「大島石墓石」の価格・ランク・品質を徹底解明!(10)大島石墓石とインド産墓石が同じ値段?
(1)「庵治石」ってどんな石?
(2)鉱物学的に見る庵治石の特徴
(3)庵治石の種類
(4)庵治石の産地と歴史
(5)最高の庵治石は、「大丁場」から
(6)庵治石の各丁場
上記のコラムからのつづきです
7.庵治石の鉱物鮮度
「鮮度」といえば、私たちの身の回りでは、
肉や魚、野菜などの生鮮食料品が思い浮かびますが、
石にも形成されてからの経過時間が新しいもの、
いわゆる「新鮮」な石の方が、品質も優れているようです。
お墓の材料である花崗岩は、火山が地中深くで噴火し、
溶岩が地中でゆっくり冷えて固まってできたものです。
これらは、丁場から切り出して、墓石として加工をせずとも、
自然の岩肌の状態や、地中に埋もれている状態でも、
わずかずつですが、経年による劣化が始まっているのです。
それだけに、石も形成された時期が古いものより、
新しい石の方が、新鮮で良い石と言えるものが多いのです。
▲鉱物としての鮮度が新鮮である「庵治石」
世界一の銘石「庵治石」(あじいし)」は硬くて新鮮?
庵治石は地質学的には約8000何年前の中生代白亜紀頃に形成され、
世界中の花崗岩の中では、比較的新しい部類に入ります。
8000万年前の時代とは、どんな時代だったかというと、
約46億年前に地球が誕生し、約6億年前に空気がほぼ完成します。
そして、約1億年前には恐竜が全盛を極めますが、
約7500万年前に、メキシコのユカタン半島に、
直径11キロメートルの巨大隕石が激突し、
地球上の半分以上の生物が絶滅しました。
もちろん、恐竜も絶滅し、中生代が終わり新生代となりました。
このあたりの時代に、庵治石が形成されたのです。
約400万年前頃から地球上の人類が進化をはじめて、
時は一気に流れて、約400年前から庵治石は使われ始めたのです。
庵治石は、特に外国産の御影石(花崗岩)と比較すると、
時間の経過による劣化の程度が少なく、
主成分である、長石、石英、雲母などの鉱物の結合がち密で強く、
石の組織全体がしまっているため、極めて硬質なのが特徴です。
その極めて硬い性質ゆえ、ノミが立ちにくく、
庵治石の加工には手間と時間がかかりますが、
細かな細工を要する墓石のやくもの加工や彫刻品は、
他の石でつくったものと比較にならないくらい美しく仕上がります。
▲「庵治石」ならではのち密な彫刻/源平合戦八百年祭供養碑(高松市・屋島山頂)
庵治石は水に強い
庵治石は、構成される主成分である、
長石や石英、雲母の結合がち密で強いため、
水を含みにくい、「吸水率」の低い花崗岩です。
吸水率の測定には、一定の大きさに切り揃えた石の、
乾燥時の重量と、24時間水中に沈下させた後の水分吸量を比較します。
凝灰岩は20%、花崗岩は0.1%~0.4%程度ですが、
庵治石細目は0.19%、庵治石中目で0.20%と低い吸水率です。
雨などにより吸い込んだ水は、石に含まれる鉄分に反応して、
サビの原因となるほか、寒冷地においては、吸い込んだ水が凍結する際に、
水の体積が約9%増加することにより、結合されている組織が、
わずかずつ、時間をかけて破壊され、風化の原因につながります。
庵治石は、吸水率が低いため、降雨後のシミや、
風化による経年劣化が極めて少ないのが特徴です。
庵治石は変色・変質しにくい
お墓は屋外に建てられるものだけに、
雨による吸水、風によって巻き上げられる砂、
寒暖による温度差など、さまざまな自然環境と経年により、
変色したり、表面の艶がなくなったりします。
しかし、庵治石においては、黒雲母の中の成分である、
鉄分の含有量が他の花崗岩と比較して極めて少ないのと、
0.19%~0.20%という低い吸水率もあって、
良質の庵治石ならば、100年経っても赤茶色に変色したり、
艶がなくなったりという変化はないと言われています。
また、硬さを表す「圧縮強度」も1平方cmあたり、
2000kgを超える負荷に耐える優れた硬さを誇るため、
建立後100年以上を経過した墓石でも、
彫刻した文字がくっきり見えるのも庵治石の特徴です。
何年経っても、青みがかった細かな模様が美しく、
変色・変質が少ないため、いつまでも綺麗な状態が続きます。
庵治石は酸に強い
通常、石は炭酸ガスや亜硫酸ガス等によって表面が減摩されますが、
花崗岩の中でも特に庵治石は化学変化に強い石であります。
近年における地球環境は悪化し、車の排気ガスや、
工場の煙などに含まれる酸性の大気汚染物質を取り込んで降る、
酸性雨には、窒素酸化物や硫黄酸化物が含まれております。
これらの大半は一酸化炭素や二酸化硫黄で、
これらのガス自体にはあまり雨を酸性化する力はありませんが、
大気中での水蒸気との化学反応により酸性度の強い硫酸や硝酸を生み出します。
庵治石は、これらの酸にも強いため、彫刻された、細かく小さな文字でも、
石の表面が崩れて読めなくなるようなことはほとんどありません。
以上のような、多くの優れた特徴により、庵治石の評価は高まり、
加工に関しても、第二次世界大戦後に機械化が進み、
研磨精度が格段と良くなってからは、それまで以上に需要が伸び、
価格も急騰し、その希少価値が認められるようになったのです。
けれども、近年においては、一部の庵治石も中国に送られ、
墓石として製品加工されたものも市場に流通しています。
卓越した技術を誇る「庵治・牟礼」の石職人の技術を持ってしても、
最も加工が難しいと言われる庵治石を中国で加工するということは、
製品の良し悪しなどは関係なく、単に利益追求としか考えられません。
庵治石だけに限らず、日本の石を中国で加工された墓石は、
すべてにおいて、安心してお買い求めいただける商品とは言い難いものです。
※参考文献:『天下の銘石 庵治石』(谷本竹正氏著)
~つづく~
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