役員報酬が年収800万円を超えた社長は、海外現地法人設立を視野に入れよう

松本尚典

松本尚典

テーマ:タックスヘイブン 会社設立 


1.日本の所得税率と、非居住者の源泉徴収税率の比較を知ろう


日本は、社会インフラも整備され、非常に住みやすい国です。行政サービスもきめ細やかで、社会保障も充実しています。

一方、それを支えるための膨大な費用を賄うため、税率は非常に高い国です。とりわけ、高所得者に対する所得税の累進課税はきつく、かつ、国と、都道府県・市町村という、行政を維持するための国税と地方税が多重にかかってくる国でもあります。

国税である所得税率の最高税率でみると、世界最大の経済力を持ち、世界最強の富裕層をかかえるアメリカ合衆国の所得税の最高税率が、39%なのに対して(共和党は、これを36%まで引き下げることを主張しています)、日本の最高税率は45%。そして、ここに10%の住民税(地方税)が課税されますので、55%という、世界でも相当に高い税率の国になっています。

所得の半分を超えるお金が税金でとられてしまうわけで、高所得者層が住むには、世界でも高い税コストを負担しなければならない国ということになります。累進課税という税金は、高所得者から税をとり、低所得者への行政サービスで所得を再配分することを目指した制度ですから、日本は、世界一、高所得者がお金持ちになりにくい国、ということになります。

更に、今後、対中国の安全保障における防衛予算の大幅な増額を、所得税と法人税で賄うという方針が出ており、高所得者と高所得法人の税負担は、更に大きく上乗せされてくることは確実です。

平等に行政サービスを行きわたらせるには、日本は最適の国ですが、一方で、自分でリスクをとって、事業で成功した経営者が、お金持ちには、世界一なりにくい国だというのが、日本の姿です。

従って、日本人は、事業を成功させるまでには、良い国ですが、成功をさせて、お金持ちで居続けるには、世界一適さない国だと言えるでしょう。

2.居住者は、海外法人での役員報酬も、日本への納税義務がある


では、どうすればよいでしょうか?

タックスヘイブンに現地法人を設立し、現地事業を行って、利益を現地法人に留保させる


まず、最も簡単な方法は、自分が100%所有する会社を、法人税率が非常に安いタックスヘイブンの海外の国に設立し、その代表者に自分が就任して海外事業を展開し、その会社を「貯金箱」のように位置付ければ、税金は非常に安いです。

タックスヘイブンの中では、例えば、シンガポールであれば、非居住者が代表者になれますので(但し、シンガポールの現在の会社法では、ダイレエクターと現地セクレタリーの2名を配置することが義務けられます)、上記のような手法で、現地で会社にお金を貯める方法があります。

例えば、世界のどこに本社があっても問題がない、IT事業を新規で展開する場合、その本拠をタックスヘイブンの国におけば、利益をそこに貯めることができます。

シンガポールは、地方税がなく、法人税も格安ですので、世界の大企業が、シンンガポールに本社を置いているのは、このような理由からです。

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代表者が、役員報酬をとると、日本で所得税がかかってしまう


但し、この方法には、弱点があります。

会社の場合、利益(税法上の所得)に対しては現地の法人税が課税さますが、一方、日本に居住地を有する役員が報酬を受ける場合、その役員報酬は、外国に設立した会社から役員報酬を受けても、日本での課税対象となってしまいます。

3.非居住者を選択し、海外現地法人からも役員報酬を受けるという選択


もし、タックスヘイブンの地域の所得税に切り替える場合、日本の居住を離れて、当該国に、居住を移す必要があります(つまり、日本から住民票を抜く必要があります)。

一方、もし、日本の非居住者になり、海外の会社とともに、日本の会社からも、二重に役員報酬を受ける場合、日本の会社から受ける役員報酬には、20.42%の源泉徴収義務が会社に発生します。

日本で確定申告を行わない場合、この20.42%が日本での税金となります。

20.42%は、所得税の税率と比較した場合、日本に社会保険などの所得税を控除できる措置がないとすると、所得695万円を超えると、所得税率が23%と上がるため、非居住者の源泉徴収のほうが、税金が安くなる可能性があります。

非居住者は、10%の住民税もかからなくなりますので、基礎控除などを考慮しても、年収800万円超えの方であれば、確実に、非居住者を選択した方が、日本の税金は安くなります。

これが、思い切って、非居住者を選択肢し、日本の会社とともに、海外に会社を作り、双方でグローバルなビジネスを展開しながら、高額所得をえて、資産を創る方法です。

4.海外現地法人をつくる場合の注意点~幽霊会社は通用しない~


この方法を採用する場合、様々な注意点があります。

その代表的な注意点は、「税を回避するだけの幽霊会社では、通用しない」ということです。

実態のない空箱の会社をタックスヘイブンに設立する、という方法は、昔は通用した時期もありましたが、今では、形骸化事例の法人格の否認の法理が税分野でも適用され、その背後にいる個人が脱税と判断されてしまいます。

従って、きちんと事業を海外で行っている会社を作り、その代表者を務める形で、非居住を選択する必要があります。

海外法人での事業実態と、事業収入を確保し、そこから実態のある役員報酬を受けるという形でないと、後で、法人格が否認され、莫大な納税漏れに認定され、修正申告して納税ができなければ、脱税犯罪となります。

5.非居住者選択のデメリットも考慮に入れて行動する


また、日本の非居住を税のために選択する、ということ自体にも、デメリットもありますので、それも考慮して、行動する必要があります。

日本は、最初に書いたように、非常に衛生的で高い環境を誇る先進国です。タックスヘイブンの国というのは、先進国の資本を安い税で集める国家戦略に基づいている国ですので、確実に、新興国あるいは途上国です。

そうなると、インフラや環境・現地労働力が、確実に日本よりも悪いレベルの国になります。日本の非居住者を選択するというのは、その環境を放棄することです。

健康保険を使えなくなるため、日本が世界に誇る高度な医療サービスは受けられなくなりますし、年金制度も使えなくなります。

住民票がとれなくなるために、日本の金融機関からの借入なども難しくなります(代表者が非居住者の場合、中小企業への企業融資も難しくなります)。

このようなデメリットもありますから、総合的・戦略的に考えて、計画的に行動する必要があります。

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