【風俗トラブル】女性用風俗でセラピストに個人的にお金を貸してしまったら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

女性用風俗(女風)を利用するなかで、指名していたセラピストから「家賃が払えない」「急な出費がある」などと打ち明けられ、個人的にお金を貸してしまったというご相談があります。返してもらう約束だったのに連絡が減った、店を辞めて行方が分からなくなった、という経過をたどることも少なくありません。この記事では、セラピストに貸したお金の返還を求めるときの考え方、記録の集め方、手続の進め方、そしてご自身の利用が周囲に知られないようにするための注意点を整理します。

本記事は2026年10月時点の法令に基づいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


セラピストに貸したお金も、返還を求めることができる

 お金の貸し借りは、法律上「金銭消費貸借契約」と呼ばれます。返すことを約束してお金を受け取れば契約は成立し(民法587条)、借用書を作っていなくても、口約束やLINEでのやり取りだけで成り立ちます。相手が女性用風俗のセラピストであっても、店の外で個人として貸したお金であれば、一般の個人間の貸し借りと同じように返還を求めることができます。

 もっとも、実際に返してもらう段階では、次の二つの点が争いになりやすいところです。

「もらったお金だと思っていた」と言われる場合

 恋愛感情や応援の気持ちが絡んだやり取りでは、借りた側から「プレゼントとしてもらった」「応援してくれたお金だ」と主張されることがあります。返す約束のない贈与であれば、原則として返還を求めることはできません。そのため、渡したときに「返す」という約束があったかどうかが、最初の分かれ目になります。

渡したお金が、店外での関係の対価と見られる場合

 形式上は「貸した」ことになっていても、実際には店を通さずに会うことや性的な関係を持つことの対価として渡していたと評価されると、返還請求が認められにくくなることがあります。公序良俗に反する目的のために渡したお金は、返還を求められない場合があるためです(民法708条)。貸した経緯や、貸した後の関係がどうだったかは、後で説明できるよう整理しておくことが大切です。

「貸した」ことを示す記録を集める

 借用書がない場合でも、ほかの記録を組み合わせて貸し借りを示すことができます。セラピストとのやり取りは、店のサイトのメッセージ機能、個人のLINE、SNSのDMなどに分かれていることが多いため、消えてしまう前に保存しておきましょう。

記録の種類示せること保存するときの注意
借用書・メモ金額・日付・返済の約束写真だけでなく原本も保管する
LINE・DMのやり取り「貸して」「必ず返す」などの約束、催促への返事相手がアカウントを消す前にスクリーンショットとトーク履歴を保存する
振込記録・通帳お金が実際に相手に渡ったこと振込先の口座名義を控える
一部返済の記録相手が借りたことを認めていたこと返済された日付と金額を一覧にする
現金で渡した日のメモ渡した日時・場所・金額手帳など当時書いたものがあれば残す


 特に大切なのは、相手が「借りた」「返す」と認めている言葉です。返済を求めた際に「来月には返す」「少し待ってほしい」といった返事があれば、それ自体が貸し借りを裏付ける有力な記録になります。

返済期限を決めていなかった場合と、時効

 返す時期を決めずに貸した場合は、貸した側が相当の期間を定めて返済を求めることで、その期間が過ぎた時点から返済を求められる状態になります(民法591条1項)。いつまでに返してほしいのかを、日付を入れて書面やメッセージで伝えておくと、後の手続の起点がはっきりします。

 貸したお金を返してもらう権利には時効があります。2020年4月1日以降に貸したお金は、返済を求められることを知った時から5年、または返済を求められる時から10年のいずれか早い方が過ぎると、時効によって消滅することがあります(民法166条1項)。時効が近づいている場合でも、内容証明郵便などで請求すれば6か月間は時効の完成が猶予され(民法150条)、相手が借りていることを認めれば時効は改めて進み直します(民法152条)。数年前に貸したお金であっても、まずは貸した時期を確かめてみることが出発点になります。

返してもらうための進め方

 話し合いで解決できそうか、相手の連絡先や住所が分かっているかによって、取れる手段は変わります。一般的には、次のような順序で進めることが多いでしょう。

  1. 相手にメッセージや手紙で、貸した金額と返済期限を示して返済を求めます。
  2. 応じてもらえない場合は、内容証明郵便で請求し、請求した事実と日付を記録に残します。
  3. 返済の約束ができたら、金額・支払日・分割の回数を書いた合意書を作ります。
  4. それでも支払われない場合は、簡易裁判所への支払督促の申立てや、60万円以下であれば少額訴訟を検討します。
  5. 相手が争う場合や金額が大きい場合は通常の訴訟を起こし、判決後も支払われなければ預金や給与の差押え(強制執行)を検討します。


 支払督促は書類の審査だけで進む手続ですが、相手が異議を出すと通常の訴訟に移ります。少額訴訟は原則として1回の期日で審理を終える手続で、記録がそろっている事案に向いています。どの手続が合うかは、相手が借りたことを認めているかどうかによって変わります。

相手の本名や住所が分からないとき

 セラピストは源氏名で活動していることが多く、本名や住所を知らないまま貸していたというケースもよくあります。裁判所の手続を使うには相手の氏名と住所が必要になるため、ここが最初の壁になりがちです。

 弁護士に依頼した場合は、弁護士会照会(弁護士法23条の2)という制度を使い、振込先の口座がある金融機関や携帯電話会社などに、名義人の氏名や住所を問い合わせられることがあります。照会先が回答に応じるかどうかは事案によりますが、振込記録や電話番号が残っていれば手がかりになります。当事務所が扱った事例として、【解決事例】店舗型風俗店のキャストに貸した200万円|LINE履歴と弁護士会照会で回収に至った事例もご覧ください。

店に相談することの意味と限界

 女性用風俗の店のなかには、セラピストと客の金銭の貸し借りや店外での接触を禁止事項としているところもあります。店に事情を伝えることで、店からセラピストに連絡を促してもらえる場合もあるでしょう。

 ただし、セラピストが個人として借りたお金について、店が代わりに返す義務を負うとは限りません。また、店に伝えた内容がそのままセラピスト本人に伝わり、かえって連絡を絶たれることもあります。店に相談するかどうかは、相手の連絡先や記録がどこまでそろっているかを確認してから判断するとよいでしょう。

返済を求めるときに避けたい行動

 返してもらえない状況が続くと、焦りや怒りから強い手段を取りたくなることがあります。しかし、次のような行動は、ご自身が責任を問われたり、話し合いが難しくなったりする原因になりかねません。

  • SNSや口コミサイトに、相手を特定できる形で「お金を返さない」と書き込むこと。
  • 「店や家族に知らせる」と告げて返済を迫ること。
  • 相手の自宅や待機場所の近くで待ち伏せること。
  • 返事がないのに、短い間隔で何度もメッセージや電話を送ること。
  • 「返してもらうため」として、さらにお金を貸したり予約を重ねたりすること。


 貸したお金を返してほしいという請求そのものは正当でも、方法によっては名誉毀損(刑法230条)や脅迫(刑法222条)、恐喝(刑法249条)と受け取られるおそれがあります。また、恋愛感情が背景にある執拗な連絡や待ち伏せは、ストーカー規制法の「つきまとい等」に当たると判断される可能性もあります。請求は、記録が残る落ち着いた方法で行うことが、結果的に回収への近道になります。

「最初から返すつもりがなかったのでは」と感じたとき

 複数の客から同じようにお金を借りていた、貸した直後に連絡が途絶えた、借りる理由として聞かされた話が事実と違っていた、といった事情があると、だまされたのではないかと感じる方もいるでしょう。

 借りた時点で返すつもりも当てもないのに、それを隠して嘘の理由を告げてお金を受け取っていた場合には、詐欺罪(刑法246条)が問題になることがあります。一方で、借りたときは返すつもりがあったものの後で返せなくなったという場合は、民事上の返済の問題にとどまります。この区別は外からは見えにくく、警察に相談しても、まずは民事上の問題として扱われることも少なくありません。考え方は借りた金を返せないと詐欺になるのか|借入時の欺罔の有無やキャストに金銭をだまし取られた|疑似恋愛と詐欺の境界で解説しています。

ご自身の利用が周囲に知られないか心配なとき

 女性用風俗の利用を家族や職場に知られたくないという理由で、返してもらうことをあきらめてしまう方もいます。

 弁護士が代理人になれば、相手との連絡は弁護士が引き受けるため、ご本人が直接やり取りする必要はなくなります。交渉の段階で解決できれば、裁判所の手続を使わずに終えることもできます。

 一方、訴訟を起こすと、訴状にはご本人の氏名や住所を記載するのが原則で、裁判は公開の法廷で行われます。2023年からは、一定の要件を満たす場合に住所や氏名を相手に知られないようにする制度(民事訴訟法133条)も設けられていますが、使える場面は限られます。どの段階まで進めるかは、回収したい金額と、知られることへの不安の大きさを比べながら決めていくことになります。伝わる経路の考え方は【風俗トラブル・女性用風俗】女性客の身バレ|職場・家族に伝わる経路と遮断の順序も参考になります。

弁護士に相談するとできること

 弁護士に相談すると、まず手元の記録から「貸した」と言えるか、贈与や対価と言われるおそれがあるかを見立てます。そのうえで、相手への請求書面の送付、弁護士会照会による相手の特定、合意書の作成、支払督促や訴訟の手続まで、状況に応じて進め方を組み立てます。

 貸した金額が小さい場合には、弁護士費用が回収できる金額を上回ることもあります。相談の段階で、回収の見込みと費用のバランスを確認しておくと、無理のない進め方を選びやすくなります。

よくあるご質問


セラピストが店を辞めて連絡が取れなくなりました。もう返してもらえないのでしょうか。

 店を辞めても、借りたお金を返す義務がなくなるわけではありません。振込先の口座や電話番号、LINEのアカウントなど手がかりが残っていれば、弁護士会照会などで相手を特定できる場合があります。記録は削除せずに保存しておいてください。

今から借用書を書いてもらうことはできますか。

 相手が応じてくれるのであれば、後からでも借用書や返済の合意書を作ることはできます。金額、貸した日、返済の方法と期限、作成日を書き、相手に署名してもらいます。無理に書かせたと受け取られないよう、落ち着いた場で、内容を相手に確認してもらいながら作ることが大切です。

店に代わりに返してもらうことはできますか。

 セラピストが個人として借りたお金については、店が返済の義務を負わないのが一般的です。ただし、店が客からの借入れを勧めていたなど、店自身の関与がうかがわれる事情があれば、店への請求を検討できる場合もあります。

関連する解説記事



 セラピストに貸したお金は、記録の残し方と請求の進め方によって、返してもらえる見込みが変わります。相手と連絡が取りにくくなる前に手元のやり取りを保存し、早めに方針を立てておくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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