資格・免許はどうなるのか|医師・看護師・教員・宅建・運転免許の欠格事由の読み方

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

「逮捕された」と聞いたとき、多くの方が最初に心配されるのは、これまで積み上げてきた資格や免許を失うのではないか、という点です。医師、看護師、教員、宅地建物取引士、そして運転免許。いずれも生活の土台に直結します。

 結論から申し上げると、逮捕そのものによって資格が失われる仕組みは、原則として置かれていません。資格を左右するのは、その後どのような処分で終わったのかです。ただし、資格ごとに「どの処分から反応するのか」も「自動的に失うのか、判断が入るのか」も異なります。

 この記事では、欠格事由の条文を読むための考え方を5つの問いに整理したうえで、代表的な5つの資格・免許を順に見ていきます。

逮捕された段階では、まだ欠格事由に触れていない


多くの欠格事由は「刑に処せられた者」と書かれている


 資格に関する法律には、たいてい「欠格事由」という条文が置かれています。免許を与えない、あるいは与えないことがある事情を並べたものです。

 その多くは、「拘禁刑以上の刑に処せられた者」「罰金以上の刑に処せられた者」という書き方をしています。ここでいう「処せられた」とは、有罪の判決を受け、それが確定したことを意味します。

 逮捕は捜査の一場面にすぎません。その先に起訴されるかどうかも、有罪になるかどうかも、まだ決まっていません。したがって、逮捕されたという事実だけで欠格事由に当てはまることは、原則としてありません。この点は、上位に表示される法律事務所のページでも、おおむね共通した説明になっています。

それでも、逮捕や起訴の段階で動き出すものはある


 もっとも、資格が残ることと、働き続けられることは同じではありません。

 身体を拘束されれば出勤できず、勤務先の就業規則に基づく判断が先に動くことがあります。公務員には、起訴された段階で職務から離れる起訴休職の制度があります(国家公務員法79条2号、地方公務員法28条2項2号)。後述するとおり、運転免許のように、判決を待たずに効力が止まる仕組みを持つものもあります。

 「資格そのものを失うか」と「いま仕事にどう響くか」は、いったん切り分けて考えたほうが、状況を整理しやすくなります。

欠格事由を読むための5つの問い


 ご自身の資格の条文を確認するときは、次の順番で見ていくと迷いにくくなります。

  1. 何に反応する条文か——逮捕か、起訴か、有罪の確定か
  2. どの重さから反応するか——拘禁刑以上か、罰金以上か、特定の罪の罰金か
  3. 自動なのか、判断が入るのか——「与えない」か「与えないことがある」か
  4. いつまで続くのか——執行が終わってから何年か、刑の言渡しの効力が消えるまでか
  5. 刑罰以外のルートはないか——懲戒処分、行政処分、届出義務


②どの重さから反応するか


 ここが資格によって最も分かれるところです。おおまかには、拘禁刑以上でなければ反応しない資格と、罰金でも反応する資格があります。さらに、特定の罪に限って罰金でも反応する、という作りの資格もあります。

 なお、2025年6月1日に施行された刑法の改正により、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。これに伴い、各資格法の欠格条項も「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」という表記に改められています。施行前に確定した刑の扱いについては経過措置が設けられており、施行をはさんで当てはまり方が変わる趣旨のものではありません。インターネット上には旧表記のまま更新されていない解説も残っているため、条文を確認する際は注意が必要です。

③自動なのか、判断が入るのか


 条文の語尾に注目してください。

 「与えない」「なることができない」と書かれていれば、該当した時点でその効果が生じます。これを絶対的欠格事由と呼びます。一方、「与えないことがある」と書かれていれば、該当したことが直ちに資格の喪失につながるわけではなく、行政庁の判断が入ります。相対的欠格事由と呼ばれるものです。

 医師や看護師は後者にあたります。「罰金以上」という一見厳しい基準が置かれている一方で、そこから先に審議の手続が用意されている、という構造になっています。

④いつまで続くのか


 期間の書き方にも二通りあります。

 ひとつは「執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から○年を経過しない者」という型です。宅地建物取引士の5年がこれにあたります。もうひとつは、年数を書かずに「刑に処せられた者」とだけ定める型で、この場合は刑の言渡しの効力が消えるまで、という意味になります。

 刑の言渡しの効力は、執行猶予であれば猶予期間を無事に経過したとき(刑法27条)、実刑や罰金であれば執行を終えてから一定期間、罰金以上の刑に処せられずに経過したとき(刑法34条の2)に失われます。裏を返せば、執行猶予の期間中は「刑に処せられた者」に当たったままだということです。

⑤刑罰以外のルートはないか


 見落とされやすいのが、この5つ目です。

 刑事処分とは別に、勤務先の懲戒処分を起点として資格を失う仕組みを持つ資格があります。刑罰ではなく行政処分の系統で判断される免許もあります。さらに、欠格事由に該当したことを本人が届け出なければならない資格もあります。刑事事件が不起訴で終わっても、これらの系統が独立して動くことがある、という点は押さえておく必要があります。

医師・看護師の場合


「罰金以上」で対象になるが、処分は自動ではない


 医師法4条は、免許を「与えないことがある」場合として、3号に罰金以上の刑に処せられた者、4号に医事に関し犯罪または不正の行為のあった者を挙げています。すでに免許を持っている方については、同法7条1項により、厚生労働大臣が①戒告、②3年以内の医業の停止、③免許の取消しのいずれかの処分をすることができるとされています。

 看護師も同じ構造です。保健師助産師看護師法9条1号が罰金以上の刑に処せられた者、2号が業務に関し犯罪または不正の行為があった者を挙げ、同法14条1項が戒告、3年以内の業務の停止、免許の取消しを定めています。

 いずれも、罰金という比較的軽い刑でも入口に立つ一方、そこから先は一律ではありません。処分にあたっては、あらかじめ医道審議会の意見を聴くこととされています(医師法7条3項、保健師助産師看護師法15条)。看護職については、同審議会の保健師助産師看護師分科会看護倫理部会が担当します。行政処分に至らず、行政指導にとどまる例もあります。

有罪が確定すると、情報は届く仕組みになっている


 厚生労働省は、罰金以上の刑に処せられた医師・歯科医師について、法務省から情報提供を受ける体制を設けていることを公表しています。つまり、罰金であっても、略式命令であっても、執行猶予がついていても、有罪が確定すれば行政処分を検討する手続に乗る、という前提で考えておく必要があります。

 処分の考え方については、医道審議会医道分科会が「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方」を公表しており、司法処分の量刑が参考にされることや、医療に関する法令違反が重く評価されることなどが示されています。

取消しになった場合の再免許


 免許の取消しは、永久に資格を失うことを意味するわけではありません。医師法7条2項は、その後の事情により再び免許を与えるのが適当と認められるに至ったときは再免許を与えることができるとしています。ただし、罰金以上の刑に処せられたことなどを理由とする取消しについては、処分の日から起算して5年を経過しないと再免許は与えられません。看護師についても同趣旨の定めがあります(保健師助産師看護師法14条3項)。

教員の場合


拘禁刑以上で、免許は効力を失う


 学校教育法9条1号は、拘禁刑以上の刑に処せられた者は校長または教員となることができないと定めています。医師や看護師と違い、「なることができない」という書き方であり、行政庁の判断が入る余地はありません。

 あわせて、教育職員免許法5条1項3号が同じ基準を免許状の授与について定め、同法10条1項1号により、これに該当するに至ったときは免許状そのものが効力を失います。公立学校の教員であれば、地方公務員法16条1号と28条4項により、地方公務員としての身分も失われます。

 基準は拘禁刑以上ですので、罰金にとどまった場合は、この条文には当たりません。執行猶予がついた場合は当たります。

罰金や不起訴でも、免許を失う経路が残っている


 教員に特徴的なのは、刑罰とは別の入口が用意されている点です。

 教育職員免許法10条1項2号は、公立学校の教員が懲戒免職の処分を受けたときにも免許状が失効すると定めています。国立・私立の教員についても、懲戒免職に相当する事由による解雇と認められるときは、同法11条により免許状の取上げの対象となります。懲戒処分は刑事処分とは別の判断ですから、刑事事件が罰金や不起訴で終わっても、この経路は残ります

児童生徒への性暴力等は、別の枠組みが重なる


 2022年4月に施行された教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律により、児童生徒性暴力等を理由に免許状を失効・取上げとなった方の再授与には、特別の審査が置かれました。同法22条は、改善更生の状況その他その後の事情により再び免許状を授与するのが適当と認められる場合に限る、と定めています。授与権者は、都道府県教育職員免許状再授与審査会の意見を聴くこととされています(同法23条)。

 また、同法15条に基づく国のデータベースが2023年4月から稼働しており、教員を任命・雇用しようとする者にはその活用が義務づけられています。文部科学省は2026年に入ってからも、データベースの活用徹底や基本指針の改訂について通知を出しています。

 保育士についても、児童福祉法に同様の考え方が取り入れられており、欠格期間は3年、児童生徒性暴力等を理由とする登録取消しの場合には再登録の審査とデータベースが用意されています。こども関連の資格は、一般の欠格事由とは別のレイヤーが重なっているとお考えください。

宅地建物取引士の場合


拘禁刑以上は5年、特定の罪は罰金でも5年


 宅地建物取引業法18条1項は、宅地建物取引士の登録を受けられない場合を列挙しています。刑罰に関するものは2つです。

 6号は、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。7号は、同法や暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反した場合、または刑法の傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合等、脅迫、背任の各罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯した場合について、罰金の刑でも5年としています。

 つまり、罰金であっても罪名によって扱いが変わる、という作りです。同じ罰金でも該当するものと該当しないものがある点は、条文を実際に確認しておく価値があります。

本人に30日以内の届出義務がある


 もうひとつ見落とされやすいのが届出です。同法21条2号は、登録を受けている方が18条1項1号から8号までに該当することとなった場合、本人がその日から30日以内に、登録をしている都道府県知事へ届け出なければならないと定めています。届出があれば登録は消除され、届出がなくても知事が事実を把握すれば職権で消除されます。

 「黙っていれば分からない」という発想が成り立たない仕組みである以上、期限を意識した対応が必要になります。

運転免許の場合——ここだけ仕組みが違う


刑事処分と行政処分は、別々に進む


 運転免許は、これまで見てきた資格とは考え方が異なります。免許の取消しや停止を判断するのは裁判所ではなく、公安委員会です(道路交通法103条1項)。刑事手続とは別系統で進むため、刑事事件が不起訴で終わっても、行政処分が行われることはあります。逆に、有罪になったからといって、それだけで取消しが決まるわけでもありません。

 この点は、「前科がつかなければ資格は守られる」という説明が、運転免許についてはそのまま当てはまらないことを意味します。

取消しは点数で決まり、欠格期間は最長10年


 行政処分の実体は点数制度です。累積点数が6点に達すると停止の対象となり、取消しに至った場合には1年以上の欠格期間、すなわち免許を受けることができない期間が指定されます。

 危険運転致死傷、酒酔い運転、麻薬等運転、救護義務違反、妨害運転(著しい交通の危険)は特定違反行為とされ、欠格期間は最長10年に及びます。妨害運転(交通の危険のおそれ)、一定の数値以上の酒気帯び運転、無免許運転などは25点とされ、2年の取消しとなります。

 なお、取消しや90日以上の停止をしようとするときは、意見の聴取の手続が用意されています(同法104条)。

判決を待たずに止まることがある


 同法103条の2は、仮停止の制度を定めています。交通事故を起こして人を死傷させ、救護義務違反などがあった場合や、酒酔い運転などによって死傷事故を起こした場合には、事故の発生地を管轄する警察署長が、事故を起こした日から起算して30日を経過する日を終期とする免許の停止をすることができます。

 裁判の結論が出るのを待たずに効力が止まる場面がある、という点で、他の資格とは大きく異なる仕組みです。

5つを並べて比べる


資格・免許反応する刑条文の書き方期間の考え方
医師罰金以上与えないことがある刑の言渡しの効力が消えるまで/取消しの場合は処分から5年
看護師・保健師・助産師罰金以上与えないことがある同上
校長・教員拘禁刑以上なることができない刑の言渡しの効力が消えるまで
宅地建物取引士拘禁刑以上/特定の罪は罰金でも登録を受けることができない執行終了等から5年
運転免許刑罰ではなく点数で判断——取消しの場合は1年以上、最長10年


 同じ「資格を失うかもしれない」という不安でも、反応する刑の重さも、判断の入り方も、期間の数え方も、これだけ違います。ご自身の資格については、所管の官公庁や都道府県のページに欠格事由が掲載されていることが多いので、一次情報にあたってみてください。

よくある誤解


  • 「略式命令なら前科にならない」——略式命令も有罪の確定であり、前科として扱われます
  • 「執行猶予がつけば欠格にならない」——猶予期間中は「刑に処せられた者」に当たります
  • 「逮捕された時点で免許が取り消される」——逮捕は捜査の段階であり、免許の効力とは別です
  • 「不起訴なら資格の話は終わり」——多くの資格ではそのとおりですが、条文が有罪の確定を要件としていない場合や、懲戒・行政処分の系統が独立して残る場合があります
  • 「資格を失ったら二度と戻れない」——期間の経過や、再免許・再授与・再登録の制度が用意されている資格もあります


処分が決まる前に確認しておきたいこと


  1. ご自身の資格の根拠条文を特定する。所管官庁や都道府県のページに欠格事由が掲載されていることが多く、5つの問いに沿って読めば見通しが立ちやすくなります
  2. 届出義務の有無と期限を確認する。宅地建物取引士のように、本人に30日以内の届出義務が課されている資格があります
  3. 資格への影響を前提に、刑事手続の見通しを弁護人と共有する。どの処分で終わるかが分岐点になる以上、資格の条文を早い段階で共有しておく意味があります
  4. 勤務先への説明の順序とタイミングを決めておく。資格の問題と雇用の問題は別に進むため、それぞれに対応が必要になります


 多くの資格では、有罪が確定するかどうかが分岐点になります。そのため、処分が決まる前の時期は、資格との関係では選択肢が比較的多い段階だといえます。もっとも、刑事手続の結果を弁護人が約束できるものではありませんし、被害のある事件であれば、まず被害への向き合い方が問われます。資格を守ることだけを目的に据えた対応は、かえって評価を悪くすることもあります。

まとめ


 逮捕されたことそのものが欠格事由になる仕組みは、原則としてありません。実際に資格を左右するのは、どのような処分で終わったのか、そしてその資格の条文がどのように書かれているかです。

 医師や看護師は罰金以上で対象になるものの判断が入り、教員は拘禁刑以上で自動的に効力を失う一方で懲戒処分という別の入口があり、宅地建物取引士は5年という年数と届出義務が定められ、運転免許は刑事処分とは別の系統で判断される。同じ「資格」という言葉でも、中身はこれだけ違います。

 まずはご自身の資格の条文を、5つの問いに沿って読んでみてください。そのうえで、判断に迷う点があれば、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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