メンズエステの美人局の手口5選と「サインしてはいけない書面」
風俗店やキャストとのトラブルで弁護士に相談すると、依頼するかどうかを決める前に費用の見積書を受け取ることがあります。ところが、見慣れない書面であるうえに、その場では金額の大きさばかりが目に入り、どこを確かめればよいのか分からないまま話が進んでしまうことも少なくありません。
この記事では、風俗トラブルで受け取る見積書について、金額の高い安い以外に確認しておきたい項目を整理します。なお、ここで扱うのは弁護士に支払う費用の話です。店やキャストに支払う示談金や違約金は別の枠組みで動くため、後半で切り分けて説明します。
見積書は「出してほしい」と伝えてよい
日本弁護士連合会の「弁護士の報酬に関する規程」は、法律事務を依頼しようとする人から申し出があったときは、その内容に応じた報酬見積書の作成と交付に努めることを弁護士に求めています。裏を返せば、申し出がないまま話が進むと、書面の形にならないこともあるということです。
相談の場で「おおよそ◯十万円くらいです」と口頭で聞いただけの状態は、まだ見積りとは言いにくい段階です。金額を聞きづらいと感じる方は多いのですが、見積書を求めること自体は、想定されている手続きです。
見積書と委任契約書は別のもの
同じ規程は、受任したときには委任契約書を作成することを弁護士に求め、契約書に記載する事項も定めています。
- 受任する法律事務の表示および範囲。
- 弁護士報酬の種類、金額、算定方法および支払時期。
- 委任事務が終了するまで委任契約を解除できること。
- 契約が中途で終了した場合の清算方法。
一方で、見積書のほうには、こうした記載事項の定めがありません。そのため、見積書を確認する作業は、後で契約書に書かれることになる項目を先に確かめておく作業だと考えると分かりやすくなります。署名の前に見積書と契約書を並べて見比べておけば、食い違いにも気づけます。
金額より先に「範囲」を読む
同じ「五十万円」という記載でも、そこに含まれている仕事の中身が違えば、比べても意味がありません。見積書を開いたら、金額欄より先に、何をいつまで引き受けるかが書かれた部分を読みます。
一つの出来事が複数の依頼に分かれやすい
風俗トラブルでは、店から違約金を請求されている状況と、キャストが被害届を出して警察から呼び出しを受けている状況が、同時に進むことがあります。当事者から見れば一つの出来事ですが、弁護士がする仕事としては別のものです。見積書がそのうちのどれを対象にしているのかは、必ずしも明確に書かれているとは限りません。
| 依頼の中身 | 見積書での書かれ方の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 店やキャストからの金銭請求への対応 | 損害賠償請求に対する交渉 | 交渉が決裂した後まで含むか |
| 被害届が出た後の捜査対応 | 刑事弁護(起訴前) | 取調べの同行や出頭日の調整を含むか |
| 相手方との示談交渉 | 被害者との示談交渉 | 相手方が複数いるときの扱い |
| すでに払った金銭の返還請求 | 返還請求の交渉 | 交渉のみか、裁判手続まで含むか |
たとえば、店への支払いを止める交渉を依頼したつもりでいたところ、見積書の対象は刑事手続への対応だけだった、という行き違いは起こり得ます。心配している事柄をそのまま口に出して、それはこの見積りに入っているのかと一つずつ確認するのが確実です。
段階が変わると契約も変わる
風俗トラブルは、途中で局面が変わりやすい類型です。見積書は、その時点で見えている段階を前提に作られています。
交渉から裁判上の手続に移ったとき
かつて弁護士会が定めていた報酬基準には、裁判外の事件が裁判上の事件に移ったときは別の件として扱う、という整理がありました。この基準は二〇〇四年に廃止されていますが、考え方自体は今も多くの事務所の料金体系に残っています。
実際、交渉だけを依頼した場合は、まとまらずに訴訟へ進む段階で追加の着手金が必要になると明記している事務所もあれば、初めから裁判手続まで含めて契約する事務所もあります。どちらが良いという話ではなく、自分が受け取った見積書がどちらの型なのかを知っておくことが大切です。
在宅のまま進む場合と身柄を押さえられた場合
呼び出しを受けながら自宅で生活している状態と、逮捕されて身柄を拘束されている状態とでは、弁護士の動き方も、必要になる回数も変わります。在宅の状態で作られた見積書が、身柄を拘束された場合の対応まで見込んでいるとは限りません。
起訴の前と後
起訴された後の対応については、扱いが事務所によって分かれます。あらためて別の契約を結ぶところ、起訴前から依頼を受けていた場合は減額して引き受けるところ、追加の着手金を求めないところがあります。控訴する場合は、さらに別の依頼として扱われるのが一般的です。
したがって、見積書を受け取ったときは、この見積りはどの段階までを対象にしているのか、次の段階に進んだ場合はどうなるのかを確認しておくと、後から慌てずに済みます。目安の金額まで書き添えてもらえれば、なお分かりやすくなります。
相手方が複数になる場合
店とキャストは、法律上は別の相手です。店に支払ったことが、そのままキャスト本人との清算になるとは限りません。そのため、示談の相手方が二者になったり、関係する人が増えたりすることがあります。
見積書の段階では相手方が一人として想定されていることが多いので、相手が増えたときに費用がどう変わるのかは、あらかじめ聞いておきたい点です。相手方の数に応じて加算する事務所もあれば、一つの事件としてまとめて扱う事務所もあります。
「成功報酬」の成功が何を指しているか
見積書のうち、後から認識のずれが起きやすいのが報酬金の欄です。着手金は依頼の時点で金額が確定しますが、報酬金は結果によって変わるため、書面上は計算式や条件の形で書かれます。
請求されている側は「減らせた額」が基準になりやすい
金銭を請求されている立場では、報酬金の計算の出発点が、相手方の言い値になることがあります。たとえば三百万円を請求されていた事案が五十万円で解決した場合、差額の二百五十万円を基準に計算するのか、それとは別の定額とするのかで、金額は大きく変わります。
請求書に書かれた金額が、そのまま支払義務のある金額とは限りません。だからこそ、何を出発点として引き算するのかは、見積書の段階で確かめておく価値があります。自分の事案の数字を当てはめて計算してもらうのが、いちばん分かりやすい方法です。
刑事の成果は積み上げ式になりやすい
刑事手続への対応では、身柄の解放、示談の成立、不起訴といった成果ごとに報酬金を設定する形がよく使われます。項目が複数あると、それぞれが加算されて総額が動きます。
| 報酬金の決め方 | 見積書での表れ方 | 確認したい質問 |
|---|---|---|
| 減らせた額に連動する型 | 減額分の一定割合 | 何を出発点として引き算するのか |
| 結果ごとの定額を積む型 | 示談成立、不起訴などの項目別 | 複数の成果が重なったときは合算か |
| 最低額を定める型 | 着手金と同額を下限とする | 成果が小さいときも下限が適用されるか |
見積書は結果の約束ではない
弁護士職務基本規程は、依頼者に有利な結果となることを請け合ったり保証したりすることを弁護士に禁じています。見積書に「不起訴となった場合」といった条件が書かれていても、それはその結果を約束したものではなく、報酬が発生する条件を示したものです。見通しについては、条件の書きぶりとは別に、言葉で説明を受けておくほうがよいでしょう。
見積書に書かれにくい費用
着手金と報酬金の欄は目に入りやすい一方で、次のような費用は、欄が小さかったり「別途」とだけ書かれていたりします。
- 接見の費用。回数にかかわらず着手金に含めている事務所と、一回ごとに定めている事務所があります。
- 出張日当。遠方の警察署や、出張先でトラブルになった場合に関わってきます。
- 実費。交通費、郵送費、記録の取り寄せ費用などです。
- 時間外や休日の対応。緊急時に連絡が取れるかどうかとあわせて確認しておきたい点です。
- 消費税。表示が税込みか税別かで、総額の印象が変わります。
連絡方法の希望も伝えておく
家族に知られたくない、平日の日中は連絡が取りづらいといった事情は、費用そのものというより進め方の問題ですが、書類の送付先や連絡手段に関わります。見積りの話をする場面は、こうした希望を伝える機会でもあります。
弁護士費用ではないお金
見積書に載るのは、弁護士に支払う費用です。相手方に支払う示談金や違約金、慰謝料は、これとは別の枠で動きます。身柄の解放のために保釈保証金が必要になる場合も、同じく別枠です。
つまり、全部でいくら用意すればよいのかは、見積書だけでは決まりません。相手方に支払う可能性のある金額の見込みについては、見積書とは別に説明を受け、資金の準備をどう組み立てるかを一緒に考えてもらうことになります。金額の妥当性そのものは、また別の論点です。
受け取った見積書でする五つの確認
その場で全部を判断するのは難しいので、次の点だけでも押さえておくと、後で読み返したときに意味が分かります。
- 対象となっている事件の範囲と、いつまでの活動を含むかが書かれているか。
- 次の段階に進んだときに、追加の費用が生じるかどうかと、その目安。
- 報酬金の計算の出発点と、自分の事案に当てはめた場合のおおよその金額。
- 接見、日当、実費、消費税の扱い。
- 支払いの時期と方法、中途で終わった場合の清算の考え方。
複数の事務所を比べるときは、同じ範囲、同じ段階で並べることが前提になります。範囲の違う見積書を金額だけで比べると、安く見えたほうが後から積み上がる、ということが起こり得ます。
金額に折り合いがつかないとき
その場で結論を出す必要はありません。持ち帰って考えたいと伝えても差し支えありませんし、支払時期を分けられないか、依頼する範囲を絞れないかといった相談も、費用の話の一部です。
依頼した後に費用をめぐって話がまとまらなくなった場合には、弁護士会に紛議調停を申し立てるという方法もあります。弁護士法に定められた手続で、費用のトラブルについて話し合いの場を設けるものです。
おわりに
風俗トラブルの費用が読みにくいのは、金額が特別だからではなく、一つの出来事が民事と刑事にまたがり、途中で段階が変わりやすいという事情によるものです。見積書は、その時点で見えている範囲を前提に作られた書面ですから、範囲と段階を確かめておけば、後から金額が動いたときにも理由が分かります。
言いにくいことを尋ねる場面ではありますが、費用について質問を受けることは、弁護士の側にとっても想定されていることです。分からない欄はそのまま尋ねて、納得したうえで判断していただければと思います。


