会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(言う・行動する)

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:ファシリテーション

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

私は、『会社の会議:不要な会議がもたらす悪影響を考える:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。
このコラムの中で、朝日新聞のアンケートの結果を紹介し、時間が長い、結論が出ない、物事が決まらない、等々の悩みや課題があるということを書きました。

今回は、共感マップというフレームワークを用いて、会社の会議に参加している方々の悩みや課題を見える化し、ファシリテーションを活用することで、どう変わるのか、ということを、下記の3つの章で説明します。5分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション(Facilitation)。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. 共感マップの紹介

共感マップというのは、XPLANE という会社が開発したフレームワークです。英語では Empathy Map と言います。ある1人の利害関係者、あるいは1つの利害関係グループについて考えるものです。ペルソナを見える化するフレームワークといえます。

ペルソナ(persona)とは、サービス・商品の典型的なお客様像のこと。サービス・商品を利用するお客様の中でも特に重要なお客様像をモデル化したものといえます。

共感マップは、①頭で何を考え・感じ、②目で何を見て、③耳で何を聞き、④口で何を言い何を行動するのか、を見える化するためのものです。さらに、⑤苦痛なこと、⑥獲得すること、を見える化します。

例えば、デザイン思考(Design Thinking)のワークショップでも共感マップは使われます。お客様志向でアプローチするときに、お客様を理解するために便利なフレームワークです。

  1. まず最初にやることは、「誰について書くのかを決める」ことです。ペルソナを決めるということです。
  2. 次にやることは、「その人の視点に立って想像する」ことです。
  3. その次にやることは、「実際に確かめる(精度を上げる)」ことです。インタビューして聴いたり観察したりしながら確かめていきます。想像した事(仮説)が正しいか否か、漏らしていることはないのか、実際に検証します。


お客様について共感マップを作るときのキーポイントは下記a〜cの3点です。
a. どのくらい先のお客様まで考えられるか?
お客様は、彼ら彼女らのお客様(あなたから見るとお客様のお客様)のことを見て、ビジネスをしています。お客様の共感マップを作っているのですから、この視点はとても大切です。言われると当たり前に思えるでしょうが、実はこれはそんなに簡単なことではないのです。

b. 実際のインタビューで聴くときの注意点
注意点を3つあげるとしたら、「想定外を楽しむこと」、「先入観を捨てること」、「誘導しないこと」でしょう。
ペルソナの視点に立って想像した事をインタビューなどで検証するとき、想定外のことが起こり得ます。想定していなかったことが起こると慌ててしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。インタビューの場で、誰に何をどのように訊くのか、事前に戦略を立てるべきです。想定外のことが起きたとしても、いくつかの戦略を事前に準備していれば、対応できる可能性が高くなります。先入観を持たずにインタビューに望むこと、決して相手を誘導しないこと、これらも事前に質問を準備することで対応できます。オープン・クエスチョン(Open Question)とクローズド・クエスチョン(Closed Question)をうまく使うことが大切です。仮説検証技法を活用すると良いでしょう。

c. お客様の共感マップがあなたの会社の施策・方針と違う場合もある
これは悩ましい点です。あなたの会社の施策・方針にそぐわないと判断される場合もあるでしょうね。
もし、インタビューの場でこのようになった場合はどう対応するのか、事前に戦略を準備しておかないと、慌ててしまうでしょう。


2. ファシリテーション活用前(現状)の「言う・行動する」

この章では、現状「参加者は会議中に何を発言するのか・何をするのか」を書いてみたいと思います。

下図は現状の会議について、共感マップで見える化したものです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ現状

ペルソナは、会社の会議に参加している方(あなた)です。
私はあなたに実際に確かめていないので、私が想像して書いたレベルのものです。とはいうものの、全くの想像ではなく、例えば朝日新聞の特集や、私が会社の会議について話を聴くことができた方々の意見を総合したものになっています。


会議に対して悩み・課題をお持ちの方について、下記 1〜6 の観点から共感マップを作成しました。

  1. 考える・感じる:会議について何を考えているのか?どう感じているのか?
  2. 見る:会議中に何を見ているのか?
  3. 聞く:会議中に何を聞いているのか?
  4. 言う・行動する:会議中に何を発言するのか?何をするのか?
  5. 苦痛:会議に参加することについてどんな苦痛があるのか?
  6. 獲得:会議に参加すると何が獲得できるのか?


聞いているだけ、傾聴していない(Hearing only, No listening)

右の耳から左の耳へ、という感じです。
「聞く(hear)」とは、声や音が耳に入ることです。何らかの情報が耳に入ることです。
「聴く(listen)」とは、音や声に積極的に耳を傾けることです。傾聴です。理解しようと進んで耳を傾けることです。


内職をする

自分が内職をする、ということです。

会議の時間中に大切なメールが届くかもしれないのでメールをチェックし続ける、あるいは急ぎのメールを打つ、あるいは今日◯◯時までに資料を作成しなくてはならないので資料を作成する、等々...

会議参加中にその会議とは関係のない仕事を内職すること、そんな経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないかと思います。


発言するのは意見を求められたときだけ

こういう方々は結構な数おられるのではないかと思います。

発言しにくい場の雰囲気であったり、以前発言した時にあまり良くない経験(例えば否定された経験)をされたことがあるのかもしれませんね。


積極的に自分の思考回路を使わない

この共感マップの「言う・行動する」に書き出されているものはネガティブなものばかりです。このような場にいたら思考回路の動きは鈍くなってしまいそうですね。

会議では、自分の頭脳をフル回転させて議論する必要がある、と私は思うのです。よく考えない、自分の思考回路を使わないという姿勢では、時間ばかりが過ぎていってしまいます。


議事録は事後に経験の浅い人が作成する

議事録は、会議の成果物ですから、とても大切なものです。

経験の浅い方に経験を積んでもらって成長してもらう、という目的があるのかもしれません。私は若い頃、何回も訂正されて数日経ってから議事録を出したという経験があります。

議事録は会議終了後、あまり時間をおかずに共有されなくてはなりません。人の記憶の有効期限みたいなものがあると思います。(時間が経過しすぎると何を話したか曖昧になってきてしまう)
実際は言っていないのに、議事録を見て、俺はこんなことは言っていない、こう言った、などと言う人が出てくることがあります。


3. ファシリテーション活用後の「言う・行動する」

この章では、ファシリテーションを活用した会議では、「参加者は会議中に何を発言するのか・何をするのか」を書いてみたいと思います。

下図は、ファシリテーション活用後、言い換えると私が伴走型で支援させていただいた後の共感マップです。(タップやクリックして拡大できます)
共感マップ協働後

他の人の発言を傾聴し、当事者意識を持って積極的に発言する(公平性)

ファシリテーターが入ると、会議室はみんなの発言が受け入れられる(否定されない)「安心安全な場」になります。(ファシリテーターは「安心安全な場」をつくります)

傾聴。
アクティブ・リスニング(Active Listening)
という言葉をご存知の方、そうアクティブ・リスニングです。アクティブ・リスニングは、もともとカウンセリングで用いられていたもので、BTFコンサルティングでは、アクティブ・リスニングのエッセンスを使います。
そして、前向きな話し合いを促し、意見・アイデアを紡ぎ合わせていきます。

また、私BTFコンサルティングがファシリテーターとして協働させていただく会議では、役職、勤続の長短、性別、等々基本的に公平にします。参加者の意見を公平に扱います。◯◯課長の意見と△△さんの意見を、同じように公平に扱います。

安心安全な場。
私は以前『会社の会議:会社の会議における「安心安全な場」とは?:今理解したい3つの視点』というコラムを書きました。
ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

また、傾聴については、『会社の会議の進め方:意見を引き出す:今理解すべき3つの視点』というコラムを書きました。
会議における傾聴についてご関心をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

「他の人の発言を傾聴し、当事者意識を持って積極的に発言する」という変化。
1回目から、いきなり変化することは無理かもしれませんが、何回かそういった場・雰囲気での話し合いを体験していただくことによって、当事者意識を持って積極的に発言していただけるようになるようになります。そうなっていただけるよう、私は伴走型で協働し支援させていただきます。


積極的にポストイットや模造紙に書いたり共有画面に打ち込んだりする

私BTFコンサルティングがファシリテートさせていただく会議では、参加者の方々にポストイットに意見やアイデアを書いていただく場面があります。

ワークショップなどでポストイットにご自分の意見やアイデアを書いたご経験をお持ちの方がいらっしゃるかと思います。同じように書いていただくことがあります。模造紙に直接書いていただく場合もあります。

何回かそういった場をご体験いただくと、積極的に書いていただけるようになってきます。

また、リモート参加者がいる場合は画面共有になりますので、キーボードに打ち込んでいただくことになります。
リモート参加の場合、ITツールを使用して参加する形になります。

あなたが既に使っているITツールがあるのであれば、それを使って参加する形になります。既に使っているということであれば、使い慣れていらっしゃるでしょうから、とてもやり易いですね。
使っているITツールがないという場合は、IT担当者の方と私が相談させていただき、ITツールを選んでいただくことになります。

紙にペンで書く、ということが難しいという人はいませんよね。紙とペンは幼い頃から慣れ親しんでいますので。
ITツールは、所詮ツールなので、同じように抵抗なく、ご自分の意見やアイデアを打ち込める必要があります。抵抗なく使える必要があります。「あれ?これどうやるんだっけ?」では会議の進行が乱れてしまいますので。(会議がITツールの使い方説明会になってしまいます)
慣れるまで、練習会やOJTが必要な場合があります。


ポストイットや紙に意見やアイデアを書く意義。それは、議論の見える化です。

ファシリテーターが入る会議では、会議で出されたいろいろな意見やアイデアを、構造化して分かりやすく整理し、参加者の前に見える化します。参加者全員で1つの議場(本コラムでは模造紙)を見ながら議論するイメージです。
私BTFコンサルティングは、ファシリテーション・グラフィックという手法を活用して、議論を見える化します。

複数の人で議論する、という協働を実施するには、参加者全員で意見を目の前に共有し、さらに今起こっている議論を目の前に共有することが必須です。各自が自分の頭の中だけで考えるのは効率が悪いのです。見える化しなければいけません。マインドマップを使った経験のある方、いらっしゃると思います。アイデアを目の前に書き出すことの有効性を実感されたと思います。同じような感じです。目の前に共有するには、議論を見える化することが必要です。

会議が始まる前に資料を準備して参加者に配布する場合があります。会議の最中にその資料を見つめている人がいる、そういう会議は良くありません。議論はライブで進行しているのに、その人は会議開始時点での紙を眺め自分の思考に浸ってしまうからです。みんな別々に各々の思考に浸ってしまうのは時間のムダです。効率が悪すぎます。

そもそも、会議は議論してアイデアを紡ぎ、合意を形成することが目的です。このことに各自のエネルギーを集中させるべきです。

私は以前『会社の会議:ファシリテーションでどう変わる?:共感マップ(見る)』というコラムを書きました。その中で、議論の見える化について説明しています。
会議の見える化、議論の見える化について、ご興味をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。


基本議事録は会議・ワークショップ終了時点で出来上がっている

ファシリテーション・グラフィックは、模造紙に議論を描いていきますので、基本何枚かの模造紙が議事録になります。文字だけで表すのではなく、線や矢印やイラストも活用して、議論の流れに加えて雰囲気も表現されたものになります。カメラで撮影して、それが議事録になります。

また、会議中にTo Doが決まります。このTo DoをRACIというフレームワークを活用して、誰が何をいつまでにやるのかを合意します。進捗をいつ確認するのかも合意します。模造紙(何がどう話し合われたのか)に加えて、誰が何をいつまでにやるのか、いつ進捗確認するのか、を合わせて議事録とします。
私は『会社の会議:会議の変革:RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』というコラムを書いています。このコラムでは、RACIをわかりやすく説明しています。ご関心をお持ちの方は、是非お読みいただきたいと思います。

コロナ禍の中、テレワークで在宅からリモートで仕事をしておられる方々がいらっしゃると思います。
このコラムで説明した会議のやり方は「会社の会議室に参加者が集まって議論する」というものです。
「家から同じことをやるには、どうしたらいいの?」と疑問を持たれている方がいらっしゃるかもしれませんね。

何人かは在宅、何人かは会社の会議室といった場合、あるいは全員が在宅といった場合。このコラムで少し触れたように、ITツールを活用する必要があります。もちろん考慮点もあります。ご興味をお持ちの方は、是非ご相談ください。ご相談方法は、このコラムの下の方の『小川芳夫プロの料金プランを見る』というリンクを辿ってください。
また、『JIJICO掲載コラム『台風や豪雨などの災害に備える働き方を考えてみませんか?』の補足(2020年3月28日追記あり)』というコラムに、「いきなりテレワークになった方へ」という章を追記しました。こちらもご参考にしていただけましたら幸いです。

本当に変わるのか信じ難い、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
本を読んだり話を聴いたりするのも良いでしょう。

百聞は一見に如かず。百見は一体験に如かずです。体験するのが一番早い、と私は思います。例えば「いつもの会議にファシリテーターが入った場合どうなるか」をリアルに体験できたら、分かっていただけるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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小川芳夫
専門家

小川芳夫(ファシリテーター)

BTFコンサルティング

ファシリテーションを核とするソフトスキルを活用して、ビジネス変革の実現を伴走型でお手伝いします。組織の中にファシリテーターを育て、自律的に変革が実現できるようになるまで伴走型でお手伝いします。

小川芳夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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