人は「何を見るか」と「どう動くか」で分かれる
8月20日。
福岡市美術館にある、
草間彌生さんの《南瓜》について書きました。
あの黄色いカボチャ。
人間よりデカい。
高さ2メートル。
幅2.5メートル。
福岡に、なぜか巨大なカボチャがある。
草間彌生さんの野外アート初作品。
…そんな話から始まりました。
ところが。
その投稿を読んだ松尾晴之さんから、
DMが届きました。
「初めまして。」
はい。
ここまでは普通。
問題は、このあと。
「初めまして」の情報量ではない。
松尾さんから、
草間彌生さんにまつわる話を聞きました。
福岡にあった、
MOMAコンテンポラリー。
そのオーナーNさんが、
「草間彌生を、もう一度ニューヨークの舞台へ戻したい。」
そう考えていたこと。
ニューヨークのギャラリー。
所属する作家の作品をひたすら販売。
売って。
また売って。
そのうち、ギャラリーから注目。
そして、フロリダの別荘へ招待。
そこで、
「何かしてほしいことは?」と聞かれ、
「草間彌生を、もう一度スターダムに乗せたい。」
そこから、話が動いていった。
福岡のギャラリーが、
極東地区の担当となり、
本人との窓口にもなった。
……私は、
「あのカボチャ、福岡にあるんですよ。」
くらいのつもりで書いたんです。
それが。
福岡からニューヨークまで飛んでいった。
話の飛距離が長い。
しかも、
まだある。
あいれふにある、
キース・ヘリングの作品。
これも、
MOMAコンテンポラリーが
ニューヨークの倉庫に片っ端から連絡。
眠っていた作品を見つけ、
福岡市へ。
……福岡。
世界的な作品を、
普通の顔して置いてる。
そして、さらに「初めまして」が続く。
ここまで聞いて、
「すごい人がいたんだなぁ。」と思っていた。
松尾さんご本人から、
「かくなる私も、一時期アーティストの末席を汚しておりました。」
……ん?
松尾さんご本人?
40年ほど前の東京。
まだネットなんてない。
相棒となるYさんの声掛けで
二人で実験テレビカンパニー「smtv」という個人放送局をやっていた。
そんな二人。
チラシを配る。
渋谷ハチ公前に
携帯テレビを持っていく。
インタビューして、
その映像を放送する。
村上隆さん。
篠原勝之さん。
天久聖一さん。
さらに。
テレビ付きの傘を
ギャラリーの傘立てに置いて、
勝手に映像を流す。
胸元にカメラをつけ、
周囲に映像を放送する
メディアスーツ。
二人の人間の視覚と聴覚を入れ替える
視聴覚交換マシン。
……40年前?
やってることが、今聞いても未来。
そして私は思いました。
……松尾さんって、何者なん?
それが、
草間彌生。
キース・ヘリング。
ニューヨーク。
村上隆。
アートゲリラ。
……初対面の情報量ではありません。
そして、8月27日。
草間彌生さんの訃報を知りました。
97歳。
8月20日に、
私は草間彌生さんの《南瓜》について書いた。
その投稿から、
松尾さんとつながった。
そして、
草間彌生さんが福岡に来た背景を知る。
その数日後に訃報を知った。
・・・なんだろう。
偶然と言えば、それまで。
とはいえ、
こういうのを「ご縁」というのかなと思います。
草間彌生さんと、
直接お仕事をしたわけではありません。
それでも。
ひとつの作品をきっかけに、
何十年も前の仕事の話が、
今の私のところまで届いた。
有名な作品の横には、見えない仕事がある。
作品だけを見れば、
そこにあるのは一枚の絵やひとつの彫刻。
でも。
そこに来るまでには、
誰かが動いている。
見つけた人。
つないだ人。
売った人。
「この人を、もう一度世に出したい」と動いた人。
表に名前が出るとは限らない。
でも、
その仕事があったから、
今ここにある。
今回、
松尾さんから聞いた話は、
そんな「見えない仕事」の話でもありました。
ネットには残っていない。
でも、誰かの記憶には残っている。
そして。
その記憶が、
また次の誰かへ渡っていく。
カボチャを書いたら、人が一人出てきた。
8月20日。
私は、福岡にあるカボチャを書きました。
すると、「初めまして。実は…」と、松尾さんが現れた。
そこから、
草間彌生さんの話が出てきた。
それもお写真付きで。
さらにキース・ヘリングの話が出てきた。
40年前の東京の話まで出てきた。
そして8月27日。
草間彌生さんの訃報を知った。
……なんだか不思議。
福岡って、
掘ると遺跡じゃなくて人が出てくる。
しかも。
たまに、とんでもない人が出てくる。
今回もそうでした。
草間彌生さん。
そして、草間彌生さんを後世に残そうと動いたNさん。
関わった皆さん。
福岡に、
世界に誇れる作品を残してくださって、
ありがとうございます。
カボチャひとつから始まった不思議なご縁。
そして、色々な角度から学ぶことが多く。
……ご縁って、
思ったより後から届くものなのかもしれません。
草間彌生さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
そして松尾さん、
知られざる貴重な情報提供をありがとうございます。



