無実でも示談すべき?否認と示談のジレンマ
※本記事は、当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。ご依頼者のプライバシーに配慮し、年齢や具体的な状況などの一部を変更しています。
デリバリーヘルスの利用直後、キャストから「無理やりされた」と店舗や警察に訴えられ、その日の夜に警察署からご依頼者の携帯電話に着信があった事案です。ご依頼者は数日後に海外へ戻る予定を控えていたため、当事務所は相談当日の夜から相手方との交渉に入り、ご相談から5日で相手方本人と対面での示談を成立させました。どのような順序で交渉を進めたのか、また同じような状況で押さえておきたい点は何かを、経緯に沿ってご紹介します。
事案の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | 海外を拠点に勤務する既婚の会社員男性(一時帰国中) |
| 相手方 | デリバリーヘルスのキャスト |
| ご相談のきっかけ | 利用直後にキャストが店舗と警察署に相談し、同じ日の夜に警察署から携帯電話に着信があった |
| ご要望 | 刑事事件になることを避け、出国前に円満に解決したい |
| 懸念事項 | 数日後に出国を控えており、出国後は直筆の署名や警察署への出頭が難しくなる |
| 解決金 | 30万円 |
| 解決までの期間 | ご相談から5日 |
利用直後にキャストが警察に相談し、警察署から着信があった
ご依頼者は、海外を拠点に勤務する既婚の会社員男性です。一時帰国中に都内のビジネスホテルでデリバリーヘルスを利用したところ、サービスの途中で、店舗のルールに反する行為があったとしてトラブルになりました。
キャストはサービスを中断して退室し、店舗に連絡を入れました。ご依頼者には性交渉に及んだという認識はありませんでしたが、キャスト側は「何度も断ったのに無理やりされた」と主張し、その日のうちに警察署へ相談したうえで、後日あらためて被害届を提出する意向を示していました。
同じ日の夜、ご依頼者の携帯電話に警察署から着信が入ります。ご依頼者は応答できないまま、相手方からの連絡も続いている状況でした。
ご依頼者には、数日後に海外へ戻らなければならない事情がありました。出国してしまうと、合意書への直筆の署名も、警察署への出頭も難しくなります。刑事事件になることを避け、出国前に解決したいというご希望を持って、ご依頼者はその日の夜に当事務所へご相談くださいました。
当事務所の対応と解決までの流れ
ご相談から解決までの5日間を、日を追って振り返ります。
金曜日の夜|受任し、まず相手方の言い分を聴き取る
金曜日の夜にご相談を受け、当事務所はそのまま受任しました。弁護士はただちにキャスト本人と店舗の責任者に連絡を取っています。この段階では金額を提示せず、相手方がどのような経緯で何を問題にしているのか、今後どうしたいと考えているのかを聴き取ることに努めました。
キャスト側からは、解決金として一定の金額を求める意向と、それに満たない場合は被害届を提出するという意向が示されました。一方、店舗側からは損害賠償を求める意向は示されませんでした。そこで、本件はご依頼者とキャスト本人との二者間で合意する方針を固めました。
月曜日|解決金を打診し、同日中に了承を得る
週明けの月曜日、弁護士はご依頼者の意向を確認したうえで、相手方に解決金30万円を打診し、その日のうちに了承を得ました。あわせて相手方からは、合意書の締結と解決金の受け取りを当事務所で直接行いたいという希望が示されました。
火曜日|合意書の内容を説明し、解決金をお預かりする
翌日、合意書の内容を相手方に説明し、了承を得ました。同時に、ご依頼者から解決金を当事務所の預り金口座にお預かりしています。事前に解決金を預かっておくことで、締結の場で支払いまで終えられる準備が整いました。
水曜日|来所した相手方と対面で合意書を締結する
水曜日、相手方が当事務所に来所しました。身分証明書で本人であることを確認したうえで合意書に署名してもらい、解決金30万円をその場でお渡しして受領証を受け取りました。
あわせて警察署からの着信について確認したところ、被害届は提出されておらず、担当者も決まっていない段階であることが分かりました。こうして、ご相談から5日で、出国前に本件は解決に至りました。ご依頼者は、この間一度も相手方と直接やり取りをしていません。
解決結果と対応のポイント
- キャスト本人との間で、解決金30万円により示談が成立しました。
- 相手方に当事務所へ来所いただき、身分証明書で本人確認をしたうえで対面で締結しました。
- 被害届が提出される前に示談が成立し、出国前に解決できました。
- ご相談から5日で、合意書の締結と解決金の支払いまで完了しました。
- 当事務所が介入した後、ご依頼者が相手方と直接やり取りする場面はありませんでした。
担当弁護士からのコメント
警察に相談されていても、示談交渉の余地はあります
まず前提として、風俗店での本番行為は店舗のルールに反する行為であり、行うべきではありません。
そのうえで申し上げると、相手方がすでに警察に相談していたり、警察署から着信があったりしても、それだけで示談交渉ができなくなるわけではありません。被害届が出される前に示談が成立すれば、刑事手続に進まずに終わる可能性がありますし、仮に手続が進んだ場合でも、示談が成立していることは処分を判断する際に考慮される事情の一つになり得ます。
ただし、相手方が主張しているような性犯罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪とされています。示談が成立したからといって、捜査の可能性が完全になくなるとまではいえない点には注意が必要です。警察からの連絡にどう応じるかも含めて、弁護士と相談しながら判断していくことが大切です。
早期解決の鍵は初動の速さでした
本件で重視したのは、初動の速さです。相手方の主張を聴き取り、店舗が関与しない見通しを立て、当事者を絞り込んだうえで金額を提示する。この流れを相談当日の夜から週明けにかけて途切れずに進めたことが、出国前の解決につながりました。
時間が経つと、相手方の態度が硬くなったり、周囲の助言によって要求の内容が変わったりすることがあります。また、日程に制約がある場合は、解決金の準備や合意書の作成といった手続にも余裕がなくなりがちです。交渉と並行して、締結の段取りまで先回りして整えておくことが、限られた期間で解決するうえで意味を持ちます。
対面での締結を希望された場合の進め方
本件のように、相手方が対面での締結を希望されることもあります。当事務所に来所いただく形にすれば、身分証明書で本人確認をしたうえで締結でき、解決金の受け渡しも受領証とともに記録に残せます。ご依頼者が相手方と顔を合わせる必要はありません。
一般に、この種の合意書では、解決金の額と支払方法のほか、被害届を提出しない旨や、本件について今後互いに請求しない旨(清算条項)などを定めることが多くあります。どの条項を入れるかは事案によって異なるため、相手方の主張や今後の見通しを踏まえて検討します。
当事者同士のやり取りでは、相手方のペースで話が進んでしまうことが少なくありません。弁護士が窓口になることで、ご本人が相手方と向き合わずに済み、事実関係を整理したうえで書面に基づいた解決を図れる場合があります。風俗店の利用をめぐって警察から連絡を受けた方や、日程の制約があるなかで早い解決を望まれる方は、一人で抱え込まずにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


