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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(獲得)

2020年4月12日 公開 / 2021年8月30日更新

テーマ:ファシリテーション

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 業務効率化 手法生産性向上 取り組み働き方改革

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

私は、『会社の会議:不要な会議がもたらす悪影響を考える:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。
このコラムの中で、朝日新聞のアンケートの結果を紹介し、時間が長い、結論が出ない、物事が決まらない、等々の悩みや課題があるということを書きました。

今回は、共感マップというフレームワークを用いて、会社の会議に参加している方々の悩みや課題を見える化し、ファシリテーションを活用することで、どう変わるのか、ということを、下記の3つの章で説明します。5分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. 共感マップの紹介

共感マップというのは、XPLANE という会社が開発したフレームワークです。英語では Empathy Map と言います。ある1人の利害関係者、あるいは1つの利害関係グループについて考えるものです。ペルソナを見える化するフレームワークといえます。

ペルソナ(persona)とは、サービス・商品の典型的なお客様像のこと。サービス・商品を利用するお客様の中でも特に重要なお客様像をモデル化したものといえます。

共感マップは、①頭で何を考え・感じ、②目で何を見て、③耳で何を聞き、④口で何を言い何を行動するのか、を見える化するためのものです。さらに、⑤苦痛なこと、⑥獲得すること、を見える化します。

例えば、デザイン思考(Design Thinking)のワークショップでも共感マップは使われます。お客様志向でアプローチするときに、お客様を理解するために便利なフレームワークです。

  1. まず最初にやることは、「誰について書くのかを決める」ことです。ペルソナを決めるということです。
  2. 次にやることは、「その人の視点に立って想像する」ことです。
  3. その次にやることは、「実際に確かめる(精度を上げる)」ことです。インタビューして聴いたり観察したりしながら確かめていきます。想像した事(仮説)が正しいか否か、漏らしていることはないのか、実際に検証します。


お客様について共感マップを作るときのキーポイントは下記a〜cの3点です。
a. どのくらい先のお客様まで考えられるか?
お客様は、彼ら彼女らのお客様(あなたから見るとお客様のお客様)のことを見て、ビジネスをしています。お客様の共感マップを作っているのですから、この視点はとても大切です。言われると当たり前に思えるでしょうが、実はこれはそんなに簡単なことではないのです。

b. 実際のインタビューで聴くときの注意点
注意点を3つあげるとしたら、「想定外を楽しむこと」、「先入観を捨てること」、「誘導しないこと」でしょう。
ペルソナの視点に立って想像した事をインタビューなどで検証するとき、想定外のことが起こり得ます。想定していなかったことが起こると慌ててしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。インタビューの場で、誰に何をどのように訊くのか、事前に戦略を立てるべきです。想定外のことが起きたとしても、いくつかの戦略を事前に準備していれば、対応できる可能性が高くなります。先入観を持たずにインタビューに望むこと、決して相手を誘導しないこと、これらも事前に質問を準備することで対応できます。オープン・クエスチョン(Open Question)とクローズド・クエスチョン(Closed Question)をうまく使うことが大切です。仮説検証技法を活用すると良いでしょう。

c. お客様の共感マップがあなたの会社の施策・方針と違う場合もある
これは悩ましい点です。あなたの会社の施策・方針にそぐわないと判断される場合もあるでしょうね。
もし、インタビューの場でこのようになった場合はどう対応するのか、事前に戦略を準備しておかないと、慌ててしまうでしょう。


2. ファシリテーション活用前(現状)の「獲得」

この章では、現状「参加者は会議に参加すると何を獲得できるのか」を書いてみたいと思います。

下図は現状の会議について、共感マップで見える化したものです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ現状

ペルソナは、会社の会議に参加している方(あなた)です。
私はあなたに実際に確かめていないので、私が想像して書いたレベルのものです。とはいうものの、全くの想像ではなく、例えば朝日新聞の特集や、私が会社の会議について話を聴くことができた方々の意見を総合したものになっています。


会議に対して悩み・課題をお持ちの方について、下記 1〜6 の観点から共感マップを作成しました。

  1. 考える・感じる:会議について何を考えているのか?どう感じているのか?
  2. 見る:会議中に何を見ているのか?
  3. 聞く:会議中に何を聞いているのか?
  4. 言う・行動する:会議中に何を発言するのか?何をするのか?
  5. 苦痛:会議に参加することについてどんな苦痛があるのか?
  6. 獲得:会議に参加すると何が獲得できるのか?


数回の会議を経てゴールに到達できたときは安心する

「やっと終わったぁ」という感じでしょうか。達成感を感じられるかもしれません。と同時に徒労感も感じてしまいそうですね。

上の共感マップに書かれているものはネガティブなものばかりです。
私は『会社の会議:不要な会議がもたらす悪影響を考える:今理解すべき3つの視点』というコラムを書いています。
そのコラムの中で、下記3点を説明しています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みください。

  1. 仕事に取り組む姿勢 (モチベーション・充実感) が下がる
  2. 「残業することが当たり前」から脱却できなくなる
  3. スキル(特にホワイトカラーが労働市場で評価されるもの)を研鑽する時間が取れない


やっと終わった、ということで一旦安心できるかもしれませんが、これを放置しておくと、いわゆる「茹でガエル」状態になったり、活力のない組織になってしまう危険性があります。


3. ファシリテーション活用後の「獲得」

この章では、ファシリテーションを活用した会議では、「参加者は会議に参加すると何を獲得できるのか」を書いてみたいと思います。

下図は、ファシリテーション活用後、言い換えると私が伴走型で支援させていただいた後の共感マップです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ協働後

以前よりも短時間で合意形成されるようになる(結論が出る)

ファシリテートされた議論は、ファシリテートされていない議論と比べて、短時間で合意形成されます。そうなるようにファシリテーターは事前に準備します。
1時間の会議が40分で終わったら(目標に到達したら)、その会議は40分で解散します。

雑談から入る会議、だらだら続く話、等々。ファシリテーターはそういう会議は設計しません。「会議の設計?何言ってるの?」と思われた方、私は『会社の会議の進め方:場を作る:今理解すべき3つの視点』というコラムを書いています。
そのコラムの中で、下記3点を説明しています。ご興味をお持ちの方、是非お読みください。

  1. プロセス設計とは?
  2. チーム設計とは?
  3. アイスブレイクとは?


会議はどう設計するかが鍵です。定例会議であっても。
例えば、雑談から入る会議。その雑談が何かの目的を持ったアイスブレイクなら良いのです。そのアイスブレイクの目的が、その会議の目的・目標に一貫性を持たせるような位置付けのものなら良いのです。
一方、何の目的もなく、ただ話したい人が話したいことを喋っているだけ、という雑談は時間のムダです。



以前よりも決定事項が確実に実行される

誰が何をいつまでに何の役割を持って実施するのか、いつ進捗確認するのか、を合意の上で決定事項とします。

決定されたことが実行されるには、論理性と納得性が必要です。
デール・カーネギーは彼の著書「人を動かす」の中で、『人間は自尊心のかたまりです。人間は他人から言われたことに従いたくないが、自分で思いついたことには喜んで従います。だから、人を動かすには命令してはいけません。自分で思いつかせれば良いのです。』と書いています。皆で合意した「やること」を自ら納得することが、とても重要です。

私は『会社の会議の進め方:意見をまとめる:今理解すべき3つの視点』というコラムを書いています。
そのコラムの中の「意思決定手法とは?」という章で、RACI(レイシー)というフレームワークを説明しています。誰が何をいつまでに何の役割を持って実施するのかを見える化し合意するために使うフレームワークです。ご興味をお持ちの方、是非お読みください。

論理性。論理的に話し合うためには上記のRACIなどのフレームワークがとても役に立ちます。

納得性。どのように「誰が何をいつまでに何の役割を持って実施するのか」を決めるのか、そのプロセスが納得されていること、これが重要です。例えば「その決め方、おかしいだろ」と思っている人がいたら、その人は決定事項に納得しません。ですから、やらない、あるいは表面上やっているように見せるが実際は何もやっていない、ということになりかねません。

また、透明性も重要です。その人がいる場で決めることが透明性の観点からも重要である、と私は思います。

さらに、「やる」と決まった担当者がその実施項目を「本当にできるのか・実施するスキルがあるのか」という観点も、とても重要です。人を育てる・育つという要素も大切ですので、「一人ではちょっと難しいかも...」という場合は、アドバイザーをつけることも重要です。この辺りのこともRACIを活用することで合意形成できます。


会議に参加して自分が成長できる

これは大きい効果です。
何回か会議に参加することで、今までと違う成長した自分に気づいていただけると思います。
ファシリテーターは、確実にソフトスキルを成長させることになります。大変かもしれませんが、大変さに見合った成長を実感できると思います。

なお、ソフトスキルとは、コミュニケーション、プレゼンテーション、ファシリテーション、リーダーシップ、チームビルディングなどのスキルです。

ファシリテーターはフレームワークやソフトスキルを駆使して議論を進めます。会議参加者も、フレームワークの使い方を実際に使いながら身につけることになります。また、ファシリテーターのソフトスキルを見て・感じて、自分もソフトスキルを身につけたいと思う人が、何人か出てくるかもしれません。

私はファシリテーターということもあり、ソフトスキルを獲得し研鑽し続けることをお勧めしています。普遍的で一生ものと言えるスキルだと思っているからです。

フレームワークについては、『会議効率化:課題解決や合意形成に役立つフレームワークとは?:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。
フレームワークとは何か?このコラムで説明しています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

ソフトスキルについては、『会議効率化:今後益々重要になるソフトスキルとは?:今理解したい3つの視点』というコラムを書きました。
ソフトスキルとは何か?このコラムで説明しています。ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

私は起業して間もない頃、『JIJICO掲載コラム『新入社員の離職防止に役立つファシリテーションとは何か?』の補足』というコラムを書きました。

若い人たちだけではなく「成長したい」と思っている人たちは多いと思います。
ちょっと考えてください。あなたは、あと何年くらい働きますか?あと何年くらい働く必要があると思いますか?今のあなたが持っているスキルとスキルレベルのままで、その年数働けますか?

2020年1月に、開成中学・高校の当時校長だった柳沢校長先生の『人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜』という講演を拝聴する機会がありました。私見を交えて『組織力強化:withコロナ中に自分を育てる・組織を育てる:大切な3つのポイント』というコラムを書いています。ご自身のスキルを育て研鑽する。そのことが組織の力を強くすることにつながる。ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

ところで、コロナ禍でテレワークが広く求められるようになりました。
このテレワークで、必須な仕事、まあまあ必要な仕事、ほとんど必要のない仕事、等々、仕事の必要性が炙り出されてきました。
同様に、絶対必要な人、まあまあ必要な人、テレワークではほとんど仕事をしない人、等々、役職に関係なく炙り出されてきました。
【参照情報】


誰も解いたことのない問題がいきなり出てきたとしましょう。
「どうしたら良いかわからない。途方に暮れてしまう。」と言うのは簡単です。
どうしたら良いかわからない時にどうするのか。ファシリテーションが役立つことがあるのです。議論の目的・目標を決め、どのようにその目標に到達するのかを決め、議論するワークショップをファシリテートする。参加者は議論に専念する。はじめに決めた目標に参加者が到達するようにファシリテーターは議論プロセスに専念する。このようにアプローチすることで、「全くどうしたら良いかわからない」というお手上げ状態を、「自分たちはこうするべきだ」という打ち手を自分たちで創出できる状態に変えることができます。


本コラムで紹介した共感マップを作った米国XPLANE社のCEO Aric Woodのウェビナー『Start / Stop / Continue: Augment your Strategy with a Near-Term Resilience Plan - April 2, 2020』の録画が公開されています。私のコラム『新型コロナウイルス対策:困難・苦境から立ち直るには?:ウェビナーのご紹介』に、動画に加えてプレゼン資料とワークシートを貼ってあります。英語になりますが、こんな時だからこそ、是非ご一読・一見していただきたい情報です。(当たり前のことですが、このとおりにやれば良いということではなくて、あなたの会社・組織に合った内容でワークショップを設計し開催する必要があります)

デジタル技術。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉を最近よく見聞きするようになっています。テレワークが長期間続くと、デジタル技術を使えない人と使える人との差が歴然としてきているのではないかと思います。使えない組織・会社と、使える組織・会社との差が歴然としてきているのではないかと思います。
例えば上のAric Woodのウェビナーのようなワークショップ。「新型コロナウイルスが落ち着いたら、会社に出社して、会議を開いて話し合おう」ではスピード感がなさすぎます。全員が自宅にいても、オフィス勤務と人とテレワークの人が混在していても、クラウド上でワークショップは開催できます。

これができるためには、紙にペンで文字や絵を描くように、パソコンやタブレットを使えなくてはなりません。いちいち「あれ?ここどうやるの?」となっては、ITツールの使い方説明会になってしまうからです。IT・デジタル技術のリテラシーが求められます。主任・課長・部長などのマネジメント層の方々にも。言い換えると、会議やワークショップの参加者全員がIT・デジタル技術のリテラシーを持っていれば、上のウェビナーのようなオンライン会議・ワークショップが開催できるのです。


さて、ファシリテーションを活用すると会議は本当に変わるのか信じ難い、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
本を読んだり話を聴いたりするのも良いでしょう。

百聞は一見に如かず。百見は一体験に如かずです。体験するのが一番早い、と私は思います。例えば「いつもの会議にファシリテーターが入った場合どうなるか」をリアルに体験できたら、分かっていただけるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたプロ

小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(BTFコンサルティング)

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