「戦略」が現場に落ちない理由【コンサルの視点11】

会社には、さまざまな立場の人がいます。
経営者。
管理職。
現場担当者。
それぞれ見ている景色も、抱えている課題も違います。
本来であれば、それらの違いを乗り越えて、一つの方向に進んでいく必要があります。
そのために欠かせないのが、「共通言語」です。
共通言語とは、単なる専門用語ではありません。
この会社は何を大切にしているのか。
何を優先して判断するのか。
どこを目指しているのか。
そうした価値観や判断基準を共有するための言葉です。
ところが、この共通言語がない組織では、少しずつ問題が起き始めます。
例えば、同じ言葉を使っていても意味が違う。
「お客様第一」と言っても、
ある人は品質向上を思い浮かべ、
ある人は迅速対応を思い浮かべ、
またある人は価格対応を思い浮かべる。
どれも間違いではありません。
しかし、解釈が揃っていなければ、行動はバラバラになります。
また、部署ごとに独自の価値観が生まれることもあります。
営業は営業の論理。
製造は製造の論理。
経理は経理の論理。
それぞれが最適化を進めた結果、全体としては噛み合わなくなっていく。
こうなると、会議のたびに説明が必要になります。
判断に時間がかかる。
認識のズレが増える。
小さな摩擦が積み重なる。
やがて、「話が通じない」という感覚が組織の中に広がっていきます。
さらに深刻なのは、人が増えたときです。
創業期や少人数の頃は、共通言語がなくても何とか回ります。
同じ空間で働き、同じ経験を共有しているからです。
しかし、組織が大きくなると、それだけでは足りません。
新しく入った人は、過去を知りません。
なぜその判断をするのか。
なぜその文化があるのか。
説明する言葉がなければ、理解も継承もできなくなります。
結果として、組織は少しずつ分断されていきます。
では、どうすればいいのでしょうか。
共通言語は、立派な標語から生まれるわけではありません。
日々の会話の中で使われる言葉。
会議で繰り返し確認される言葉。
判断の基準として引用される言葉。
そうした積み重ねの中で育っていきます。
だからこそ、理念やビジョンも、掲げるだけでは足りません。
社員が自然に口にする。
判断に迷ったときに思い出す。
その状態になって初めて、共通言語として機能します。
組織は、人の集まりです。
そして人は、言葉によってつながります。
共通言語がない組織は、静かにバラバラになっていきます。
逆に言えば、共通言語がある組織は、変化の中でも同じ方向を向き続けることができるのです。


