【不貞慰謝料】過大な請求はどこから恐喝になるのか
交際相手や関係のあった相手から妊娠を伝えられ、どう返事をすればよいか分からないまま連絡を絶ってしまった。あるいは、これから連絡を絶とうと考えている。そうした方から「後で何を請求されるのか」というご相談をいただくことがあります。この記事では、連絡を絶った後に届きやすい請求の種類と、その請求がどのような経路で届くのか、連絡を絶っていた事情が請求の場面でどう見られるのかを整理します。
本記事は2026年11月時点の法令をもとに、結婚していない男女の間で妊娠が分かった場面を前提としています。個別の事情によって結論は変わりますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
連絡を絶つこと自体は、それだけで違法とされるわけではない
結婚していない相手との間で、連絡を取り続ける法的な義務があるわけではありません。返事をしない、連絡先をブロックするといった行為そのものに、直ちに罰則や賠償の義務が結び付くものではありません。
ただし、妊娠が分かった後の場面では事情が異なります。妊娠によって生じる費用や心身の負担、生まれてくる子の法律上の地位といった問題は、連絡を絶っても消えるわけではなく、後から別の形で向き合うことになるおそれがあります。また、連絡を絶った経緯そのものが、後に慰謝料が問題になったときに不利な事情として考慮されることがあります。
連絡を絶つかどうかを考える前に、そもそも妊娠を告げられた直後に何を確かめるべきかについては、【男女トラブル】交際相手から妊娠を告げられた|最初の1週間に確認することで整理しています。
後から届きやすい請求の種類
連絡を絶った後に問題になりやすい請求は、相手が出産を選んだか、中絶を選んだかによって中心が変わります。主なものを表にまとめます。
| 請求の内容 | 主に問題になる場面 | 争点になりやすい点 |
|---|---|---|
| 中絶費用・通院費の分担 | 中絶を選んだ場合 | 負担の割合、費用の範囲 |
| 中絶をめぐる慰謝料 | 中絶を選んだ場合 | 妊娠後の対応が不誠実だったかどうか |
| 認知の請求 | 出産した場合 | 父子関係の有無 |
| 養育費 | 出産し、認知された場合 | 金額と、いつからの分か |
| 出産費用・妊娠中の生活費 | 出産を選んだ場合 | 分担の根拠と範囲 |
| 婚約破棄や交際上の嘘を理由とする慰謝料 | 婚約していた、既婚や経歴を隠していた場合 | 婚約の成否、隠し事の有無 |
中絶費用・通院費の分担
中絶を選んだ場合、手術費用や前後の通院費の分担を求められることがあります。二人の関係から生じた費用として、一定の割合で負担を求められる場面が多く、折半を前提に話が進むことも少なくありません。もっとも、何が費用に含まれるか、割合をどう考えるかは事情によって変わります。詳しくは【男女トラブル】中絶費用は折半なのか|「おかしい」と感じたときの整理の仕方をご覧ください。
中絶をめぐる慰謝料
合意のうえでの性行為から妊娠した場合、妊娠そのものを理由とする慰謝料は認められにくいと考えられています。一方で、東京高等裁判所平成21年10月15日判決は、男性にも中絶に伴う女性の身体的・精神的な負担を軽くし、経済的な負担を分かち合うよう努める義務があるとの考え方を示し、話し合いや支援を怠った男性の対応について賠償を命じました。妊娠を伝えられた後に連絡を絶ち、判断や手続を相手に任せきりにした場合、この考え方に照らして慰謝料の請求を受けることがあります。
認知の請求
相手が出産を選んだ場合、子の父であることを法律上認める「認知」を求められることが考えられます。認知に応じない場合でも、相手は家庭裁判所の調停や裁判を通じて父子関係の確定を求めることができ、最終的には本人の意思にかかわらず認知が認められることがあります。出生前に認知を求められる場面については【男女トラブル】胎児認知を求められた|生まれる前に認知する意味で解説しています。
養育費
認知によって法律上の父子関係が生じると、子を扶養する義務が生じ、養育費の請求を受けることになります。認知の効力は子の出生の時にさかのぼるとされており、養育費をいつからの分まで負担するかが争点になることがあります。実務では請求を受けた時点からとされることが多いものの、事情によってはそれより前の分まで認められた例もあります。連絡を絶っていた期間が長いほど、まとまった金額を一度に求められるおそれがある点には注意が必要です。
出産費用・妊娠中の生活費
出産費用や妊娠中の生活費の負担を求められることもあります。結婚していない男女の間では、婚姻費用のような明確な分担の仕組みはありませんが、認知後の養育費の話し合いの中で一緒に扱われたり、話し合いによって分担を決めたりする場面があります。出産費用については【男女トラブル】未婚の出産|出産費用を相手に負担してもらえるか、妊娠中の生活費については【男女トラブル】出産までの生活費は相手に求められるのか|内縁・婚約・交際の違いでそれぞれ整理しています。
婚約破棄や交際上の嘘を理由とする慰謝料
結婚の約束をしていた場合、妊娠を機に一方的に連絡を絶つことは、婚約の不当な破棄として慰謝料の対象になることがあります。また、既婚であることを隠して交際していた場合には、相手が交際を続けるかどうかを自分で決める機会を奪ったとして、別の理由から賠償を求められることがあります。婚約の解消に正当な理由があるかどうかについては、結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはもあわせてご覧ください。
連絡を絶っていた事情は、請求の場面でどう見られるか
先ほどの東京高等裁判所の判決では、男性の責任の重さを判断するにあたり、妊娠が分かった後の態度が考慮されています。一般に、次のような事情は責任を重く見る方向に働くことがあると考えられています。
- 妊娠を伝えられた直後から連絡に応じず、話し合いの機会を持たなかったこと。
- 出産するか中絶するかの判断を、相手一人に委ねたままにしたこと。
- 費用の負担や通院の付き添いなどを一切拒んだこと。
- 相手を責める言葉や、突き放す言葉を残したまま連絡を絶ったこと。
反対に、結婚するかどうかを含めて真摯に話し合ったことや、費用を自ら負担したこと、身体面・精神面での配慮をしたことは、責任を軽く見る方向の事情になり得ます。すでに連絡を絶ってしまった場合でも、その後の対応によって評価が変わる余地はありますので、早めに向き合い直すことが考えられます。どのような言葉が後で不利になりやすいかについては、【男女トラブル】妊娠を告げられたときに言ってはいけない言葉|後で不利になる発言で解説しています。
請求はどのような経路で届くのか
連絡を絶っていても、請求が届かなくなるとは限りません。相手は、次のような経路で請求を行うことが考えられます。
- 相手本人から、内容証明郵便などの書面が自宅に届く。
- 相手の依頼を受けた弁護士から、受任の通知や請求書面が届く。
- 家庭裁判所から、認知や養育費についての調停の呼出状が届く。
- 裁判所から、慰謝料や費用の支払いを求める訴状が届く。
勤務先や実家の住所を相手が知っている場合、書面がそちらに届くこともあります。弁護士名で書面が届いたときの初動については、内容証明が弁護士名で届いた|慌てて払う前にやるべきこともご参照ください。
また、相手が勤務先や家族に事情を伝えると告げてくることもあります。こうした働きかけは、伝え方によっては相手側の問題になることもありますが、まずは記録を残し、慌てて約束をしないことが大切です。
手続を無視し続けた場合に起きること
書面や裁判所からの呼出しに応じないまま過ごした場合、次のような流れになるおそれがあります。
調停に出頭しない場合
家庭裁判所の調停は話し合いの手続ですが、正当な理由なく出頭しない場合には、5万円以下の過料の制裁が定められています。また、認知の調停が成立しなければ、相手は認知を求める裁判を起こすことができ、話し合いの機会を持たないまま手続が進むことになります。
裁判でDNA鑑定を拒んだ場合
認知を求める裁判では、DNA鑑定によって父子関係を確かめることが一般的です。鑑定は強制されるものではありませんが、正当な理由なく拒んだ場合、交際当時のやり取りなど他の証拠とあわせて、拒んだこと自体が不利な事情として考慮されることがあります。
判決や審判が確定した場合
裁判の期日に出頭せず反論もしなければ、相手の主張に沿った判決が出るおそれがあります。判決や審判、調停で決まった内容が支払われないときには、給与などの財産の差押えを受けることがあり、勤務先に事情が知られるきっかけにもなり得ます。養育費については差押えの範囲が広く認められており、2026年4月に施行された改正民法でも、養育費の支払いを確保する仕組みが強化されています。
向き合い直すときに確かめておきたいこと
すでに連絡を絶ってしまった場合でも、これから対応を考えるときには、次の点を整理しておくと話し合いを進めやすくなります。
- 妊娠を伝えられた時期と、その後にやり取りした内容。
- 相手が出産と中絶のどちらを考えているか、またはすでに選んだか。
- 結婚の約束や、既婚・経歴などについての説明の有無。
- 相手から届いた書面やメッセージの内容と、届いた日付。
- 自分が負担できる費用の範囲と、支払い方法についての考え。
なお、自分の子であるかどうかに疑問がある場合は、その点を曖昧にしたまま支払いや認知に応じるのではなく、確かめる方法を検討することが考えられます。避妊をしていたのに妊娠を告げられた場合については【男女トラブル】避妊していたのに妊娠したと言われた|最初に確認すること、時間が経ってから妊娠を知らされた場合については【男女トラブル】別れた相手が「妊娠していた」と言い出した|後から出た話への向き合い方で整理しています。
弁護士が窓口になるという選択
連絡を絶った背景には、相手と直接話すことへの不安や、どう対応してよいか分からない戸惑いがあることも少なくありません。弁護士が代理人として窓口になれば、相手と直接やり取りをしないまま、費用の分担や認知、養育費について話し合いを進めることができます。請求の中身を一つずつ確かめ、根拠のある部分とそうでない部分を分けて交渉することで、合意の内容を書面に残し、後から追加の請求を受けるおそれを抑えることも期待できます。
当事務所が扱った事例として、【解決事例】交際相手の妊娠をめぐり100万円超を請求された事例|直接の面談に応じず解決金30万円で合意書を締結もご覧ください。
まとめ
妊娠を伝えられた後に連絡を絶つこと自体が直ちに違法になるわけではありませんが、中絶費用や慰謝料、認知、養育費といった問題は、連絡を絶っても残り、後から書面や裁判所の手続を通じて届くことがあります。連絡を絶っていた期間の態度が不利な事情として見られることもあるため、早い段階で状況を整理し、向き合い方を決めることが、結果として負担を抑えることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


