用途発明
プロシード国際特許商標事務所の鈴木康介です。
共同研究プロジェクトの成果を共同出願することがあります。
「お互いの信頼関係に基づいて、共同研究プロジェクトの成果は共同出願しましょう。詳しいことは成果が出てから」と現場では話し合うことも多いと思います。
これはこれで美しい世界なのですが、きちんと取り決めをしておかないと将来問題になるケースがあります。
そして、この取り決めは共同研究プロジェクトが始まる前にしておいた方が良いです。
一般に失敗した共同研究プロジェクトはお互いに反省点がありますが、トラブルになることは少ないと聞いています(失敗したプロジェクトの問題は特許事務所に相談に来るケースはほとんどないので……)。
一方共同研究プロジェクトが成功した場合には、トラブルになるケースが多いという印象があります(特許事務所に相談に来るケースはほとんどが成功後です)。
共同研究プロジェクトがうまく行くと、その先のビジネスをどうしていくかという問題が発生します。
当然、お互いに自社の利益のために、この共同研究プロジェクトの成果をどう使うか考えます。
その時に一見平等に見える共同出願をしましょうという話が出てきます。
例えば、特許出願に慣れている方が、
「費用は折半で、面倒だと思うので、うちが事務所とのやり取りをやっておきますよ。
いい権利を取っておきますよ」
といったようなこと言うかもしれません。
共同出願をした場合、例えば、ライセンスの制限や譲渡の制限など様々な制限があります(特許法33条や、38条や、73条や、132条など)。
これを理解していないと自社にとって不利な特許出願をされるかもしれません。
共同出願ですと、自社では自由に実施できますが、ライセンスを許諾するときに、他の権利者の許諾が必要になります。
例えば、部材メーカAとセットメーカBが部材Cの特許権を取得したとします。
この場合、部材メーカAは自由にその発明を実施できます。
つまり、特許権にかかる部材Cを自由に製造できます。
しかし、セットメーカBが自社でその部材を作ること能力がなく、他の部材メーカにその部材Cを作らせようとしても、部材メーカAの許諾が必要になります。
部材メーカAとしては、共同開発した部材Cですので、自社が製造した部材CをセットメーカBに購入してもらいたいと考えるのが普通です。
このため、セットメーカBは、部材Cを使う場合には、部材メーカAへの交渉力が弱くなってしまいます。
一方、共同出願の成果の特許権が最終製品Dだった場合、セットメーカBは、自由に製品Dを製造できます。
しかし、部材メーカAが部材を他のセットメーカに販売し、他のセットメーカが特許権に抵触するような最終製品D’を製造した場合、セットメーカBによって権利行使されるリスクがあります。
こうなると部材メーカAは、製品D用の部材の売り先がセットメーカB だけになるため、セットメーカBに対して不利になります。
それ以外にも、年金の管理の責任がどうするか、一方が権利を不要になった時の取り扱いなど考えなければならない点がいくつもあります。
ビジネスになるとわかると、なかなか譲れない点も出てくるため、共同プロジェクト開始前や、遅くとも成果が出る前のフラットな状態で双方が納得いくような条件で合意を結ぶことをお勧めします。
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