業務改善と人材育成のプロ鎌田千穂

業務改善と人材育成のプロ

鎌田千穂

自らが思い描く、よりよい未来を手に入れるために

　福岡市南区で「Chi-ho's studio（チホズスタジオ）」を営む産業カウンセラーの鎌田千穂さんは、個人カウンセリング、企業や官公庁など職場での業務改善と人材育成コンサルティングを主に行っています。「悩みを解き放ち、開き放つことが私の使命」と語り、2013年に産業カウンセラーの資格取得後、「現在までに1万人以上の方々と接し、お客様自らが思い描く、よりよい未来を手に入れて頂くためのサポートを行ってきました」といいます。

　鎌田さんは、職場での人間関係、転職や離婚など、様々な悩みを持った人たちの相談にのっています。依頼者の悩みにじっくりと耳を傾け、その人にとってどうすれば最善なのかを、寄り添いながらともに考えていきます。ちょうど絡まった糸をゆっくりとほどいていくように、思考の論点をわかりやすく整理し、解決の糸口を探っていくのです。

　一方、企業や官公庁などの職場では、効率的な業務改善、組織の財産となる人材育成の実現に向けた講演や研修を行っており、これまで官公庁はじめ、商工会議所、医療機関、飲食店や美容室などで数多くの実績があります。最近では、パワハラやセクハラ、年上部下を持つ年下上司など世代間のコミュニケーション、うつ病や自殺なども職場の深刻の問題となっており、それらについての解決策を求められることも多いそうです。

　「職場にいる人たちがやる気に満ちあふれ、いきいきと働いている組織は売上や成績もよく、魅力的な人材が揃っているもの。どんな課題があり、どうすれば具体的に改善ができるのか、複数の選択肢を提案しています」と鎌田さんは話します。

「良いことだけのために、悪いことは存在している」

　高校を卒業後、歯科医院、教育系出版社、旅行会社、建設、IT関連、通販会社などで、事務、営業、技術職など様々な仕事を経験してきたという鎌田さん。「会社組織の中で自分の能力を伸ばしていきたい、あるいは、自分を大切にしてほしいとの思いが強かったんですよね。その会社にいても自分は伸びないと感じた時は、見切りをつけて違う職場に移り、また新たな挑戦をする。そんな繰り返しでした」と振り返ります。

　起業のきっかけは、当時勤務していたある会社での「理不尽な人員削減だった」といいます。「私は教育指導を担当していたのですが、改善を申し入れても聞いてもらえず、人を単なる道具として扱う会社に情熱を注ぐことはできなくて結局退職しました。しかし、自分が生涯扱っていくべきテーマは、組織の中でどうしたら働き甲斐のある環境を作り、良い人材を育てていけるかを考えていくことだと気づかせてくれたんです」。39歳のころ、業務改善と人材育成コンサルティング業で独立。「Chi-ho's studio」を立ち上げました。その後、産業カウンセラーの養成講座に半年間通い、42歳で資格を取得しました。

　会社勤めをしていた頃は、リストラで解雇されたり、会社が倒産したりといったこともあったそうです。「でも、いろんな業種の会社で、豊富な経験を積んだからこそ、何かご相談を受けたとき、問題点がどこにあるか、社員さんの気持ちがどうなのかなどがよくわかるんです。辛いこともあったけれど、『良いことだけのために、悪いことは存在している』と私はいつも思っています。たとえ悪い出来事があっても、それはのちに喜びを味わうためだけにあるんだって。数多くの会社、業界でいろんな体験ができたことは、今の私にとっては貴重な財産です」と鎌田さんは笑顔をみせました。

新人保育士の離職を防ぎ、仕事と子育ての両立ができる社会に

　2016年9月には、事務所内に「おーるはっぴー保育園」を開設。子どもたちを預かり、保育士を養成する事業を始めました。同園は認可外保育園であると同時に、新人保育士に対して一定期間「慣らし保育」の場を提供するトレーニングセンターでもあります。

　「創業からお世話になっている再就職支援機関で、退職した保育士や幼稚園教諭がなぜ辞めたのかを聞いたことが、この事業を立ち上げたきっかけです。いきなり現場で右往左往させて悩みを抱かせてしまうのではなく、まずは子どもたちや保護者、同僚や先輩とどのように接したらいいかを学び、慣らし保育を体験して頂くことで、園での定職率向上をはかります」。深刻な保育士不足は「解消されれば待機児童も減り、働く保護者の方々が仕事と子育てを両立できる社会になっていくはずです」と鎌田さんは信じています。

　インタビューの最後に鎌田さんは「いろんな悩みや出来事があって、転ぶときは一人だったかもしれません。でも、立ち上がるときは一人ぼっちじゃない。社会にはサポートしてくれる人たちがたくさんいます。私もその一人としてお役に立てたら」と優しい眼差しで語りました。

（取材年月：2018年6月）

悩みを解き放ち、開き放つことが私の使命

自らが思い描く、よりよい未来を手に入れるために

「良いことだけのために、悪いことは存在している」

新人保育士の離職を防ぎ、仕事と子育ての両立ができる社会に

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