれたりしてくれた。
本当にお爺ちゃん子だったよ」といった言葉だ。
墓に着き、私は桶に水をくみ、墓に水をかけていた。
ふと見ると、木の葉を拾い、
墓の周りをきれいにしながら、泣いている妻がいた。
花束を供え、お参りしながら、
『あなたが育てて、そして残してくれた、
大切な泣き虫のこの人を、私は大切にしていきます。
安心して見守ってください』と心で語った。
これから、祖母、父親、母親など、
悲しい別れが確実に待っている。
そんな悲しみから、妻を守るのは私である。
改めて誓って墓を後にした時に、
「この子は泣き虫だが、根は強い子です。
子どもが生まれたら、子どものために強い母親になるだろう。
必ず自分自身で立ち上がるから安心してください」
という言葉が、私の後ろの墓から聞こえてきた様な気がした。
8月13日、お盆の昼頃だった。
20年前のまだ残暑きびしい夏の…
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・メールでのお申込みはこちらまで
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「お墓物語」は、近畿地方の方限定でお送りさせていただきます。
なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。
~つづく~
次回は、長坂隆雄さん(78歳・千葉県)の作品、
「田舎のお墓を訪れて」をご紹介させていただきます。
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