充電式バッテリーを内蔵したデバイスや機器の正しい使い方と寿命を延ばす5つの方法
●前回は「消耗・劣化」について解説いたしました。
"パソコン、タブレットなどIT機器が故障する原因で多いのは「消耗」や「劣化」、その実態とは?"
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4008386
原因がはっきりしないはありえない
●ITサポートの現場では、はっきりとしたトラブル原因がわからなかったり本来壊れにくい、あるいは壊れないところが原因になっている事例に遭遇することがあります。前回も言いましたがパソコン・タブレットも機械ですから壊れるのは当然ですが、原因がはっきりしない自然故障というのはサポートする側もユーザーにとっても容認しにくいものです。
●しかし事実、実際にはそのような故障事例があるのが現実なのですが、私のような技術屋としてはユーザーへ納得のいく説明ができる仕事を提供するためにも、検証を怠るわけにはいきません。プロとしても原因が「わからない」では済ますわけにはいきません。
●物事には因果律というものがありますので原因がない事象というのは絶対にありえません。そんなことがあればそれはオカルトの領域です。しかし、「これはオカルトです」とユーザーに返答するのはプロとしてもあり得ません。そうでなくても今後、同じような事例に遭遇する可能性もあるのでできる限りの検証と追及は必要です。
●今回はそのような不思議な「自然故障」について解説したいと思います。
自然に壊れるとはどう言うことなのか?
●パソコンやタブレットが自然に壊れるということが果たしてあるのでしょうか?メーカーの保証書などには、「故意や過失などの場合は保証の対象になりません」と明記されています。では、どんな場合だったら保証してくれるんだ?と言いたくなりますよね。
●そこで、保証対象内容として取説や保証書に記載されているのが「自然故障」です。
●「自然故障って、自然に故障するようなものを売るなよ!」といいたくなりますが、何度も言うように人間が作った機械ですから完全はありえません。いくら日本のメーカー製(実態は違うけど)とはいっても、パソコンやタブレットの構成部品、数千数万点すべてが100%歩留まりなく生産されることはありません。
●細かなパーツなどは事実上全数検査はできないため、ロットによる抜き取り検査となっていて、ごくわずかですがまれにそのような故障を引き起こす部品やロットが紛れる可能性は排除できないのです。
●また、生産過程で動作テストをし、不良品などを排除していても出荷から輸送、販売、購入後の開封までの間に何らかの原因で動作不良に陥るような要因が起きることも想定されます。たとえば、強い衝撃を受けたり、店頭や輸送中の保管環境が悪かったりなどでも影響を受けるでしょう。
●そのようなことが原因で、新品購入直後に起きる故障を「初期不良」といいます。
●通販サイトなどのユーザーレビューでもよく耳にすると思いますが、最近では中国製のものなどにかなり頻発している傾向があるようです。通販では保証期間内であれば交換措置をとるところもありますので、初期不良にあたった場合は怒りの矛先をレビューに向ける前に面倒ですが手続きをしましょう。怒ったところでそうしないと損するばかりです。
●メーカー保証期間は1年~3年、長いものでは5年というものもあるようですがその間に起きる不具合は、短命な部品が混ざったり、組み立て工程で起きる人為的な不良箇所等が原因となったりします。そのようなものを含めて広義での「自然故障」ということになります。
●その場合は購入者の瑕疵や故意ではないので、無償でメーカー修理が受けられます。怒りの矛先をメーカーに向ける前に、保証内容を良く確かめてメーカーサポートに連絡をしてください。レシートや保証書などはこういうときのためにも、普段から分かりやすいところに保管しておきましょう。
保証期間を過ぎて起きた故障はどうなるのか
●ところが、メーカー保証期間を過ぎて起きた故障の中にも確かに「自然故障」の疑いがあるものはあります。しかし、メーカーでは保証期間を過ぎたものは有償での修理保証対応となります。それはなぜでしょうか?
●例えばパソコンを2年しか使っていないのにDVDドライブが壊れた・・・といっても毎日何時間も動画編集で稼動させたり、DVDを毎日何枚もコピーしたり作成したりして壊れた・・・などという状況はひいき目にみても「自然故障」とは言えないでしょう。
●どう考えても酷使に相当し、故障というよりかは消耗といってもいいかもしれません。そのように、あくまでも自然故障と言うのは酷使したり業務で使用したりしないことが前提です。
●酷使した、していないはメーカーでは証明のしようがありません。そこで、メーカーとしては一定の保証期間を設けてすべてその中で一律保証を行うこととしているわけです。その期間が過ぎてしまうと例外はあるかもしれませんが、保証は受けられません。
●そうはいっても、実際に酷使もしていない、普通に使っていただけなのに2年~3年で壊れたら、「そんなに早く壊れるものなの?」という疑問が湧くのはもっともです。
●その疑問にお答えするには以下の3つの実態を知っておく必要があります。
自然故障の3つの実態
●一つ目は「運」です。数年で故障する不運なロットに当たった!ということも実際にあるわけで、こればかりは「運」ですから神のみぞ知るということしかいえません。これはどんなメーカーのものについてもあり得ますので、怒って他のメーカーに変えてやる!と買い変えたところで他のメーカーの製品が問題ない完璧な商品である保証も確証もありません。
●ですから、メーカーを渡り歩いたところでそのようなトラブルを回避できるとは限りません。これは自動車の場合でも同じ様な経験が誰にでもあるのではないでしょうか。
●機械とは本来そういうものです。ただし、ネットなどで同型品のものが同症状になる情報があれば、販売店やメーカーへ問いただしてみるのも良いかもしれません。件数が多くなればリコールにはならなくても何らかの措置があるかもしれませんし、修理について優遇措置が受けられるかもしれません。
●2つ目は、使用中の不運な出来事です。どう言うことかというと、留守中など知らない間に起きた雷被害や落とした際に気に留めていなかったけど大きかった衝撃、冬場の静電気や結露などで故障した場合です。保証書には「天災」や、故意でなくても落下、衝撃などの「過失」の場合は対象外になることが明記されています。
●また、保管場所などに問題があってトラブルになるケースです。自動車の車内など高温多湿の環境は機械類にとっては苦手。故障の直接原因になります。
●これらのことは、普段は意識していないため何もしていないのにいきなり故障したように映るのです。一例ですがサポートで持ち込まれたノートPC診断の際、HDDのGセンサーログに強い衝撃が加わったという記録が何度も残っている場合があり、起動中に移動させたりぶつけた、落としたなどの可能性が出ている場合があります。
●センサー記録が確かに残っていてもユーザーに尋ねるとほとんど「そんなことは無い」「そんな覚えはない」という返事しか返ってこなかったりするものです。
●以上、2つの内容はユーザーとしても容認しなければならないケースに相当しますが、3つ目の「機種依存の故障」は微妙です。これは、非常に大事な問題ですので次回にじっくり解説したいと思います。
●そこで次回は「機種依存の故障」について解説します。
パソコン・タブレットなどIT機器が故障する本当の原因とは?「機種依存の故障」
九州インターワークス 注目のページ
「パソコンとほこり」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/hokori.htm