「共通言語」がない組織の末路【コンサルの視点14】

前回のコラムでは、「社歌はなぜ有効なのか」について書きました。
今回はもう少し視点を広げて、音楽そのものが組織に与える影響について考えてみたいと思います。
私は経営コンサルタントであると同時に、長年オーケストラでホルンを演奏してきました。
その経験から感じるのは、音楽には人と人をつなぐ不思議な力があるということです。
例えば、オーケストラにはさまざまな人がいます。
年齢も職業も価値観も違う。
普段なら接点のない人たちが集まり、一つの音楽を作ります。
そのとき必要なのは、全員が同じ考えを持つことではありません。
むしろ違いがあることが前提です。
それでも、一つの楽曲を演奏するためには、
どんな音楽を目指すのか。
どこで盛り上がるのか。
どこで支えるのか。
そうした方向性を共有する必要があります。
これは組織にもよく似ています。
会社にもさまざまな人がいます。
営業、製造、事務、管理職。
立場も役割も違います。
しかし、目指す方向が共有されていれば、それぞれが自分の役割を果たしながら一つの成果を生み出すことができます。
音楽には、その「共有」を助ける力があります。
なぜなら、音楽は理屈だけではなく、感情に働きかけるからです。
経営理念を読んで理解することはできます。
しかし、理解しただけでは行動は変わりません。
人が動くためには、納得や共感が必要です。
音楽は、その共感を生み出しやすい媒体なのです。
また、音楽には記憶を呼び起こす力もあります。
ある曲を聴いた瞬間に、昔の出来事を思い出した経験がある方も多いでしょう。
これは企業においても同じです。
自分たちの歴史や想いが音楽として残ることで、その会社らしさを思い出すきっかけになります。
そして何より、音楽は「一緒に体験できる」という特徴があります。
会議資料は一人で読むことができます。
理念集も一人で読むことができます。
しかし音楽は、同じ時間に同じものを聴き、同じ空気を共有することができます。
そこに、一体感が生まれます。
私は、経営において最も難しいことの一つは、「人の気持ちを揃えること」だと思っています。
制度を作ることはできます。
ルールを決めることもできます。
しかし、気持ちを命令することはできません。
だからこそ、感情に働きかける手段が必要になります。
音楽は、そのための有効な方法の一つです。
もちろん、音楽さえあれば組織が良くなるわけではありません。
理念も必要です。
戦略も必要です。
仕組みも必要です。
しかし、それらを人に届けるための「温度」を持たせることはできます。
私はよく、
「理念は理解されるだけでは不十分である」
とお話ししています。
理念が本当に組織の力になるためには、理解を超えて共感されなければなりません。
音楽は、その橋渡しをしてくれる存在なのです。
次回は、「理念を口ずさめるとはどういう状態なのか」について考えてみたいと思います。


